原子爆弾が広島、長崎に投下され、幾十万もの生命が奪われた夏から、65年目を迎える。生き残った人人も癒すことができぬ傷を負って命を縮めてきた。アメリカはこの史上もっとも凶悪な犯罪を正当化し、日本全土に米軍基地を置いて売国政府を従わせてきた。アメリカによる戦後植民地的支配のもとで、国民が築いた富は奪われ、日本は荒れ果てた社会となった。そのうえ、「米軍再編」の名のもとに日本をアメリカの原水爆戦争の盾にして壊滅させかねない事態になっている。これは日本民族全体に刻まれた屈辱である。アメリカに原爆投下を謝罪させ、日本全土から核基地を撤去させなければならない。日本とアジアを核戦争の戦場にさせてはならない。核兵器の廃絶にむけた国民的な悲願を結集し、広島、長崎を起点に壮大な原水爆禁止運動を発展させることが切実に求められている。
第二次世界大戦の末期、日本の敗戦がもはや決定的であった昭和20(1945)年8月6日と9日、アメリカは広島と長崎の密集する民家、市民が最も外に出る時間帯を狙って老人、婦人、女学生、中学生、勤め人などなんの罪もない人人をめがけて原子爆弾を投げつけた。閃光一下、無惨に焼き殺され、原爆症で苦しみ死んでいった老若男女の叫びその地獄のような光景、残された孤児や肉親の悲しみは決して消し去ることはできない。
なぜ、なんのために、そのような残酷な目にあわねばならなかったのか。当時、日本の制空権、制海権はアメリカが完全に握っており、軍事的勝敗を決するために原爆を使う必要はまったくなかった。
武器も持たされぬ兵隊を乗せて戦地に向かう輸送船は、待ち伏せたアメリカの潜水艦によって次次に沈められていた。中国やビルマでは敗北の行軍が続き、南の島では飢えや熱病で死に絶えていく状況であった。沖縄戦で、本土の各都市で老人、婦人、子どもたちが米軍の艦砲射撃、焼夷弾による空襲、機銃掃射によって虫けらのように殺され、逃げまどう日日を送っていた。国際的に見ても、すでにヨーロッパ戦線ではナチスドイツが降伏し、戦後世界をめぐる駆け引きが主要な関心となっている時期であった。
アメリカが原爆を使ったのはただ、戦後の世界制覇の野望のもとに、天皇を従えて日本を単独占領する必要からであった。アメリカはヤルタ会談で定められたソ連の参戦(8月9日)が間近に迫ることに焦って、原爆を急いで製造し緻密な計画のもとに、人類最初の2発の原子爆弾を日本人の頭上めがけて投下したのである。
原爆のような兵器を製造、貯蔵すること自体が許し難いことである。アメリカの原爆投下の犯罪は人類の名において糾弾されねばならない。だが、アメリカは「原爆投下によって、日本軍国主義の無謀な戦争の終結を早めることができた」などと偽り、これを正当化してきた。
アメリカの原爆投下による単独占領の意図は、今ではひじょうに明白である。それは核兵器を根幹にした米軍基地を日本全土にはりめぐらして侵略支配し、天皇をはじめ日本の支配層の地位を保障することで反米の牙を抜き、「民主的改革」の装いで財界、政界、官界などを民族的な利益を根こそぎ貢ぐ植民地的構造に再編するものであった。そのもとで、日本を出撃基地にして朝鮮、ベトナム、アフガン、イラクなど戦争につぐ戦争をくり返してきた。それは、圧倒的な核兵器の所有を背景に「核の先制使用」を公言するなど、世界中を威かくすることによって強行されてきた。
日本盾に核戦争を企む 「核廃絶」叫ぶ米国
オバマ大統領は「核廃絶」を売り物にしているが、核拡散防止条約(NPT)再検討会議でも「核廃絶」への具体的行動を拒否するなど、その正体が暴露されている。オバマの「核なき世界」とは、「他国が核兵器を持つかぎりは、保有し続ける」といって、アメリカだけは最後まで核兵器を持ち続けるというものである。それが原爆使用の危険性を高めるものであることは、アメリカが広島・長崎に原爆を投下したのが自分だけが原爆を持ったときであったことからも明らかである。
