いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

「ガザのジェノサイド止めろ!」 即時停戦求める3回目の世界同時行動 米国でも国民世論が拡大

ワシントンのイスラエル大使館前でのパレスチナ連帯デモで「川から海へ」と書いたスイカ(パレスチナの自由を示すシンボル)の模型を掲げる抗議参加者(2日)

 世界各国100以上の都市で2日と3日、イスラエルによるラファ侵攻の脅威に抗議し、即時停戦を求める大規模なデモ行進や集会がとりくまれた。このとりくみは、ガザに連帯を示す世界統一行動で、今回で3回目の実施となった。イスラエルの戦時内閣は、ハマスがガザ地区で人質にしている全員を今月10日までに解放しなければ、ガザ地区最南部ラファへの侵攻作戦を開始するとのべている。現在ラファには150万人が避難しているなか、ガザにおける過去最悪の大虐殺を阻止するため、全世界の人々がパレスチナに連帯を示し「ラファに手を出すな」と声を上げた。また、米国をはじめ欧州各国などイスラエルの虐殺に加担する政府への怒りの声も拡大している。

 

パレスチナと連帯する大規模なデモ行進が埋め尽くしたシカゴの街路(2日)

 米国では、ロサンゼルス、ボストン、シカゴ、アトランタ、ニューオーリンズ、ニューヨーク、ポートランド、サンフランシスコ、シアトル、首都ワシントンを含む国内数十の都市で数十万人が抗議活動に参加した。

 

 参加者はデモ行進や集会のなかで、イスラエルによる侵略の終結を求めた。また、各地の集会での発言やスローガンでは、イスラエルによるガザへの侵略が突然起きたものではなく、過去何十年にもわたって続いてきたものだとの指摘が目立っている。そして、イスラエルが停戦と引き替えに要求している「人質」問題に対して、「イスラエルこそがガザ200万人の人質を解放せよ」との訴えが広がっており、そうした世論がプラカードやスローガンに反映された。

 

 ニューヨークのデモでは大雨のなか数千人もの人々が街頭に集まり、集会とデモ行進をおこなった。この集会に参加した米国のアカデミー賞受賞女優スーザン・サランドンはスピーチをおこない、集まった数千人の人々に向け以下のように訴えた。

 

ニューヨークの集会で発言する女優スーザン・サランドン(2日)

 「ナポレオンはこういった。“戦争では、誰が敵なのかを政府が決める。革命とは、それを自分で考えることだ”と。私たちは敵が誰なのかわかっている。私たちの敵はヘイトだ。私たちの敵は人種差別と植民地主義だ。私たちの敵は強欲、そして目をそらす者の沈黙だ。押しつぶされた子ども、飢えた赤ん坊と泣き叫ぶ母親、がれきを掘り起こして家族を探す父親を見て、沈黙することは許されない。強者の物語を邪魔すること、正義のために戦うことは時に孤独だ。疲れ果ててしまうこともある。しかし、ガザやラファで起きていることに比べたら何でもないことだ。パレスチナの人々はこれを75年間も経験してきているのだ。不都合な真実を話すことで、仕事を失う可能性がある。友だちや家族さえも失う可能性がある。しかし今はこの傘の海を見てほしい。ここにいる人々があなたの家族だ。あなたはひとりぼっちではない。アメリカ全土で数十万人が、そして世界中の何百万人もの人々がパレスチナの人々のために、正義のために、停戦のために立ち上がっている。人々は立ち上がり続け、行動を企画し、話し続け、激しく訴え続ける。お互いを励まし、ねぎらうべきだ。そして他の人にも勇気を出して参加するように、そして最終的に歴史の正しい側にともに立てるように、励まそう。私たち全員が自由になるまで誰も自由ではないのだから。“パレスチナに自由を!”」

 

