いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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人民戦争に包囲され窮地に立つ米国 イラク戦争から1年  世界各地で反米斗争が高揚

 米英軍によるイラク侵略戦争から丸1年がたった。この戦争は「やられるまえにやっつける」という乱暴きわまる先制攻撃論で、イラクを破壊し罪なきイラク人を殺し、イラクの豊かな石油資源を強奪するための戦争であった。また、イラクを突破口に中東全域でグローバル化をすすめ、石油資源や市場をアメリカが独占するためだった。この一年、アメリカのあくなきグローバル化、世界一極支配の野望がだれの目にも明らかとなった。世界各国で、侵略軍はイラクから即時撤退せよの反戦世論が空前の高まりを見せるなかで、欧州ではスペインのように親米政府が野たれ死にしたり、中南米ではグローバル化に反対する斗争が激化するなど、ブッシュ政府は窮地に立たされている。

 日に日に戦斗力を増す反米武装勢力
 米英軍約14万人は昨年3月20日、あらゆるハイテク兵器を使ってイラク攻撃をはじめた。政府や軍の施設だけでなく発電所、浄水場、学校、民家などを空爆で破壊し、罪のない住民7000人余りを虐殺した。イラク軍との2週間余りの地上戦をへて首都バグダッドを制圧した米軍は、石油省だけは無傷で残し、油田とパイプライン確保を優先した。
 ブッシュは5月1日、主要な戦斗の終結宣言をしたが、それから今日まで、イラク全土で反米武装勢力の頑強な抵抗にあって、米軍の発表でも546人の米兵が命を落としたばかりか、精神異常者、自殺者、脱走兵が続出している。イギリスのほか、イタリア、ポーランド、スペイン、オーストラリアなど約30カ国・1万人がイラクに派兵されたが、反米武装勢力の標的となって多くの死傷者を出し、かれらにとってイラクに安全な土地はない。自衛隊を「非戦斗地域」に派遣したという小泉政府のウソは明らかである。
 イラクの反米武装勢力の占領軍への攻撃は、日に日に組織化され、計画的で戦斗力を格段に強めている。活動範囲は首都バグダッド周辺の「スンニ派三角地帯」から、南部や北部へと拡大し、米軍大型ヘリや「ブラックホーク」など戦斗ヘリコプターを撃墜、最新鋭戦車も爆破するなど戦斗の熟練度を高めている。
 にもかかわらず、アメリカは反米武装勢力がどのような指揮系統を持つのかも特定できない。「ゲリラ捜索」と称して平和な住民を手あたりしだいに拘束して拷問したり、射殺するなど蛮行を働いて、イラク人民の怒りを買い、抵抗斗争をさらに拡大している。
 6割をこえる失業率、学齢児童の3割が就学できない、電気も水も1日数時間しか供給されないといった状況にたいし、イラク人民は「これが解放か、民主化か」と怒りを募らせている。またイラクに根のない親米分子を集めた「統治評議会」を拡大して、今年6月末までに「主権移譲」をするというブッシュのインチキ「民主化」は、まったく相手にもされない。
 イラク人民はこぞって、国家の主権をとりもどし、石油資源を守るために占領者とたたかっている。民族や宗教、思想・信条の違いを乗りこえて、祖国防衛のたたかいに立ち上がっている。アメリカが軍を増強し日本など「有志連合」を占領の下請に動員すればするほど、イラク人民の抵抗はいっそう強くなり、占領軍はますます泥沼の深みにはまっている。近くはアメリカのベトナム侵略戦争、遠くは日本の中国侵略とよく似た状況である。すべての占領軍が撤退しないかぎり武装抵抗斗争がやむことはないであろう。

 石油泥棒の姿露呈 行きづまる中東支配
 米英占領当局は国営企業の100%民営化、関税撤廃、利益の無制限国外移転などを決め、イラクの富を勝手気ままに強奪できる体制をつくった。国有企業約200社をすべて民営化して、外国企業の100%所有を認めたのをはじめ、輸入関税は5%、2006年1月1日までは関税廃止、資本の国外流出は自由といった植民地経済を押しつけている。
 すでに、石油企業の民営化を指揮するのは、かつてロイヤル・ダッチ・シェル米国法人の最高経営責任者であったキャロルで、米英系メジャー(国際石油資本)が、フランス、ロシア、中国などの石油企業を排除してイラク石油を独占しようとしている。
 石油にかぎらず、アメリカが空爆で破壊したものの「復興」事業186億㌦の元請企業も、アメリカ、日本など62カ国に限定し、フランス、ドイツ、ロシアなどを排除した。
 チェイニー副大統領がかつて経営していた大手油田開発会社ハリバートンは、17億㌦余りの事業を受注した。また、米国最大の建設・エンジニアリング会社ベクテルも、11億3000万㌦の事業を受注した。このほか、ラムズフェルド国防長官、ミネタ運輸長官やライス大統領補佐官などを利益代表とする独占企業も、利権を分けどりしている。
 米英は、イラク戦争の口実として「テロ対策」とか「大量破壊兵器」とか「民主化」とかさまざまいってきたが、あるがままの姿は人殺しをやってよその国を乗っとったのである。石油を奪い、国営企業を外資に売り飛ばし、市場原理の経済構造にする、すなわちアメリカの植民地にすることが真の戦争目的であった。日本がイラクに派兵したのは、そのおこぼれをもらうためにほかならなかった。
 今日、イラク人民の頑強な抵抗戦争によって、アメリカが中東全域をイラクのような植民地にするグローバル化計画がとん挫しようとしている。
 ブッシュが6月の主要国首脳会議で公表するとしている「大中東民主化計画」は、中東諸国でアメリカ式民主主義と市場経済を推進するものだが、エジプト、サウジアラビアなど親米のアラブ主要国が反発、フランス、ドイツなど欧州主要国も保留している。
 同計画の適用範囲は、アフリカのモーリタニアからパキスタン、アフガニスタンにいたる広大なアラブ、イスラム諸国におよんでいる。内容は「民主的改革」と称して、自由選挙制度の採用、教育のイスラム原理主義からの解放をとなえ、市場開放を要求している。
 親米のムバラク・エジプト大統領は、「外部世界の意志を他人に押しつけるもの」と反発、アラブ連盟の緊急外相会議などでも一致して拒否された。その理由として1990年代、アフリカの多くの国でアメリカが実行した「民主的改革」が、政局の動揺、内戦のひん発を招いたこと、イスラエルも対象にあげたのはアラブ諸国にイスラエルとの共存を押しつけることというものであった。
   
