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世界のメーデーが映し出したこと 新自由主義乗り越えた社会を希求

 5月1日は労働者の日=メーデーで、世界各地で集会やデモ行進がおこなわれた。今年のメーデーは新型コロナウイルス感染のパンデミックが始まってから1年を経て、資本主義制度の危機、新自由主義の破たんが世界的にあらわとなるなかで開催された。各国の労働者が共通して掲げたのは、医療や教育、介護などの公共部門への国家財政の投資を増強することだ。「雇用、生計対策に国が全面的に責任を負う新しい社会」「無料医療、無償介護、無償住宅、無償教育の実現」「公共事業への再投資」などのスローガンを掲げ、資本主義にかわる社会への転換に向けて全世界の労働者、勤労者が団結することを呼びかけた。

 

 メーデーは135年前の1886年5月1日にアメリカのシカゴの労働者たちが8時間労働を要求して大規模なストライキに立ち上がったことを起源としている。1日12~14時間労働があたりまえだった当時、「1日のうち8時間は仕事のために、8時間は休息のために、そして残りの8時間は、おれたちの好きなことのために」を掲げておこなわれた。最初のストライキから約3年後の89年7月20日、フランス・パリで開催された第二インターナショナルの創立大会で、5月1日が「国際労働運動のための休日」に制定され、翌1890年5月1日に世界各国で第一回メーデーが実行された。これを機にメーデーは全世界へと広がった。

 

アメリカ

 

 アメリカの今年のメーデーの主題となったのは人種差別反対、移民や難民の権利擁護、労組の結成や団体交渉への保護を強化する「団結権保護法案(PRO法案)」の成立だった。

 

 カリフォルニア州のサンフランシスコ湾岸地域の各都市ではメーデー集会がそれぞれ開催された。サンフランシスコのメーデーは、湾岸地域の五つの労働者評議会の後援のもとで開催され、デモ行進には4000人が参加した。

 

サンフランシスコのメーデー集会

 

 デモの先頭に立ったのは国際港湾倉庫労組の労働者で、チリの港湾労働者のストライキ支援を前面に掲げた。デモ行進にはチリの港湾労働者の代表も参加し、新自由主義に反対する労働者の国際連帯を強調した。デモ隊は、チリ領事館前でチリ政府の強権的な弾圧の犯罪に抗議した。

 

 メーデー集会のなかでは、PRO法案の成立を要求するとともに、あらゆる差別の根絶をつうじて人種的正義と労働運動の統一を求めた。

 

 ロサンゼルスのメーデー行進には2000人が参加した。集会のなかでは、PRO法案の成立、移民の国外追放の中止と権利の保障、キューバへの封鎖の終了、アジア人への憎悪や中国たたきのキャンペーン中止を訴えた。ラテンアメリカの労働者との連帯組織は「団結した労働者は、決して敗北することはない」のスローガンを叫んだ。

 

 メーデー集会では、新型コロナウイルス感染のなかで亡くなったエッセンシャルワーカーと、依然として危険な労働環境のもとでたたかっているエッセンシャルワーカーに敬意を示した。

 

 シカゴでは市内のユニオンパークで1500人がメーデー集会を開き、中心街をデモ行進した。集会のなかでは、人種差別や移民・難民への抑圧、警察の暴力に批判の声が起こり、連邦議会で審議中のPRO法案の成立を訴えた。今年のメーデー集会開催で大きな役割を果たしたのは、「移民と難民のためのイリノイ連合」と「人種差別と政治的抑圧に反対するシカゴ同盟」の連携だった。

 

 メーデー集会に参加したヘルスケア組合の代表は、メーデーの発端となった1886年のシカゴでの8時間労働制を要求するストライキについてふれ、「100年以上たった今でも、労働の尊重とまともな賃金という同じ課題でたたかわなければならないのは恥ずべきことだ」と政府や資本家を批判した。

 

シカゴでの集会

 

 ニューヨークでは中心街のユニオンスクエアに400人余りが集まり、労働者の団結と組織化、移民の権利擁護、警察のテロ阻止などを訴えた。デモ行進は、アマゾンでの労組結成のたたかいを進めている労働者が主導し、マンハッタンにあるアマゾンCEOのジェフ・ベゾスの家の前では、労働者をしぼりあげ巨額の富を蓄えていることを非難した。

 

 メーデー集会の発言のなかで、市民団体の代表は、労働者や移民を抑圧する警察の犯罪的な役割を暴露し、「警察が労働者や移民を脅すために利用されていることは明らかだ。警察の予算の1㌦は、医療や住宅、教育、労働のために費やすべき1㌦だ」と訴えた。