 カリフォルニア州ロサンゼルスにあるダウンタウンでは、数千人の親パレスチナデモ参加者が街頭にくり出し、イスラエルによるガザ侵攻の即時停止を訴える世界行動デーに連帯してデモ行進した。参加者はパレスチナの国旗や横断幕、自作のプラカードを掲げ、「虐殺を止めろ」「ガザの人質200万人を解放せよ」「今すぐ停戦を」などのスローガンを叫んだ。ロサンゼルス市内では、こうしたデモがいくつもの街区でとりくまれ、数万人もの人々が同時にガザ虐殺の即時停止を訴えた。

 

 同州サンフランシスコでも、「ベイエリア」と呼ばれる9つの郡から数千人の人々が集まり、ガザに連帯して集会やデモをおこなった。

 

 イリノイ州の都市シカゴでの抗議活動参加者らは、ラファへの包囲の停止を要求するとともに、米国政府によるイスラエル援助停止、そして最終的にはパレスチナ占領の終結を実現するよう訴えた。また、バイデン大統領を「ジェノサイド(虐殺)・ジョー」と呼び、ガザでの大量虐殺に加担する国の政治家らを厳しく非難した。

 

 ガザ南部のハーン・ユニスでの医療任務に従事していたイリノイ大学シカゴ校の外科医は、「私はハーン・ユニスのナセル病院に滞在していたが、そこでは昼も夜も絶え間ない銃声に囲まれていた」とのべた。そして、群衆に向け銃声を流した後、「これらの銃弾やミサイルにどれだけの税金が使われているだろうか。ジョー・バイデン、米国、イスラエルは国民の支持を失いつつある。刻一刻とイスラエルとバイデンに敵対する人々が増えている」「ジェノサイドに資金を提供し続ける一方で、ガザ地区には最小限の援助を提供するというバイデン大統領の振舞いはデタラメだ」と訴えた。

 

 デモ参加者はシカゴのダウンタウンの通りを占拠し「ジェノサイド・ジョー」「子どもを殺すのが彼のゲームだ」と声を上げ、バイデン政府を痛烈に批判した。

 

短期間で世論変化 米兵の焼身自殺も発生

 

 先月17日にも第2回目のガザ連帯世界統一行動がおこなわれ、世界各国の都市と同様に米国内で大規模なデモや集会がおこなわれた。だがそのことは今回ほどは大きく報じられていなかった。一方、2日に米国全土でおこなわれた今回の行動は、SNSやインターネット記事等でとりあげられる件数が目に見えて増えており、ガザ虐殺の即時停止を求め、自国政府に対しジェノサイドへの加担を一刻も早く止めるよう求める国民的世論の拡大が見てとれる。

 

 短期間でこうした変化が起きた背景には、先月27日に起きた、現役米空軍兵によるガザ解放を求める焼身自殺事件も大きく関わっていると見られる。

 

 25歳の現役空軍兵アーロン・ブッシュネルは、ワシントンDCにあるイスラエル大使館前で焼身自殺した。アーロン氏はこの様子を動画配信していた。同氏はこの配信のなかで「私はもう虐殺には加担しない。私はこれから極端な形での抗議をおこなうが、私の身にこれから起こることは、ガザの人々に起こっていることに比べれば何でもない。そして、入植者の手によってガザで人々が経験していることは、われわれの支配階級にとっては決して極端なものではなく、常態化してしまっている」と語った。そして自身に火をつけ炎が上がり、倒れて動けなくなるまでの間、何度も「パレスチナを解放せよ!」と叫び続けた。

 

 アーロン・ブッシュネルの焼身自殺の後、彼の訴えに多くの退役軍人たちがSNS等で反応を示し、さらにデモや集会に参加している。彼らはイスラエルとそれに加担する米国に抗議し、かつての制服を燃やしたり、集会のステージでマイクを握った。各地のデモや集会では、何人もの退役軍人たちが以下のような発言をおこなっている。

 

  「これは完全なジェノサイドだ。パレスチナの解放に関わる問題だ」

 

