外務省そして日本政府閣僚の皆さん。例えばですが、皆さんに対して、不祥事の「嫌疑」が外部からかけられたとしましょう。皆さんは二つの価値観の狭間で悩むはずです。公的機関として自浄努力を世間にどう示すか。そして、それに相対するように、自分たち自身を一つにまとめる価値をどう防御するか。
ですから、まず嫌疑に対する「調査」を開始するはずです。その間、被疑者を停職処分にするくらいはするでしょうが、嫌疑をかけられている省庁とか部署の予算執行停止の措置はしないはずです。だって、社会全体が裨益する公的機関ですから、活動に支障が出たら、それは公益を損なうことになるからです。
そして、きたる反論に向けて、「嫌疑」の信憑性と、その「嫌疑の主」の「素性」を、同時に「調査」するはずです。
皆さんがアメリカの決定に倣って、資金拠出の停止を決定した公的機関UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のケースも、まったく同じなのです。いや、その活動の停止によって社会が被るダメージは、皆さんの組織のそれの比ではありません。国際司法裁判所が、ついに【ジェノサイド】と関連づけたガザにおいて、人々の生命線(*)を一手に担う機関なのです。
そして、12名のUNRWA現地職員がハマスの協力者だというのは、まだ「嫌疑」の「調査」の段階なのです。それも、上記の国際司法裁判所の発令の直後に、イスラエルが一方的に申し立てた「嫌疑」です。
この「嫌疑」については、以下の2点を、どうか脳裏に刻んでください。
まず、UNRWAの医療局長で現地におられる清田明宏さん(上の写真の円卓の左端〈伊勢崎〉から2人目が彼です)の証言によると、UNRWAは1万人を超えるパレスチナ人職員全員の素性調査とイスラエル政府によるスクリーニングを、毎年1回行ってきたということ。それには、その12名も含まれます。
元国連職員として申し上げますが、紛争地で活動する国連機関として、これは必要以上に、そして例外的に、受け入れ国政府であるイスラエルに気を遣った措置です。
そして、「嫌疑主」であるイスラエルは、昨年10月7日以来、ガザへの武力侵攻において、100名以上のUNRWA現地職員を殺害していること(同月末の国連の発表で101名とありますから、現在はそれをはるかに超えた犠牲になっていると思われます)。
つまり、国際司法裁判所によって【ジェノサイド】の「嫌疑」をかけられているだけでなく、UNRWAの人員を実際に殺害しているイスラエルがUNRWAにかける「嫌疑」だということです。その「素性」をしかと勘案ください。
12名の「嫌疑」が上記の年1回の「スクリーニング」で発覚していなかったということは、イスラエルがガザへの地上侵攻を開始してから拘束したパレスチナ人への尋問による情報が、 その「嫌疑」の根拠になったと考えるのが筋です。
国際メディアでは、その映像が溢れておりますが、イスラエル軍が地上戦で拘束した民間人への扱いから、その「尋問」の質と、それから得られた情報の「信憑性」は、推してしるべし、と考えるのが自然な発想です。
これから数年かかるでしょうが、ガザにおけるイスラエルの行為に対する国際司法によるジェノサイド認定は、かなりの確率で実現するものと思われます。たとえそれが叶わなくても、世界の大多数の国々と人々が「ジェノサイド」であると認知する歴史的事実になることは間違いありません。言わずもがな、ジェノサイドをもたらすのは軍事行動だけではありません。「餓死」させる行為も含まれます。
「ジェノサイドの片棒を担いだ」という十字架を、私たちは日本の次の世代に背負わせるのでしょうか?
外務省の友人の皆さん。胸に手を当てて、行動してください。伊勢崎からの切なるお願いです。
(*) 私は、立憲民主党の阿部知子議員を事務局に、自民党の石破茂議員、中谷元議員にも発起人になっていただいている超党派議連をお手伝いしております。そこで、WFP(国連世界食糧計画)、ユニセフなど国連関連組織、ICRC(赤十字国際委員会)、そしてNGOの代表にも証言を戴いております。彼らが口を揃えて言うのは、ガザにおけるUNRWAという存在に対して、彼らは、補完はできるが代わりにはなれない、です。
(東京外国語大学名誉教授)
イスラエルは未曾有の凄まじいカルマを残した
イスラエルの人々は犯罪性を自覚した後、自ら滅亡を求めることになる
数年のうちにイスラエルという国家は、地球上から消えてしまうだろう
大変分かりやすい専門家による解説記事ありがとうございます。その後3月29日付AFPの報道だと4月前半にも日本政府が拠出再開するとのことで、一日も早い再開を待ってます。