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世界の上位10%が76%の富を所有 トマ・ピケティら経済学者の調査報告「世界不平等レポート」に見る

 『21世紀の資本』の著者として知られるトマ・ピケティをはじめ欧米諸国の経済学者らで構成し、本部をパリに置く世界不平等研究所(World Inequality Lab)が7日、世界的な格差の実態を調査した「世界不平等レポート(WORLD INEQUALITY REPORT 2022)」を公表した。新型コロナウイルスの世界的まん延のなかで、ひと握りの超富裕層が爆発的に資産を増やした一方、深刻な飢餓に苦しむ人々をはじめ大多数の貧困化が進んだことを統計からあぶり出している。筆頭著者のルカ・シャンセル(仏経済学者)は「新型コロナウイルスの感染拡大は、非常に裕福な人々とそうでない人々との間の不平等を悪化させた。貧困拡大とのたたかいにおける社会的国家の重要性を示している」とのべ、不平等の是正には新自由主義的な政治制度の変革が必要であることを訴えている。

 

コロナ禍でさらに拡大した貧富の格差

 

トマ・ピケティ

ルカ・シャンセル

 この報告書は、同研究所が1995年から毎年発行しており、最新版はコロナ禍が世界を襲った2021年の実態を調査したものだ。研究所共同所長のルカ・シャンセル(パリ政治学院)、トマ・ピケティ(パリ経済学院)、富裕層の税逃れについての共著を執筆し、エリザベス・ウォーレンやバーニー・サンダースなど米上院議員が富裕税を提案するさいにも支援したカリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ、ガブリエル・ズックマンなどの経済学者たちがまとめた。

 

 報告書の序章では、「この世界には豊富な情報が溢れているが、所得と富の不平等に関する基本的な情報が不足している。成長については各国が毎年公表するが、経済政策によって誰が利益を上げ、誰がそれを失うのか、成長が人口全体にどのように分配されているかについては知らされていない。所得と富の不平等に関する透明性の欠如は、今日のグローバル化した経済における平和的な民主的議論の可能性を深刻に損なう。そのような情報にアクセスすることは民主主義にとって重要だ」とのべ、この報告書は4年間かけて、世界の全大陸をまたぐ100人以上の研究者の研究にもとづき、税務当局、統計機関、大学、国際機関の協力のなかで、比較可能な国際的データを分析したものとしている。

 

 とくに、予期せず到来した新型コロナ危機は、経済の大部分を閉ざし、多くの人々の生計を奪った。先進国では、政府によって所得補償システムが導入され、不平等の拡大による大惨事を一時的に回避したが、貧困国では十分におこなわれていないことを指摘。

 

 「経済成長の果実は公平に分配されているのか?」「社会的なセーフティーネットは十分に行き渡っているか?」「低所得国はより豊かな国に追いついているのか?」「人種や性別の不平等は縮小しているのか?」を問い、この数十年来の現実は、規制緩和、公的インフラの民営化、政府債務の増加により、公的資産を犠牲にした私的資産の増大と一極集中が進み、ビリオネア(億万長者)階級では大幅な資産増加が発生したが、上から下へ富が流れる「トリクルダウン」は発生せず、世界の富が常に上に向かって流れ続けてきたことを強調している。
 以下、報告書の概要と、そこから見える世界経済の特徴について紐解いてみたい。

 

超富裕層の資産 コロナ1年で410兆円増

 

 世界の成人人口(51億人)を所得と富(資産)の分布で区別すると、成人人口の下位50%(最貧層)は25億人、中間40%(下位50%より多く上位10%より少ない収入を得ている人々)は20億人、上位10%は5億1700万人、最も裕福な上位1%は5100万人という人口構成となる【図①参照】

 

 この4つの階層別に2021年の世界の「所得」分布を見ると、人口が最も多い下位50%の人々が手にする所得は全体のわずか8%【図②左側グラフ参照】。世界平均の5分の1弱であり、成人1人当り年額2800ユーロ(約36万円)にすぎない。

