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西側の「正義」覆る世界の世論 ガザやウクライナも重ね論議 広島平和公園で「原爆と戦争展」の反響から

真剣な表情で「原爆と戦争展」パネルを参観する人々(5月18日、広島市中区・平和公園)

 原爆展全国キャラバン隊は18日と19日、広島市にある平和公園で街頭「原爆と戦争展」を開催した。世界各国から広島にやってくる観光客が増えているなかで、多くの外国人が展示に足を止め真剣に見入っている。そして、現在の世界的な戦争情勢と過去の大戦の歴史的背景を重ね、自身の利益のために戦争を起こす一部の権力者への憤りと、その戦争に多くの一般市民が巻き込まれて犠牲になることへの問題意識を抱いている。また、全国空襲や沖縄戦、原爆投下によって大量の民間人を虐殺し、それを正当化してきた西側の「正義」について、世界中の若い世代を中心に多くの人々が疑問を抱いており、真実を知るために真剣に学ぶ姿勢が目立っている。

 

 広島市の平和公園で毎月おこなっている街頭展示では、戦後日本を単独占領したアメリカ帝国主義の存在とそのおこないについて、海外の参観者が強い関心を示している。なぜアメリカは原爆を投下したのか? との疑問を持って広島を訪れたという人が多く、戦後の占領政策についての展示内容を読み込む姿が目立っている。

 

 展示では、「原爆投下は、戦争を早く終わらせるためだった」「アメリカが日本の軍国主義を終わらせ、民主化を実現した」という戦勝国側の主張を真っ向から否定している。なかでも「原爆は戦争終結のためには必要なかった」と題するパネルには、当時の米国政府関係者の証言を記載している(以下、要約)。

 

 トルーマン(アメリカ大統領)「ソ連が参戦すれば、日本はお手上げだ」「原爆を投下すれば、ロシアがやってくる前に日本はお手上げだ」

 

 マッカーサー(アメリカ極東軍最高司令官)「私の幕僚たちは一致して、日本は崩壊と降伏寸前の状態にあると判断していた」「原爆投下は軍事的に見ればまったく不必要である。日本は降伏を準備している」

 

 バーンズ(アメリカ国務長官)「原爆は日本を打ち破るために必要なのではなく、ソ連をもっともコントロールしやすくするためだった」

 

原爆正当化信用できず アメリカ人女性

 

参観者の多くを海外から訪れた人たちが占めている(18日、広島平和公園)

 アメリカから来た60代の女性は「なぜアメリカがこのような恐ろしい兵器を投下したのか、ずっと疑問に思っていた。私は米国で教えられてきた原爆投下を正当化する主張についてはまったく信用したことはなく、ずっと本当の目的を知りたいと思っていた。広島に来てこの展示を見て、そのことが少し分かった。もっと何度もくり返して読んで理解したい」といって、何枚ものパネルを写真に収めていた。

 

 世界中から訪れる参観者たちは、世界的な戦争情勢や、ウクライナ戦争やガザ戦争をめぐる自国や各国政府の曖昧な対応に危機感を募らせており、世界的な戦争反対の世論と行動を強く求めている。また現在、パレスチナ自治区ガザでは最後の民間人の避難区域であるラファにイスラエルが攻撃を開始しており、これに対し世界中の大学生をはじめ若い世代が「ジェノサイドをやめろ!」とイスラエルへの抗議行動を続けている。こうした運動とも関連し、第二次世界大戦で日本の民間人に対する大量虐殺の実態や、それでも戦争を続けた日本の帝国主義の過ちについて、海外の若い世代が強い関心を示している。

 

 一方、イスラエル人の参観者のなかでは、イスラエル軍がガザ市民への攻撃を続けていることについて、「イスラエルにおけるストーリーは明らかに異なる。これは10月7日にハマスが始めた戦争だ。テロリストはパーティーに参加していた民間人を襲い、殺害し、レイプした。そのほとんどが子ども、年寄り、女性だった。イスラエルは民間人がいない場所を攻撃している。そして攻撃する前には警告をおこなっている。ハマスは悪魔であり、戦争は正義だ」(20代男性)、「いかなる暴力にも反対だ。私たちが望んでいるのは、私たちの小さな国で静かに暮らす平和だけだ。しかし残念なことに私たちはあらゆるところから攻撃を受け、それを犯された。ハマスは家に帰れ!」(女性)との意見をアンケートに記す人もおり、現在進行している戦争当事国に存在する生々しい感情も垣間見られた。

 

 こうした戦時下の国民への情報統制や世論の煽動について、アメリカから来た20代の女性は「アメリカの学校では戦争の事実だけを教えられるが、一般の民間人に対する戦争の影響については何も教えられないため、とても有益な展示だった。また、とくに興味深かったのは日本で戦争の機運が高まっていった背景についての展示だ。それは日本の天皇と権力者が自身の権力を保持するためにおこなった絶望的な攻撃であるように見える。また、第二次世界大戦中、政府は国民が反乱を起こすことを恐れて日本が各地の戦闘で勝ったか負けたかなどの情報について、市民に対して知らせていなかったということを初めて知った」とアンケートに記した。

