昨年10月7日からのイスラエルのガザ侵攻で殺害された人たちの生前の写真、名前、経歴をオンライン上に記録するプロジェクト「ガザ・フェイス――わたしたちは数じゃない! GAZA FACES, NOT JUST NUMBERS!」の第1回ポスター展が10月5日(土)~21日(月)まで、東京外国語大学(東京都府中市)の研究講義棟1階ガレリアで開催されている。時間は午前8時から午後8時まで。
同プロジェクトは、2009年に撮影されたドキュメンタリー映画『ガザ=ストロフ―パレスチナの吟(うた)―』のケリディン・マブルーク監督とサミール・アブダラ監督が中心となって運営する国際的プロジェクトで、主流メディアでその姿が映し出されず、死者数としてしか報道されない、パレスチナの人々の人間性を世界に伝えることを目的としている。(英語版サイトhttps://gazadesvisages.com/index.php/en/)
日本で初となる東京外国語大学でのポスター展を主催する「TUFSパレスチナ連帯活動」(2024年5月に結成)は、東京外国語大学の公認学生団体で、パレスチナ連帯デモや同問題を扱った映画上映などの活動をおこなってきた。彼らは自身が翻訳を担ったポスター展の趣旨について次のように明らかにしている。
「ガザ侵攻で亡くなったパレスチナの人々の顔や名前は多くの場合、主要メディアで報じられることはなく、毎日死者数だけが更新されていく。パレスチナの人々には抑圧や暴力を受ける、あるいは外部からの支援を受けるだけの存在ではなく、それぞれに顔や人生、名前がある。空手選手、詩人、大学生、農家……。厳しそうな皺をたたえて笑う人、無邪気に笑う子ども。今回の展示では、そういった個々の人びとに焦点を当てたい。」
会場には、同プロジェクトが作成したポスターをはじめ、『現代詩手帖』(5月号)、『Passages Through Genocide(パレスチナの詩人や作家の言葉を集めた刊行物およびウェブサイト)から引用したパレスチナの詩人による詩も展示する。いずれも東京外大の学生が翻訳に携わった。主催者は「パレスチナの人びとや歴史や文化やイスラエルによる占領・虐殺が76年間にわたり続いているパレスチナの状況について興味をもっていただくきっかけになれば」と、参加を呼びかけている。
また、関連企画として、10月15日(火)午後6時~午後9時30分まで、同大学研究講義棟1階101教室で、長年に渡りパレスチナ問題について研究してきた早稲田大学文学学術院教授・岡真理氏(京都大学名誉教授)の公開セミナーも開催される。一般の参加も可能で予約は不要。
TUFSフィールドサイエンスコモンズ、東京外国語大学大石高典ゼミ、同坂井真紀子ゼミ、同アラビア語専攻有志が共催。東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター、Shkran、Gaza des Visagesが協力している。
ドキュメンタリー映画の上映も
この企画と関連して、上記プロジェクトを運営するケリディン・マブルーク監督とサミール・アブダラ監督が2009年に撮影した仏ドキュメンタリー映画『ガザ=ストロフ —パレスチナの吟(うた)—』が10月11日(金)に「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市)、10月18日に「アップリンク京都」(京都市中京区)で公開される。一般劇場での日本公開は今回が初となる。
映画は、2008年12月末から2009年1月にかけてイスラエルによるガザへの大規模侵攻が勃発するなかで、停戦翌日にパレスチナ人権センターの調査員とともガザに入った両監督が記録したドキュメンタリー。爆撃で両親兄弟を失った子ども、目の前で家族を銃撃された男性、土地を奪われ逃げてきた人々など、「顔を持つ」一人一人の証言が記録されるとともに、パレスチナを代表する詩人、マフムード・ダルウィーシュの詩が引用され、ガザの人々が生きてきた歴史と記憶が呼び起こされる。ガザの地で生きる人々の姿を丁寧に描きながら、同時にパレスチナ問題の背景にある西洋諸国による二重基準、構造的暴力についても浮かび上がらせている。
アルジェリア系フランス人のケリディン・マブルーク監督は、「パレスチナの人々は常に西洋の視点から描かれ死亡者数という数に還元されてきたが、一人一人の顔を描き世界に伝えることがこの作品の第一の目的だった」と振り返り、「パレスチナには世界の問題が凝縮されている」と強調する。
映画上映に合わせて、アップリンク吉祥寺(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5-1 パルコ地下2階)では、以下の日程でトークショーがおこなわれる。
■10月11日(金)20:02〜20:45
ゲスト:ケリディン・マブルーク監督(※監督はオンラインで出演)
テーマ:「一人ひとりの「顔」を伝えるために」
■10月12日(土)20:02〜20:45
ゲスト:ケリディン・マブルーク監督(※監督はオンラインで出演)
テーマ:「ガザには世界の問題が凝縮している」
■10月13日(日)20:02〜20:30
ゲスト:早尾貴紀(東京経済大学教授)
テーマ:今に続くパレスチナ問題の起源(仮)
早尾貴紀:研究分野は社会思想史、パレスチナ/イスラエル問題。ヘブライ大学客員研究員として 2002-04年(第二次インティファーダ期)に東エルサレム在住、その間に西岸地区、ガザ地区、イスラエル国内でのフィールドワークをおこなう。著書に『パレスチナ/イスラエル論』(有志舎、2020年)『ユダヤとイスラエルのあいだ――民族/国民のアポリア』(青土社、2009年、新装版2023 年)など。
■10月14日(月) 20:02〜20:30
ゲスト:伊勢崎賢治(東京外国語大学名誉教授)
テーマ:「国際紛争の中でのパレスチナ問題の特異性」
伊勢崎賢治:インド留学中、現地スラム街の居住権をめぐる住民運動にかかわる。内戦初期のシエラレオネを皮切りにアフリカ3カ国で10年間、開発援助に従事。東ティモールでは国連PKO暫定行政府の県知事を務める。日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を担当。また、ジャズミュージシャン・トランペット奏者としても知られる。
■10月16 日(水)20:02〜20:30
ゲスト:TUFS パレスチナ連帯活動
テーマ:「なぜ私たちはパレスチナに連帯するのか」
TUFSパレスチナ連帯活動:東京外国語大学公認学生団体「TUFS パレスチナ連帯活動/TUFS for Palestine」を立ち上げ、キャンパスでの座り込み、映画上映会などを通して、パレスチナ問題への理解を深める・広める活動を行っている。『ガザ=ストロフ —パレスチナの吟(うた)—』両監督が中心となって進めているプロジェクト「GAZA FACES,NOT JUST NUMBERS!」の日本語版作成に携わり、東京外国語大学にて、10月5日よりポスター展を開催。