オバマ政府はなによりも、軍事戦略の中心に核兵器を据え中国、朝鮮、ロシア、イラン、シリアを「潜在核攻撃国」として核攻撃の対象にすることを公言している。米軍再編計画は原水爆を使用する陣形をいちだんと強めるものである。そのもとで、日本をカナメとした東アジアの緊張を高めている。
アメリカは日本列島を「多数の戦略核兵器で敵国を壊滅することができる能力」「数十万人規模の陸軍を海を越えて上陸させ、敵国の主要部分を占領し戦争目的を達成できるような構造を備えた陸海空軍戦力」を持つ「戦略的な根拠地」として位置づけている。それは米軍主力部隊を「安全な米本土やグアム」に引き下げておいて、戦争となれば米地上軍や戦斗機を集結させて、日本の国土を核攻撃の出撃拠点に使うというものである。「ミサイル防衛網(MD)」は、日本を拠点に一方的な攻撃の態勢をつくることで日本全土を報復攻撃の標的にし、日本とアジアを原水爆戦争の火の海にしようとするものである。
普天間基地の「移設」は、海兵隊主力のグアム移転などと連動した、日本列島をアメリカの国益のための原水爆戦争の盾にする米軍再編の一環である。それは、辺野古に巨大基地を新設するなど沖縄の米軍基地を大増強したうえに、「沖縄の負担軽減」の欺まんで徳之島に大型滑走路を敷設し、日本全土の80カ所におよぶ米軍基地とその指揮下にある自衛隊基地を再編・増強するものである。
そのもとで米軍は、岩国基地に核攻撃ができる空母艦載機ホーネットを大量に移転配備し、周辺に夜間着艦訓練(NLP)基地を建設しようとしている。また、岩国近隣に核兵器貯蔵庫を持つ秋月弾薬庫を置いて、呉を米軍支援のための海上自衛隊の出撃基地にするなど、広島湾岸一帯を極東最大の核攻撃基地にとってかえようとしている。これは、長崎県の佐世保を原子力空母やイージス艦の出撃拠点にし、普天間基地を長崎県の大村に移そうとする計画とあわせて、被爆地に対するこの上ない冒とくであり、日本国民として許せぬ策動である。
アメリカは、韓国哨戒艦沈没事件を「北朝鮮の魚雷攻撃」とねつ造し、マスコミで煽り立てて韓国、日本を(北朝鮮の制裁」にかりたて朝鮮戦争を挑発したが、国連でも名指し非難もできずに失敗した。だが、黄海で韓国との合同軍事演習を行うことで朝鮮、中国を挑発し、横須賀から米第七艦隊の原子力空母ジョージ・ワシントンを参加させようとするなど、日本と東アジアに一触即発の緊張状態をつくり出している。
普天間問題で野垂れ死にした鳩山政府に続き、菅政府も「アメリカの核抑止と日米同盟が日本の安全にとって一番重要」といって、「北朝鮮への制裁」を叫び北朝鮮の船舶臨検など戦争挑発のお先棒を担いでいる。そして、ひき続き核攻撃を想定した「国民保護計画」「テロ対策」の名で住民総動員の訓練を実行し、米軍の作戦に自治体を動員して、民間空港、港湾、鉄道、離島も含めて全土を提供しようとしている。
北朝鮮との軍事的力関係では、米日韓の軍事同盟のもとで圧倒的な核攻撃態勢が敷かれており、もし北朝鮮が先制攻撃するなら核ミサイルで壊滅的な打撃を加えるという関係にある。戦後の全体験は、なによりも日米同盟と「安保条約」こそが日本人民に苦難をもたらし、生命の安全を脅かす根源であることをはっきりと示している。
日本を潰す亡国の構図 原爆投下に起因
戦後の日本政府は自民党であれ、民主党であれ、アメリカの意向を貫くことを第一にして日本民族の根本的利益を売り渡してきた。とくに「金融の自由化」をはじめ外資の市場参入、労働、教育、医療など生活の全分野にわたるアメリカの「自由化」「規制緩和」の要求を忠実に実行した小泉政府の「構造改革」によって、日本の植民地的荒廃は段階を画し、無残な状況に落とし込められた。
そのもとで、株や債権による利ザヤ稼ぎが企業を采配し、詐欺まがいの金融商品を押しつける外資ファンドが君臨して市場を食いものにし、日本の資金は国民の貯蓄や年金までもがアメリカにそっくりまき上げられる構造が形成された。その一方で、社会の富を生産する労働者がモノ扱いされ、医療・福祉が切り捨てられ、重税が押しつけられている。