 

イギリス

 

 イギリスの今年のメーデーで最大の闘争課題となったのは、大衆運動の抑圧など警察の権限を大幅に拡大する警察権限拡大法案の廃案だった。

 

 法案は現在下院で審議中で、600以上の社会団体が法案の廃案を要求し、3月から反対デモをくり返してきた。5月1日には、ロンドン、リバプール、バーミンガム、ブリストル、ニューカッスル、ボーンマスなど主要都市でデモがおこなわれ、労組とともに人種差別に反対する市民団体などがデモ行進に参加し、「法案廃案」を訴えた。

 

 ロンドンでは4000人以上がトラファルガー広場に集まり、内務省に向けてデモ行進した。デモ参加者は「抗議する権利を守る」「これ以上の警察権は必要ない」などのプラカードを掲げ、「だれの通り? 私たちの街」「労働者が団結すれば、決して敗北することはない」「法案廃案、法案廃案」のスローガンを叫んだ。

 

 デモ行進に参加した女性は「与党保守党は、障害者、黒人、女性などの人々に対してなんの対応もしていない。これは新型コロナのパンデミックのなかでもはっきりあらわれた。彼らの法案は私たちのたたかう能力を奪おうとするものだ。私たちはそれを許さない。廃案に追いこむまでたたかう」とのべた。

 

 介護福祉士の女性は「私たちがパンデミックの犠牲を強いられているときに法案が持ち出された。許せない。私たちは変化のためにたたかう必要がある。労働者がたたかわなければ、勝利することはできない。私たちは社会的に力を持っており、団結しなければならない」とのべた。

 

 鉄道海運労組の女性は「私は法案に強く反対しているからここに来た。政府は私たちの抗議する権利を奪うために、それを持ち込みたいのだ。私たちの不正に抗議する権利を譲ることはできない」と語った。

 

 女性教員は「私は教育者として、抗議する権利を守るために反対しなければならないと思っている。それが私たちが教えている子どもたちの利益である」とのべた。女性教員は、これまで組合活動に参加したことがなかった若い教員が政治的な意識を高めていることを強調した。

 

フランス

 

 フランスのメーデーは全土300カ所以上でデモや集会がおこなわれ、17万人以上が参加した。フランスの昨年のメーデーは、パンデミックということで街頭での集会、デモが中止となった。今年のメーデーは労働者の隊列が街頭に出て行動した。首都パリのデモ行進には2万5000人が参加した。各地のデモ行進ではとくに若者の参加が目立った。

 

 今年のメーデーの特徴はパンデミックのなかで、新自由主義の社会破壊が一層あらわになったことで、医療や健康の分野だけでなく、経済、社会、民主主義の全面にわたっての改革が訴えられたことだった。

 

 フランス労働総同盟はメーデーにあたって「私たちを現在の状況に導いた政策と経済論理を打ち破る計画」の必要を訴え、医療・健康をはじめとする公共事業への再投資などを要求している。

 

 焦点は失業保険改革反対だ。この改革は失業者給付を大幅に減らそうとするもので、労組の算定によると最大63%も削減となる。マクロン政府は今年7月1日から部分的に発効させようとしている。パンデミックで失業、貧困が深刻化するなかでの失業保険改革に労働者は怒りを募らせ、メーデー行進のなかでデモ隊は「失業者への戦争」と呼んで非難した。

 

 労組は「この時期に政府が失業保険改革で何十万人もの労働者を悲惨な状況に陥れようとすることは信じられない」「改革の撤回を求める。それはすでに大きな不安に苦しんでいる人々をムチ打つものだ」「失業者を攻撃することによって雇用は増えない。逆に仕事を探している人たちの保護が必要だ」と批判している。

 

パリでのメーデー

 

コロンビア

 

 コロンビアでは収奪強化の税制改革に反対する全面ストが4月28日からたたかわれ、メーデー集会もこのなかに組み込まれた。追いつめられたイヴァン・ドュケ大統領は5月1日に税制改革の見直しを発表し、財政相を更迭した。だがコロンビアでは新自由主義に反対する反政府闘争として全面ストを継続している。

 

 労組や社会団体などで構成する全国ストライキ委員会は5月4日に記者会見をおこない、経済、年金制度、労働、医療、教育に関連する要求や、警察の残虐行為・都市の軍事化停止を政府に受け入れさせ、民主的自由を回復するため、5月5日の大規模行動、闘争継続を呼びかけた。

 

