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「私たちは正しい歴史の側に立つ」 ガザに連帯して行動する米国の学生 卒業スピーチより

米ミシガン大学の卒業式でパレスチナ国旗を掲げて「イスラエルは撤退せよ」とアピールする学生たち(4日)

 米国内の大学では、学生たちがキャンパスでパレスチナ連帯キャンプをおこない、イスラエルによるガザ虐殺停止とともに米国政府や大学当局にイスラエルへの投資撤退を求める運動が広がりをみせている。大学当局と警察が強権的に学生らを排除・処分し、議会ではイスラエルに対する発言や抗議を禁じる「反ユダヤ主義啓発法案」が下院を通過するなど言論封殺の圧力も強まっている。卒業シーズンを迎えた大学では、予定されていたパレスチナ系卒業生のスピーチが「安全上の理由」で急遽中止されるなどの圧力がかかるなかで学生たちは独自のやり方で意志を表明している。オハイオ州トレド大学では4日、大学院卒業証書授与式で法学部卒業生で大学院生協会会長のマハ・ゼイダン氏が全卒業生とその家族、教員の前でおこなったスピーチが拍手喝采を浴びた。以下、スピーチ全文(試訳・編集部)を紹介する。

 

*       *

 

 「サラーム・アライクム」は、(アラビア語で)皆さんのうえに平和がありますように、という意味です。

 

 私が生まれたのはパレスチナの美しい街です。この瞬間のために、そしてそれを達成するために、私の両親はここに来て、ここで人生を築くことを決めました。私の成功の礎となった彼らの献身的な犠牲と愛、そしていつも私のそばにいてくれた兄弟姉妹に心から感謝の意を表したいと思います。この感謝の気持ちを抱いているのは私だけではありません。会場におられる皆さん一人ひとりが、卒業生のために犠牲を払ってくれたり、決して忘れることのない方法で卒業生の成功に貢献してくれたのです。皆さんに感謝します。

 

 今ここで、私たち全員がこの瞬間までたどってきた特殊な過程を理解し、認識することが不可欠です。私たちがここで過ごしている間、私たちはかつてないほど世界を揺るがす重大な挑戦と不正義を目の当たりにしてきました。私たちは、イスラエル国家によってパレスチナで過去7カ月間に少なくとも4万人もの人々が殺され、無実の人々の命が奪われるという前代未聞の事態を目撃し、それは現在も続いています。これらの人々は無実のイスラム教徒であるだけでなく、無実のキリスト教徒や無実のユダヤ人でもありました。これらの人々は民間人であり、その大多数は子どもでした。私たちは、世界で最も古い教会の一つやモスク、大学、さらには国連によって指定された安全地帯さえも破壊されるのを目撃しました。

 

 本日は達成と祝福の日ではありますが、これは私たちが人生の次の章に進むにあたって認識しなければならない厳しい現実です。なぜかと思うかもしれません。なぜなら、私たち国民は税金でこれらの恐怖に資金を提供しているからです。あなた方一人ひとりが職業人として人生を歩むなかでその影響を受けるのです。

 

 次のことを考えてみてください。まさに文字通り私たちの未来を形成するために働いている教師の給料が平均的なフルタイム従業員よりも低いということ、あるいはこの国のために命をかけた120万人の退役軍人が貧困ライン以下の生活をしていること、またトップクラスの医療保険会社が約690億ドルもの利益を上げた同じ年に、6万8000人のアメリカ人が医療を受けられずに亡くなっていることを。

 

 私たちは、これらの問題の解決にとりくまなければならない世代です。なぜアメリカ人が医療を受けられずに死んでいく一方で、数え切れないほどの国際法違反の戦争犯罪で有罪判決を受け、ジェノサイドで裁判中の国家に対して、約3200億ドルもの対外援助を送っているのか、私たちは問わなければなりません。

 

 今日、私が皆さんに伝えたいメッセージは、私たちこそがその世代であるということです。そのことを証明しているのが、大学の屋外でキャンプをし、私たちの資金をもっと有効に使うよう要求している数千人の美しい勇敢な学生たちです。

 

 ここにいる皆さんの中に、私がこれまで述のべてきたことに共感できない、あるいは興味がないと感じている人がいるとしたら、私はこう考えてみてほしい。私たちが成長の過程でホロコーストの残虐行為や奴隷制の恐怖について学んだとき、一体どうしてこのようなことが起こったのか疑問に思ったことを。「悪の勝利に必要なのは、善人が何もしないことだ」という有名な言葉がありますが、もしあなたがあの恐ろしい時代にいたら、自分はどうしただろうか。そして今、自分たちが何をしているのかをよく考えてみてほしいのです。

 

 私たちは、宗教や生まれ育った環境(バックグラウンド)によって分断されることを受け入れない世代です。私たちの世代は、私たち自身と正義のためによりよい未来を求めており、不当な偏見や憎悪に満ちたレッテルを受け入れません。

 

 これが型どおりの卒業式のスピーチではないことをお詫びします。しかし、私たちが生きている時代に型通りのものは何もありません。私たちが生きるこの世界に型通りのものなものなど何もないのです。1万5000人もの子どもたちの死がライブ配信によって見守られるなかで、私たちの制度的な共犯関係について黙殺したり、全国で警察権力を著しく乱用することに容認できるものは何一つありません。

 

 世界は切実な変化を必要としています。そして私たちはそれを成し遂げなければなりません。ですから今日、ここにいる皆さん、友だち、家族、教授陣、学部長、そしてすべての学生に私は伝えたい。たとえそれがどんなに恐ろしくても、私たちはあらゆる機会を利用して変化を起こさなければなりません。

 

 今日の卒業生である私たちは、明日の英雄になる機会が与えられています。歴史に目を向ければ、学生たちは常に歴史の正しい側にいたことがわかります。その鍵となるのは連帯感です。真実の代償として不快感を受け入れ、共通点を見つけ出すために難しい会話をし、あなたが想起する「サラーム(平和)」に向けて力を合わせることです。

 

 私がこのステージを降りるとき、私の使命は平和のためにあることを忘れないでください。それを支持しないことは、私たちUT(トレド大学)の価値観や私たちの人間性を示すものではありません。

 

 最後に私からサラームを送ります。苦闘している先生方、退役軍人の方々、私の仲間のアメリカ人、パレスチナの家族、ガザの人々、そして平和のためにたたかっているすべての人々に。皆さん、おめでとうございます。サラーム。

 

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出典:The University of Toledo Commencement | Spring 2024 | Doctoral Hooding and Graduate Ceremony(37:15~):https://www.youtube.com/watch?v=QLR4IhYbyuk

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