 

 これに対して上位10%の人々の所得は、全体の52%(世界平均の5倍強)を占め、成人1人当り年額8万7200ユーロ(約1123万円)を手にしていることになる。さらに上位1%の超富裕層の所得は、世界の全所得の19%を占め、成人1人当り年額32万1600ユーロ(約4142万円)を受けとっている。

 

 「資産(富)」の分布になると、その差はさらに顕著となる【図②右側グラフ参照】。下位50%が所有する資産は、世界の総純資産(すべての個人の資産合計)のわずか二%。平均して1人当り2900ユーロ(約37万円)の資産(通常は土地、住宅、預金、現金の形で)を所有している。そして、残りの上位50%だけで世界の総資産のほとんど(98%)を所有していることになる。

 

 上位10%は総資産の76%を所有し、その平均額は成人1人当り55万900ユーロ(約7096万円)であり、これには株式や債券など金融資産を多く含んでいる。
 購買力平価(ある国の通貨建て資金が持つ購買力を他国でも同水準と仮定した場合)ではなく、不規則に変動する市場の為替レートを使用して測定すると、その格差はさらに開き、下位50%の所有資産は世界の総資産の1%未満にまで縮み、上位10%の資産は82%にまで膨らむ。

 

 さらに富裕層になればなるほど富の集中度が増していく。
 保有資産順で上位0・01%の富裕層(約52万人)の世界総資産に占める割合は1995年には7%だったが、2021年に過去最高の11%に達した。個人資産が10億㌦(約110億円)以上の超富裕層(数千人)の資産の割合は、同じく1%から過去最高の3・5%へと飛躍的に増えている。とくにコロナ禍にあった昨年1年間だけで3・6兆㌦(約410兆円)も増やしている。

 

国・地域間も不平等 欧米に集中し途上国低く

 

 「世界的な個人の所得と資産における不平等には、国や地域間の不平等と、国内の不平等の二つの要素がある」と報告書は指摘する。

 

 地域別の平均所得を見ると、北米(米国とカナダ)は世界平均の3倍、ヨーロッパは2倍と欧米が圧倒的に高い水準にあり、東アジアや中東、ロシア・中央アジアが平均値に近く、逆にサハラ以南のアフリカや東南アジアの人々の所得は世界平均の50~30%台と低水準にある。アフリカや東南アジアの人々は、欧米よりも年間3割も労働時間が長いにもかかわらず、支払われる所得が極端に少ないためだ。

 

 平均資産についても、米国は世界平均の3・9倍、ヨーロッパは2・3倍である一方、アフリカや南アジア、中南米の人々の資産は50~17%と低く、その格差は所得よりも大きい。

 

 所得順位における上位10%と、中間40%、下位50%の所得格差が最も高い(下位50%の所得シェアがより低い)地域は、中南米、中東、北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、南アジア、東南アジアであり、これらの地域では下位50%の人々の所得は全国民所得の9~12%しかない。貧富の格差は世界的不平等と同じレベルであり、同じ地域に「働いても食べていけない極度の貧困状態にある人々」と、その隣で暮らす「高所得国の繁栄を享受する経済的および政治的エリート」という二つの社会が存在することを映し出している【地図③参照】

 

 東アジア、ロシア・中央アジアおよび北米では、上位10%の富裕層の収入が貧困層の16倍であり、アフリカや中南米、中東になると22~32倍に広がる。報告書は「税や移転による再分配は、高所得地域(ヨーロッパ、北米)では非常に高いが、低所得地域(南アジア、東南アジア、サハラ以南のアフリカ)ではほとんど存在しない。貧しい国々は、その不平等を減らすための財政能力が奪われている」と指摘しており、これらの不平等を生み出す前の是正措置として、最低賃金引き上げ、無料でアクセスできる教育、家賃管理(家賃規制)、独占禁止法、さらに途上国を搾取する多国籍企業への課税を強めることを求めている。

 

 さらに富(資産)の格差を見ると、世界中のすべての地域で資本の極端な集中が進んでいることがわかる【図④参照】

 