 記者会見のなかで、コロンビア労働者中央連合の代表は、全国ストの要求は国民生活全般への増税、基礎的な食料品の値上げなどの税制改革の撤回にとどまらず、医療制度改革の撤回、全国的なワクチン接種計画の強化、ベーシックインカム(最低所得保障)の創設、零細企業支援、大学授業料の無償化、グリホサートの使用廃止と散布禁止などの要求をあげた。

 

 教員組合の代表は警察や軍隊の治安部隊による野放しの暴力を批判した。この残虐行為は1890件、死者は31人に及んでいる。

 

 また同日、上院の公聴会に呼ばれた全国ストライキ委員会の代表は、今回の全面ストが国民の大多数が拒否している税制改革撤回を政府が受け入れるようたたかってきたこと、新型コロナのパンデミックとたたかうために医療制度の強化やすべてのコロンビア国民のための1年間のベーシックインカムの創設などを訴えてきたことをあげ、もしこれを政府が受け入れていたら現在のような経済崩壊は避けられたことを強調した。

 

 全国ストは5月8日現在も継続しており、11日目に突入している。弾圧による死者は37人、行方不明者は359人にも及んでいるが、行動を抑えることはできない。

 

 コロンビアでは人口の半分近くが貧困状態にあり、貧富の格差は新型コロナのパンデミックのなかで加速している。コロンビアの民衆は、政治の腐敗と暴力・軍事化に怒りをつのらせている。パンデミックのもとで、コロンビア経済は大打撃を受け、多くの事業者が廃業に追いこまれた。失業率は17%に上昇し、都市部では20%をこえている。230万世帯が1日2回しか食事ができない。このパンデミックのなかで政府が持ち出した税制改革法案のなかには食料品などへの付加価値税を5%から19%に引き上げることなどが盛りこまれていた。

 

 人々は「なぜパンデミックのなかでデモをするのか、それはウイルスよりも政府の方が危険だからだ」と連日、街頭に出ている。「税金はもういらない」「奴らはわれわれを飢えさせている」「医療と教育」という横断幕などを掲げ抗議行動を継続している。首都ボゴタでは市内の15以上の拠点で抗議している。タクシーやトラックの運転手は、道路封鎖などの抗議行動を続けている。

 

首都ボゴタでのデモ

 

 コロンビアの民衆に対する政府の暴力・軍事化への国際的な批判は高まっている。世界の650の団体は政府の暴力を非難し、その調査を要求している。コロンビア国民に連帯するデモが世界各国でとりくまれている。5月8日、スペインの首都マドリードでは数千人がデモ行進をおこなった。同日、フランスの首都パリでは1000人以上がデモをおこなった。

 

フィリピン

 

 フィリピンではメーデーの5月1日、各地でデモや集会がおこなわれ、ドゥテルテ政府の新型コロナウイルス感染対策の失敗と大衆運動弾圧に抗議し、賃金補助、コロナワクチンの接種などを要求した。フィリピンでは、新型コロナウイルスのパンデミックとロックダウンのため昨年のメーデーはオンラインでの開催だった。だが今年のメーデーでは、対策をとり警察の弾圧とたたかいながら街頭での集会、デモがおこなわれた。

 

 マニラ首都圏では、コロナ感染者の急増のなかで1カ月のロックダウンが二週間延長され、集会・デモが禁止された。戦闘的労組センターである「5月1日運動」(KMU)などの団体は、マニラ市内のボニファシオ広場でメーデー集会を予定していたが、警官隊が早朝から会場を占拠・封鎖したため、急きょ会場をマニラ首都圏のケソン市内に変更して開催し、労働者をはじめ数千人が参加した。

 

 KMUは警察の弾圧について「“労働者の日”は労働者をたたえるべきだが、警察は労働者の抵抗する権利を奪うことで労働者を侮辱している。こうした弾圧にもかかわらず抗議をおしとどめることはできない」と批判した。

 

 メーデー集会のなかでは、ドゥテルテ政府による無責任な政策は致命的であり、多くの労働者がコロナやそのもとでの貧困によって命を脅かされていると批判した。他方で資本家は政府が実施した優遇税制などによって大もうけしていると批判し、すべての労働者に一日当り100ペソ(約230円)の現金給付を要求した。

 

 フィリピンではパンデミックのなかでの1年で、1100万人をこえる労働者が職を失ったり、収入減に直面している。そして新たな働き口を見つけた人たちの半数が契約社員、非正規である。賃金は低くなる一方で、物価は上昇するなか、圧倒的多数の国民は、いかなる形の支援、援助も政府から受けていない。

 