  「私たちの敵がどこかの洞窟の中にいて、それを探し出さなければならないなんて、それこそが根本的な嘘なんだ。本当の敵は億万長者と政治家たち、そのオーナーたちだ。私たちを死ぬために戦場に送り出す奴らこそが本当の敵なんだ」

 

  「アーロン・ブッシュネルの命がけのメッセージを、私たちはここでくり返しいい続ける。兵士たちがアメリカのために世界中で偉大なことをしているというこの物語は真実ではない」

 

  「(アメリカが)正義のために戦ったのなら、1日に22人もの退役軍人が自殺したりしないはずだ。私は戦争マシーンに加担していた。その現実に直面するのは辛かった。私は何度も心が壊れた。これ以上自分が犯した人道に対する罪を無視し、沈黙し続けることはできない」

 

イスラエルの虐殺抗議 中南米や欧州各都市で

 

 キューバの首都ハバナでは、在キューバ米国大使館前に数千人が集まり、パレスチナ人との連帯を承認するとともに、イスラエルの大量虐殺を非難した。参加者らはまた、イスラエルの虐殺を幇助し支持するアメリカに対する非難を表明した。この集会にはミゲル・ディアスカネル大統領も参加した。

 

 ディアスカネル大統領は、2日の行動に先立ちXで動員を呼びかける声明を発表し、「キューバはパレスチナ支援のため、今年3月2日に世界的な動員に参加する。すべての州とハバナで、私たちは同胞の人々と連帯して街頭に立ち、イスラエルがラファで引き起こそうとしているホロコーストを非難する。みんなガザのために!」と訴えた。

 

 キューバ国内での中心的な行動は首都ハバナのホセ・マルティ反帝国主義広場で開催され、キューバ在住のパレスチナ人医学生らも参加した。キューバは何年にもわたりパレスチナから医学生を受け入れている。

 

キューバの首都ハバナでおこなわれたパレスチナのための大規模集会ではパレスチナ出身の学生も発言した(2日)

 ハバナの集会に参加したディアスカネル大統領は、さらに自身のXで声明を投稿。同氏は、ガザ地区はそこに住む200万人以上のパレスチナ人にとっての「強制収容所」であり、「世界最大の公開刑務所」だとのべた。そして、「キューバはガザにおけるイスラエルによる虐殺の終結を要求する。残忍さはもう十分だ! 虐待はもう十分だ!」と訴えた。

 

 さらにディアスカネル大統領は、米国が国連安全保障理事会で停戦決議案に拒否権を発動していることについて「アメリカ政府は野蛮行為の共犯者として行動している。国連安全保障理事会で停戦決議案に拒否権を発動する帝国主義の偽善をやめろ」「米国は中東、ひいては全世界の平和と安定を損なう」と厳しく批判した。

 

 ベネズエラでも、首都カラカスで大規模なデモ行進がおこなわれた。デモ参加者はパレスチナへの支持を表明し、イスラエルが占領地で犯している大量虐殺を非難した。運動の主催者らは、「イスラエル政府は1週間後のラマダン(イスラム教の断食月)開始前日の3月9日にラファへの大規模な侵攻を計画している」と非難し、米国が停戦を求める国連決議に何度も拒否権を発動し、虐殺に加担していることを指摘した。

 

数千人のイスラエル人がテルアビブでネタニヤフ首相に反対して行進した(2日)

 イスラエルでは、ネタニヤフ大統領の退陣とハマスとの停戦合意、人質解放を求め数千人がデモをおこなった。テルアビブの大通りであるビギン・ストリートでは、デモ隊が道路を封鎖。さらに西エルサレムでは、ネタニヤフ首相の邸宅付近で約1200人のイスラエル人がデモをおこない、早期停戦に向けたハマスとの合意を求めた。また、彼らは人質解放と政権の退陣を求め、選挙の即時実施を訴えた。その他にも、ハイファ、ラーナナ、レホヴォトなどイスラエルの他の地域でも数千人規模のデモがおこなわれた。

 

 ヨーロッパ各国では、数百の地域で大小のデモや集会がとりくまれた。

 