 「驚くべきことに上位10%の資産割合が、すべての地域で60~80%の範囲に広く収まっている。これは、社会が選択した政治制度や経済発展のレベルに関係なく、すべての大陸で非常に階層的な私有財産システムが存続していることを示している。世界で最も豊かな地域である北米は、富の所有権に関して最も不平等」と指摘している。

 

 下位50%はすべての地域で富をほぼ保有していない。その地域の総資産に占める富の割合は、中南米で1%、欧州、東アジア、中央アジアでも4~5%と低く、「世界のすべての社会で人口の下位半分はほぼ完全に資本を奪われている」ことを浮き彫りにしている。

 

弱肉強食の時代 19世紀初頭と同レベル

 

 2020年に世界を襲った新型コロナ危機は、世界の不平等をさらに悪化させた。

 

 最富裕層とその他の人々との経済的格差は、パンデミックの間に劇的に増加している。2020年は、世界の平均資産はわずか1%しか増加しなかったが、上位0・001%の資産は14%増加し、さらにビリオネア(億万長者)といわれる最富裕層の富は50%以上も増加した。

 

 一方、世界銀行の推計では、パンデミックで新たに1億人が極度の貧困に追い込まれ、2021年に世界で極度の貧困に分類される人々は7億100万人に達した。

 

 米国では各世帯に対する現金給付、失業手当、フードスタンプを含む緊急対策、ヨーロッパでも失業補償などの例外的な救済措置などにより、不平等の拡大は一定程度抑制されたが、これらの措置によって増えた公的債務が今後、緊縮政策や逆進的税制(付加価値税の引き上げ)などを誘発すれば必然的に格差は拡大する。危機の先送りに過ぎない。
 累進課税の強化や部分的な債務取り消しなどを推進しなければ、本来の救済措置にはならない。

 

 また、途上国など社会保障システムが整っていない国では、都市封鎖などで職や所得を喪失し、送金減少と食料価格の上昇によるインフレがもたらされ、医療や教育への自己負担が増し、それらへのアクセスが困難なまま放置されている。

 

 さらに報告書は「現代の世界的不平等は、西洋帝国主義のピークである19世紀初頭のレベルに等しい」と指摘し、第一次世界大戦の前夜には、イギリスの不動産所有者が保有する対外純資産が国民所得の2倍に達するなど、植民地資産やその他の外国からの投資で莫大な利益を手にしたり、西側諸国が世界の他の地域に対して経済的、政治的優位性を確立するにつれて、国家間の不平等が拡大し、国内の不平等も同時に拡大していったことと現代を重ねている。

 

 現代もまた、国家による土地改革や累進課税、再分配の恒久的システムを通じて世界的な富裕層を強制的に規制しない限り、彼らがみずからの資産を貧困層に譲渡することはなく、むしろ彼らは資源を貸し出し、そこから可能な限り最大の利益を得ようとする。

 

 世界大戦に向かった当時と同じく「植民地支配と軍事支配を通じて最貧層との関係を規制し、最も価値を生み出す生産プロセスの管理を維持するために投資パターンを整理する傾向が続いている」と指摘している。

 

 また、かつては「第一次世界大戦と第二次世界大戦、大恐慌、そして多くの革命的な出来事の複合的な影響(1917年10月のロシア革命を含む)によって、資本と労働の力のバランスが大幅に変化し、社会民主党、労働党、民主主義者、社会主義者、共産主義者が非常に多くの国で権力を握り、再分配政策を組み合わせて実施し、福祉国家の構築と所得と富に対する累進課税を実現させた。その後の公共インフラ、教育、健康への広範かつ包括的な投資は、不平等の急激な縮小だけでなく、戦後の西側諸国の成長と繁栄の増加にも貢献した」としている。

 

 戦後、欧米諸国の弱体化による植民地主義の終焉、各国の独立運動の発展によって縮小した貧富の二極化は、旧ソ連や中国の社会主義体制が事実上崩壊する1980~1990年ごろから再び世界的に拡大し始め、2008年の世界同時金融危機後の新自由主義政策の拡大によってより露骨なものとなった。