 新型コロナの感染対策でも、ドゥテルテ政府は有効な対策をとっていない。他方で反共攻撃を強めており、「対反乱作戦」の装いのもとで、労組や活動家の殺害、脅迫を続けている。ドゥテルテ政府はフィリピン国民が貧困、飢餓に苦しんでいるとき、企業の業績回復、税制上の優遇措置をとるとともに、運輸、通信をはじめとする公共部門への外国企業の参入を可能にする法整備を推進している。

 

韓 国

 

 韓国の民主労総は今年のメーデーを各地域本部ごとに開催し、不平等な社会構造を覆す韓国社会大転換のための下半期全面スト闘争を宣言するとともに、社会公共性強化、労働法全面改正、非正規職悪法・制度を変える闘争に乗りだす計画を明らかにした。

 

 民主労総の16の地域本部はコロナ感染対策のため、拠点での分散集会、参加者が入れ替わるリレー開催など、それぞれ工夫をこらしてメーデーをたたかった。

 

 ソウル大会は汝矣島LGツインタワー(本社)前で開催され、500人が参加した。同地での開催は、LGツインタワーの清掃労働者の136日間にわたる闘争に連帯するためのもので、闘争は4月30日に勝利した。

 

 メーデー宣言は、今の危機は資本主義の危機であり、新自由主義が終わりを告げる大転換の時代であるとし、「雇用、生計対策について国が全面的に責任を負う新しい社会をつくらなければならない。医療の公共性をさらに拡大して無料医療、無償介護を導入し、国民のだれもが住居と教育を心配することがない無償住宅、無償教育を実現しなければならない。4年前のろうそく革命のなかで社会の構成員全体が合意した“新しい大韓民国”の姿は、国家の役割、社会公共性を革命的に強化しようとすることだった」とし、社会大転換のために力と知恵を集めなければならない、民主労総はその先頭に立つと誓っている。

 

 メーデー大会を前後して各産別で独自の行動がとりくまれた。このなかで公共運輸労組は、アシアナ航空の子会社であるアシアナKOの不当解雇に抗議し労働者がハンストをしているソウル雇用労働庁までデモ行進した。

 

 化学繊維連盟・化学食品労組は、民主労組弾圧や不法派遣とたたかっている労働者支援のため、ベーカリーチェーンのパリバケット店舗20カ所などで集会を開いた。

 

 大型スーパーの労働者を組織しているマート産業労組は、構造調整阻止のため、ソウル市内の主要拠点で集会を開いた。

 

 全国建設労組は、ソウルをはじめ全国15拠点で闘争宣言決意大会を開催した。

 

南アフリカ

 

 南アフリカのメーデーは、新型コロナウイルスのパンデミックのもとで、オンラインでの開催となった。1994年にアパルトヘイトに反対するアフリカ民族会議のマンデラ政府が誕生して以来、メーデーは「労働者の祭日」として設定された。政府与党を支持する南アフリカ労組会議のオンラインメーデーに、大統領がメッセージを寄せているが、多くの労働者は茶番劇とみなしている。

 

 新型コロナウイルスの感染対策に失敗し、これまでに感染者は160万人、死者は5万5000人におよび、150万人以上が解雇され、失業者は720万人、失業率は30%をこえているからだ。そのためパンデミックのもとでも、労働者の闘争は絶えることがなかった。

 

 第二の労働者センターである南アフリカ労組連盟は、メーデーメッセージを出し、政府と新自由主義との闘争を呼びかけている。メッセージは「メーデーにさいし、私たちはわが国労働者への攻撃が前例のないレベルにまでエスカレートしていることに留意する。公務員全体に容赦のない賃金凍結を政府は課しており、私たちが団結して阻止できなければ四年間続くだろう。多くの国有企業の労働者は賃金凍結、削減に直面し、他のところでは賃金未払いが起きている」とし、アパルトヘイト体制をうち砕いて勝ちとった成果が、新自由主義、緊縮財政政策を継承、採用している政府によって脅かされていることを強調している。

 

 また新型コロナウイルス感染での危機は、衰退する資本主義社会の社会的経済的危機、不平等の具体的なあらわれであり、もうけ第一の大企業や新自由主義の政府との闘争を呼びかけている。当面の闘争課題として、闘争によって勝ちとったストライキなどの権利を脅かそうとする労働法改悪とのたたかいをあげている。

 

 経済の根本的な転換をはかっていくうえでの課題としては、労働者の民主的な管理下での鉱物資源の国有化、銀行の国有化、土地改革などをあげている。また青年学生からの要求の高い、真に無償の高等教育の実現を要求している。

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