 

対米従属下の日本の姿 パネル展示で深まる

 

 20代女性は長時間かけて展示を見たあと、「日本の政党のなかで、共産党は憲法改正や戦争に強く反対しているのに、私を含めなぜこれほど国民からの支持を得られないのかということがずっと気になっていた。だがそのことが、今日少しわかった気がする。展示のなかで、戦後のアメリカの占領下で共産党は米軍を“解放軍”だと大歓迎したことが書かれていて、腑に落ちた。戦後の日本国民にとってその行為はとても大きなことだったのだと思う」と話した。

 

 また、「映画『オッペンハイマー』を見た。原爆投下をめぐり米国側にもいろいろな事情があったことはわかったが、私のなかに残った思いは“やっぱり許せない”ということだった。戦争の悲惨な部分については学校やメディアでも知る機会が多い。しかし戦争が終わってからの日本について学ぶ機会はほとんどない。日本史の勉強のなかでは、戦争が終わって高度経済成長が訪れ、すばらしい戦後が訪れたという印象しか残らない。だから、“敗戦国”としての日本を私たちはあまりにも知らなすぎるのだと思う。戦争の恐ろしさや残酷さを知るだけではだめだ。今、ガザ戦争やウクライナ戦争で、国連や世界の世論として“核兵器だけはだめだ”といわれる。確かに絶対に核兵器は使ってはならないが、それでは“良い兵器、悪い兵器”という議論で終わってしまう。世界各国の政府や機関があまりにも機能していないことがもどかしい」と話していた。

 

 この女性はアンケートに「原爆投下後の被害や落とされた経緯だけでなく、アメリカが戦後どのように介入し、一部の財閥を生かしてきたかがよく分かった。また、なぜ共産主義を怖い、あるいは避けるべきと自分が考えていたのかが以前から気になっていた(共産党支持といいづらい風潮)のだが、そこには戦後日本と利害関係があったアメリカの影響があったのだということがわかった。現在の状況とも重なり、とても勉強になる展示を誰でも見ることができる場所で実施してあったのがよかった」と記していた。

 

 愛知県から来た60代の大学教員は「パネルの後半に、現代の問題について“貧乏になってまた戦争になる”と指摘するパネルにとても共感できた。2010年代頃から子どもの貧困がいわれるようになり、経済的困窮状態にある若者たちを自衛隊や防衛医科大などに引き込んで戦争に協力する人を再生産しようという動きを現場でひしひしと感じてきた。まさにアメリカの“経済的徴兵制”と共通している。私は大学で憲法を教えている。今の学生は自民党が狙う憲法改定の中身をほとんど知らないまま育っている。だが授業で何が狙いなのかを丁寧に教えると、素直に受けとり“おかしいことだ”と理解してくれる」といい、さらに「若者は何も考えていないようにいわれるが、彼らはすごくよく考えている。最近も、学生の方から“ガザの問題について授業でとりあげてくれ”と要望があった。今の日本や世界の流れに対し、“おかしい”“危険だ”という意識は若い世代のなかで強まっていると思う」といった。街頭展示の元となるパネル冊子を大学の図書館で扱いたいと話していた。

 

被爆者の証言は世界動かす 外国人のアンケートより

 

親子で「原爆と戦争展」パネルの英訳を読む外国人参観者(18日)

 展示を参観し終えた外国人参観者は、自身の感想や意見をアンケート用紙いっぱいに記した。展示について強い共感を示すとともに、現在のウクライナ戦争やガザ戦争をめぐり多くの民間人が犠牲になっていることに心を痛め、早期停戦を強く求めている。以下、アンケートの内容を紹介する。

 

 ▼真相を語り継ぐ必要があり、このことは極めて重要だ。私たちはアメリカ人として、過去におこなったことについて絶対に忘れてはならない。私たちアメリカ人が日本を訪れることは悲しみがともなうが、同時にその私たちのほとんどがまだ真実について何も知らなかったのだということを感じた。人類は人間性(思いやり)について何も学んでいない。そしていまだに何事も起こっていないかのように殺人を続けている。また、米国政府がいまだに打算的な役割を果たし、悪事を世界に伝染させ続けていることはもっとも恥ずべきことだ。(アメリカ・33歳女性・法律学部生)

 

 ▼年代順に示された展示によって、日本人の視点を通して見た第二次世界大戦について理解することができた。体験者による証言や非戦闘員が体験した出来事に焦点を当てることによって、支配階級と一般市民との間にまったく意思の疎通がなかったことを浮き彫りにしている。戦争とは、権力者が望んで始まるものであり、苦しむのはそれ以外の人々だ。多くの人々は国家と国民との違いについて、あまりよく理解していないように思う。多くのロシア人が戦争に反対している。私はドイツ人なので幸運だったが、私と同世代の多くのウクライナ人やロシア人は、負傷したり殺されたり、家族が負傷したり殺されたりして涙を流しながら生きていかなければならない。そして多くの人々が他人を殺害しなければならなかった。その過程でみな自身の魂の一部を失いながら……。もはや巻き込まれた全員が敗者だ。よその国の人々は、「ウクライナ側か、ロシア側か」を選ぼうとするが、戦争というものは野球の試合とは違う。多くの人々が早くそのことに気づくべきだ。(ドイツ・20代男性)