 

 報告書は、「富裕国と新興国の両方の国内で所得と資本の事前分配と再分配をおこなうことが、世界的不平等を減らすために不可欠である」とのべ、「多国籍企業や億万長者が支払う世界の税収の一部を人口に基づいて各国に割り当てること」など、富の大規模な再配分によって「サハラ以南のアフリカおよび南アジア地域では、人的資本、設備、インフラへの投資に資金を提供する国民国家の能力が根本的に変化する」と解決策を提示している。

 

新自由主義の下で 公的資産が劇的に減少

 

 また1970年以降の大きな特徴として、先進国において私的資産が増加する一方で、公的資産が劇的に減少したことも指摘している。

 

 富(資産)とは、預金や株式などの金融資産と、土地や建物など非金融資産の合計から債務を差し引いたものを指す。過去50年、国の富に占める公的資産の割合はすべての国で減少しており、その傾向は新型コロナパンデミックによってさらに加速した【図⑤参照】。

 

 その傾向が先行したイギリスとアメリカでは公的資産がマイナスになっている(純公的資産の合計が公的債務よりも少ない)ため、国富は完全に私的資産で構成されている。

 

 同じくフランス、日本、ドイツも公的資産が大幅に減少し、公式の推定によれば、国富のわずか約10~25%にすぎなくなっている。1970年代にほとんどの先進国で公的資産が国民所得の40~100%(ドイツでは100%以上)を占めていた状況からの著しい変化だ。

 

 公的資産の減少は、おもに公的債務の増加によるものだが、そのなかでインフラを運営する公的企業の株式、運輸や交通機関、電気通信、学校や病院など公的資産の大部分が次々に民営化(私有化)された。市場経済に舵を切ったロシアや中国などで個人資産が大幅に増えたことに加え、経済成長著しいインドでも公的部門が経済の大部分を占めていた1980年代に比べ、個人資産が占める割合は2倍近くにまで増加した。

 

 公的債務が公的資産を上回っている西側諸国では、その債務を返済するために公的資産を売却すれば、その国で所有するすべてのもの(道路や学校など)は私的所有となる。そのため市民は、民営化されたインフラを使用するために、新しい所有者に料金を払わなければならなくなる。公が決める予算や税制に対して債権者である民間の影響力が増すとともに、天然資源を含む公的資産が私有財産に変わることで、彼らは公に寄生して利潤を得ながら、公共を際限なく債務で追い立てて社会全体から搾取する構図を強めていく。報告書は「高い公的資産水準を維持することは、西側の政治システムと両立しない。これは常に政治的選択の問題だ」と問題提起している。

 

 また、資産の金融化が進んだことで、外国人による資産保有も強まった。

 

富裕層は租税回避 トリクルダウン起きず

 

 規制緩和や民営化、漸進的課税の引き下げなどの新自由主義は、1979年に英国のサッチャー、1980年に米国のレーガン、1983年以降にはフランスのミッテランによって実施され、それらの政策が極端な富の集中を促した。

 

 報告書は「今日所有しているものが多ければ多いほど、明日も蓄積することができる」ことを固定化した過去数十年にわたる不平等な政策が、今後将来にわたって続く限り、富の不平等は拡大し続け、2070年までには世界の上位0・1%の最富裕層だけで世界の富の5分の1以上を独占し、中間40%の合計資産を上回ると試算している。

 

 さらに富の集中を助長したおもな要素は、富裕層による合法的な租税回避だった。現在、タックスヘイブン(租税回避地)に保有されている資産は、世界のGDPの約10%と推定されている。1980年には米国の株式時価総額の2%未満がタックスヘイブンに計上されていたが、この割合が2010年代初頭に10%近くまで上昇した。海外の金融機関に保有する口座を利用した租税回避などを防止するため、経済協力開発機構(OECD)が定めたCRS(金融口座情報を自動交換する制度)が世界100カ国以上で採用され、ルクセンブルク、シンガポール、ケイマン諸島などの主要なタックスヘイブンもそれに組み込まれた。このように大国による一方的な租税回避は、新しい形の国際協力を生み出したが、各国から情報提供が不足しているため「その有効性を正しく評価することは不可能」と報告書は指摘する。