 イギリスの首都ロンドンでは、昨年10月7日のガザ侵攻開始以来、イギリス政府による継続的なイスラエル支援に抗議するために数千人が集まり、パレスチナへの連帯を訴えた。

 

 また、マンチェスターでも数百人の人々が行進し、イスラエルがガザ地区で五カ月間にわたっておこなっている大量虐殺と、パレスチナでの75年にわたる民族浄化と殺害によって武器会社が利益を得ていることに言及し、「お前たちの利益はパレスチナ人の血で汚されている」と声を上げた。

 

 デンマークの首都コペンハーゲンでも大規模なデモ行進がおこなわれた。参加者はパレスチナ国旗やガザでのイスラエル侵略の停止を求める看板を掲げ、大量虐殺の停止を求めるスローガンを唱えた。

 

 フランスの首都パリでは、デモ参加者がサン・オーギュスタン広場前に集まり、厳しい警備措置のなか、パレスチナ国旗を振り、パレスチナ人を支持するスローガンを叫びながらイスラエルの戦争を非難した。

 

 スイスのベルンでは、集会参加者らが血に染まった白いシュラウド(死者を覆う白い布)を着て集まり、イスラエルの占領政策による大量虐殺を非難した。その他、ヨーロッパ圏内ではオランダやドイツでも「パレスチナ人民支援国際デー」の一環として多くの人が集まり、ガザ地区でのイスラエルによる虐殺の停止を訴えてデモ行進をおこなった。

 

 エジプトの首都カイロでは、ラファ国境の開放とガザへの援助の流入を要求するデモがおこなわれた。エジプト政府はデモを禁止したにもかかわらず、何千人もの人々が外出してガザの解放を訴えた。

 

イスラエルの虐殺 150万人避難ラファにも

 

モロッコでも数万人がパレスチナの即時停戦を求めた(2日)

 200万人以上ものガザの人々が外界から遮断された狭い地域に詰め込まれている状況のなか、イスラエル軍は5カ月以上にもわたってガザへの無差別攻撃を続けている。多くの人々が南部へと避難を続けており、約150万人がラファに追い込まれている。人々が逃げ場のない南部に追い詰められ、すでにガザの全住宅の70%が破壊され、57万6000人ものガザ住民たちが深刻な飢餓に直面しているにもかかわらず、イスラエル戦時内閣は「10日にラファ侵攻作戦を開始する」といっている。

 

 そしてイスラエル首相府は2月26日、軍がパレスチナ自治区ガザの最南端ラファで実施する作戦の計画を戦時内閣に提出している。また、ネタニヤフ首相は2月25日、米メディアに対しハマスとの間で戦闘休止と人質解放の交渉が成立したとしても、ラファへの攻撃には踏み切るとの考えを示している。

 

 また、イスラエル政府は3日、エジプトの首都カイロで開かれる予定だったハマスとの停戦交渉に「代表団を派遣しない」とボイコットを表明した。

 

 ガザ地区の保健当局は2月29日、昨年10月7日にイスラエル軍とハマスの戦闘が始まってから殺された人数が3万人をこえたと発表した。保健省は、殺された大多数が女性と子どもだと説明している。また、この人数には病院に運ばれなかった人は含まれておらず、イスラエルの空爆で破壊された建物のがれきの下敷きになったままの死者数も含まれていない。そのため、実際の死者数ははるかに多いと考えられている。

 

 世界保健機関(WHO)も、ガザ保健省について「情報収集と分析能力において優れている」と評価しており、報告は、「詳細で信用できるもの」だとしている。そのうえでWHOは、ガザ地区における過去の紛争について国連が記録したデータと現在の死者数の内訳を比較すると、「殺害される民間人の数が増え続けており、子どもや女性の死者数の割合が増えていることが明確に示されている」と指摘している。

 

パレスチナ国旗を掲げ停戦を訴えるベネズエラでのデモ(2日、首都カラカス)

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。