 

 ▼原爆の被害と戦後の日本と連合国軍をめぐる出来事や活動について詳細かつ深く考察された展示だった。兵士や生存者の証言を読み、信じられないほど心を動かされた。彼らの声は、今世界中で停戦を求め、戦争に反対している人々を動かすために力を発揮するだろう。ロシアによるウクライナへの攻撃は非人道的で許しがたいものだ。また、イスラエルによる大量虐殺行為とパレスチナの占領は悪であり違法だ。今すぐに止めなければならず、パレスチナを解放しなければならない。パレスチナに自由を!(イギリス・27歳女性・アーティスト)

 

 ▼非常に有益な情報であり、日本側の歴史をとてもよく知ることができる。多くの新しい情報を得ることができた。世界で起きている戦争や民間人への虐殺は不必要だ。それらは支配者の欲望によって生み出されるものであり、民間人から求められているものではない。それらは政治家や権力者たちの利益のために動機づけられるが、紛争が拡大しないよう政府はそうした策動とは距離を置くべきだ。戦争には常に民間人が巻き込まれるため、始まってはならない。民間人を攻撃する者に対する決定的な処罰はなく、それらは単に「戦争の副作用」とみなされてしまう。だからこそ戦争は起こしてはならないし、それ以外に民間人を守るための解決策はない。(コロンビア・31歳男性・エンジニア)

 

 ▼とても良い展示だった。原爆の被害や影響、戦後の背景についてより多くのことを学ぶことができた。私は今世界史(とくにアジア史)と政治を勉強しているので知っているつもりでいたが、学校の教材は当事者の証言には到底及ばない。ロシア―ウクライナ戦争による影響は、ヨーロッパ諸国にとって常に脅威となっている。ロシアが国連の重要なメンバーでありながら、国連の働きかけを妨げていることは非常に残念だ。だが同時に国連そのものも決して有能とはいえないと思う。国連平和維持軍(停戦や休戦の確保、治安維持などにあたる)は明らかに良い助けにはなっていないからだ。ガザ戦争については、まさに今明かなジェノサイドが進行中だ。私たちはパレスチナ人がこれ以上虐殺されないよう立ち上がらないといけない。(フランス・20歳女性・大学生)

 

 ▼第二次世界大戦時の太平洋戦域における人種・民族的迫害とその結末について、非常によくまとめられた展示だった。誰の目にも明らかな恐怖だ。原爆投下とその影響についての解説を読み、そのことが悪であり、全人類にとっての「墓場」になるとの信念をより強くした。ロシア―ウクライナ戦争と、パレスチナでシオニストによる違法占領が今日まで続いているもっとも大きな原因は、アメリカ帝国主義以外にないと私は考える。(アメリカ・44歳男性・エンジニア)

 

 ▼広島、長崎への原爆投下前後に起きた出来事についての記事や写真を見ることは非常に辛かった。市民に対しておこなわれたこれらの行為は残酷きわまりない。今もウクライナ戦争やガザ戦争で続いている市民への攻撃と殺害は即座にやめるべきだ。これらは全人類、全世界への敵対行為だ。いかなる攻撃も許してはならない。戦争によってもっとも被害をうけるのは民間人だ。すべての国家は、第一次・第二次世界大戦によって得た教訓を生かし、国際法という観点からすべての手段を用いて、戦争を阻止し、非難すべきだ。今なお多くの市民が攻撃に晒されている。(チリ・33歳女性・弁護士)

 

 ▼非常に参考になると同時に、深く考えさせられた。実際に原爆が投下されたこの場所で読むと、とても重みがある。また、この残虐行為に至った背景について読むことができたことも興味深かった。世界中で歴史はくり返される傾向にある。上流階級は、基本的な人間性のレベルを超越した動機で下層階級を利用しようとする。日米双方にとってひどいことだ。私はアメリカ人であることを少し恥ずかしく感じることがある。原爆投下の必要性については絶対に理解することができないし、日米間の癒しが少しでも進むことを願う。これらの写真や証言を見る限り、その道のりはとても厳しいものだとは思うが、私たちはそのための努力を続けなければならない。平和は何事にも代えがたいものなのだから。(アメリカ・47歳男性)

 

 ▼どちらにも傾いておらず中立で非常に有益な展示だ。戦争による荒廃と原爆による人類の悲劇について赤裸々な真実を示している。日本、アメリカ双方の権力者たちは皆、自分たちの利益のために働き、庶民のことなど気にもかけていなかった。今も戦争によって民間人への虐殺がおこなわれていることに、私は深く悲しんでいる。戦争における勝者など存在しない。現代の戦争はジュネーブ条約(非戦闘員を保護する条約)に則っておこなわれているとされているにもかかわらず、現実はより冷酷で無慈悲なものになっている。このままでは人類の未来は良くならない。(インド・27歳男性・エンジニア)

 

アンケートに感想を記す参観者たち(19日、広島市)

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