 

 CRSに規制されない金融機関に対する統制と制裁措置がなく、何十年にもわたって脱税を助けてきた金融機関や仲介業者を使った脱税が依然として横行し、裕福な脱税者は信託、財団、ペーパーカンパニー、その他の仲介業者を利用することで資産から自分たちを表向き切り離すことが容易になっているという。米国などはデラウェア、ネバダ、ワイオミングなど国内にタックスヘイブンを確保し、CRS導入後、逆に国境をこえた預金レベルを増加させた多国籍企業もある。

 

 これらの脱税は、金融のグローバル化と国境をこえた資本の流れの自由化によって促進された。1995~2020年の間に、世界の金融資産は、世界の所得の540%から960%へと大幅に上昇した。

 

 報告書は「世界の不平等は政治的選択の結果であり、決して必然的(不可避)なものでない」とのべ、これに対して「健康、教育を含むすべての人の生活水準を大きく進歩させた20世紀の近代福祉国家の台頭は、すべての人が自分たちの利益に応じて公共の利益に貢献することを保証する累進課税によってもたらされた」と強調している。

 

 米国では1970年以降、所得上位1%の実効税率が半減し、逆に下位50%の税率が上昇の一途をたどった。同じように1980年代から2018年の間に、世界の平均法人税率は49%から24%へと半減し、日本でも2013年以降、法人税の割合を40%から31%へと引き下げている。これによって公共の赤字が拡大し、公共の富の減少によって政府の歳入も減少。逆進性の高い消費税(付加価値税)を上げるという悪循環が生まれた。

 

 米国やEUなど経済大国に本社を置く多国籍企業は利益の大半をタックスヘイブンに送金して課税を逃れてきた。現在、OECDが税逃れを防ぐために多国籍企業一法人あたりの最低税率を15%と定め、低税率国で税負担を軽減しても本国が差額分を徴収できる枠組みで合意したが、そもそもの税率が低すぎることに加え、税率がさらに低い場所に資本と雇用を移す趨勢は変わらないと報告書は指摘している。

 

 また、先進国は「政府開発援助(ODA)」として途上国に資本を投入してきたが、例えば1970年から2012年の間にアフリカ諸国から世界に流出した資本所得は、アフリカ諸国に流入した国際援助の平均額の3倍に相当し、報告は「豊かな国は貧しい国を助けるふりをしているが、経済の流れが『中心』と『周辺」の間でどのように組織化されているかをみれば実際に恩恵を受けているのは豊かな国の方だ」と注意を促している。

 

 そして米国では富裕層への大減税後、GDP成長率の上昇が止まり、1980年から経済学者や政治家が主張してきた「トリクルダウン(上層から下層へ富が流れる)」の約束は果たされることはなかった。日本のアベノミクスはその後追いにすぎなかった。

 

 大企業や富裕層への減税が経済成長や雇用創出に寄与しないことは、すでに世界中で証明されており、報告書は「私有財産は、個人の富の蓄積を制限し、富のよりよい社会的分配を達成するためのバランスの取れた一連の制度と権利の枠組みの中で、一般的な利益に役立つ場合にのみ確立されるべき」であるとし、「21世紀の課題を解決する新しい税制」として透明性の高い累進課税を強化するとともに、経常的な富裕税を導入し、ごく一部に集中した膨大な富を社会全体の福祉に還元することを唱えている。

 

 さらに多国籍企業への課税を強化してグローバルな再配分をおこない、地域間の富の不均衡を終わらせ、新型コロナで浮き彫りになった医療の不平等を是正する必要性を強調している。

 

原典世界不平等レポート(The World InequalityReport 2022 )

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