 各国のたたかいにも火 グローバル化は破産
 1980年代からアメリカが危機打開のために推進したグローバル化、すべての国の「アメリカ化」は、ソ連と東欧の社会主義国を転覆し市場経済化することで一定の成果をあげたが、中東イスラム世界はずっとその障害となってきた。このため、アメリカはイラク「民主化」でそのモデルをつくろうとしたわけだが、イラク人民の反抗で逆効果となり、親米国をふくめて「民主化」「市場経済化」に反発する世論を強めたのである。
 
 中南米で政治勢力の再編も

いまアメリカが「裏庭」とする中南米で起こっている政変、政局の動揺も、アメリカが「新自由主義」の名ですすめたグローバル化の破産が背景にある。
 最近、ハイチで反政府武装勢力が反乱を起こし、アメリカがアリスティド大統領を拉致して国外に放逐する事件が起きた。もともとアリスティド大統領はアメリカが「民主化の旗手」として担ぎ出した人物であった。だが、「新自由主義」の推進で経済は破局におちいり、貧困を解決できずにいたところに、「民主化」で解体された旧軍人が反乱を起こしたものであり、アメリカは大統領追放で始末をつけざるをえなかった。
 ここ数年、軍事政変、石油産業ゼネストなどでチャベス大統領の追い落としがはかられているベネズエラも、「新自由主義」をめぐるアメリカの策動である。チャベス大統領が「貧困解消」をかかげ石油企業の国有化、農地改革などを実行したことは、アメリカや売国的資本家、地主の逆鱗(げきりん)にふれた。だが圧倒的多数の貧困層の支持があったため、軍事クーデターなどをつぎつぎに粉砕することができた。
 近年、中南米で「新自由主義」がアメリカなど多国籍企業だけを肥え太らせ、労働者、農民をますます貧困化させるなかで、ブラジル、アルゼンチンなどで左翼的政府が誕生するなど、反米的世論が強まっている。アリスティド大統領の放逐についても、元来親米色の強いカリブ海諸国がブッシュの仕打ちを批判し、真相調査を要求している。かつて見られなかった動きであり、強力な反米世論を背景に中南米諸国で政治勢力の再編が起こっていることを示した。
 いま「韓国」で起こっている盧武鉉大統領弾劾をめぐる動きも、アメリカの干渉とからんで注目される。盧大統領がアメリカの圧力でイラク派兵をすることに反対する民族民主勢力も、今回アメリカが後で糸を引いて野党に大統領弾劾決議を強行させたことには反対している。それらは、南北統一を妨害するのがアメリカであること、韓国・チリ自由貿易協定や外資への開放、農産物自由化を押しつけて植民地化を狙うのもアメリカであるという認識が経験をつうじて広範な大衆に根づいていることを示している。

欧州では大規模な反戦行動
 先日、スペインの総選挙で米英にくみしてイラク戦争を推進した、アスナール政府が倒壊した。勝利した労働党は「イラク戦争は誤りであった。米英は反省すべきだ」「6月末でイラク派遣のスペイン軍を撤退する」と言明、フランス、ドイツなどアメリカのイラク戦争に協力しなかった欧州諸国との関係修復を主張している。それは、九割をこえたイラク戦争反対の世論を意識した動きであり、ブッシュに追随しつづければ欧州連合(EU)と対立し、経済の破たんに行きつくという支配層の危惧(ぐ)も反映している。
 ブッシュの「単独行動主義」に批判的であった欧州連合は、イラク戦争をめぐってフランス、ドイツ、ベルギーとイギリス、スペイン、イタリアに分裂した。だが、数万、数十万の反戦デモやグローバル化反対の大衆行動が起こるなかで、また、イラク戦争が米欧間の市場争奪の矛盾を激化させたなかで、アメリカの世界一極支配を容認しない方向が強まり、EUの再編がはじまっている。
 2001年の「9・11事件」後、ブッシュの「反テロ」国際同盟に加わったEUやロシア、中国などでも、「爆撃でテロには勝てない。むしろ悪化させるだけだ」と、アメリカが強大な軍事力を使って逆らうものを押しつぶし、世界を意のままに支配しようとする「一国主義」を批判し、警戒する動きが強まっている。イラクからの撤兵の連鎖反応に見られるように、ブッシュの「有志連合」のたががゆるみ、アメリカの指揮棒はきかなくなってきた。小泉政府がどこまでもブッシュのポチに徹するならば、世界の孤児となり笑いものとなるだけである。

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