ユニクロやパナソニックなど日本の製造業は生産拠点をすべて海外に移そうとしており、国内産業は空洞化し、日本国民がつちかってきた科学技術の継承が断ち切られている。大量の労働者が街頭に放り出され、高学歴者が職につくことができず、銀行は容赦なく中小企業の首を絞め、農漁業が村ごとつぶされるなかで、若者が子どもを生むこともできず、10年間で30万人以上が自殺に追い込まれている。
政府や財界に身を売るインチキな御用学問がはびこり、将来を展望して真理を求める学問研究の破壊が国策として強行されるようになった。子どもたちを社会と生産から切り離して自己中心を煽り、勉強の楽しみを奪って愚民化し、英語を押しつけてアメリカの戦争の肉弾にする教育の改革が進んだ。そのうえ、職のない若者を自衛隊に勧誘する仕組みが築かれている。
こうした亡国の構図は、アメリカの原爆投下と核兵器を根幹にした侵略支配に起因するものである。
沖縄、徳之島、岩国をはじめ日本全土で、米軍基地の撤去を求める雄叫びがとどろくなかで、アメリカに原爆投下の謝罪と核兵器の廃絶、核基地の撤去を求め、日本とアジアを核戦争の戦場にさせるなという世論が、日本の独立と平和、繁栄を求める憤激と合わさって高まり発展している。広島、長崎の被爆地を先頭に全国各地で、被爆者・戦争体験者が覆い隠されてきた真実をほとばしるように語り、これを青年学生をはじめ若い世代が新鮮な怒りを共有して受けとめ、第二次世界大戦の真実と現在の状況を結びつけた論議を発展させ、行動に移している。
このうねりを、かつて国際的な権威を持って発展した日本の原水爆禁止運動の伝統につなげ、国民的な規模の共同斗争を巻き起こすことが求められている。
50年斗争の伝統継承 米国の犯罪暴き
1950年、占領下の広島で初めて原子雲の下の惨状を写真で公然と明らかにし、アメリカの原爆投下の目的をあばいて人類の名において許すことのできない犯罪として糾弾するたたかいの火ぶたが切られた。このたたかいはアメリカ占領軍が報道管制を敷いて原爆の被害を明らかにすることを禁じていた枠をうち破って、広範な広島市民の魂を組織して8・6平和大会を勝利させ、全国的に勢いよく発展した。
この運動の中心に立ったのは、中国地方の労働者であり、原爆反対、戦争反対を第一級の課題に掲げ、全人民の根本的な利益を代表して勤労諸階層、青年学生、婦人、教師、文化・知識人、宗教者らの統一戦線を形成して壮大な運動を発展させていった。
このたたかいは朝鮮戦争でアメリカに原爆を使用させない力となり、五年後には世界大会を広島で持つまでに発展し、原水禁運動の出発点となった。
現在、原水禁、原水協、被団協など「平和勢力」と見なされてきた潮流は、おしなべてオバマの口先だけの「核のない世界」を持ち上げ、国連まで押しかけてアメリカの核戦略への幻想を煽るまでになっている。「日共」の志位委員長はその先頭に立って、オバマの旗振り人となり、核戦争の元凶を賛美する一方で、北朝鮮やイランへの制裁に加担するなど危険な排外主義を露骨にしている。
このような親米潮流が、平和と独立を求めて勢いよく発展する大衆的平和運動から見放されてしまったのは当然である。それは敗戦時、アメリカ占領軍を「解放軍」と見なし、原爆投下に感謝する側から、占領下での広島のたたかいをその内部から破壊する役割を担った流れがたどりついた結果である。
社会の主人公は、協同して生産を担う労働者である。あぶく銭を稼ぐ金融資本とその配下の財界と売国政府は、まったく社会の統治能力を失い、腐敗の極みにある。労働者が企業をこえ、地域をこえ、全産業的、全国的に団結するならば、最大の政治的力量を発揮する。労働者を中心にして諸階層が団結した統一戦線を発展させること、そのような原水禁運動の力を強め、広島・長崎の本当の声を全国、世界に伝えることによって全世界の平和愛好勢力と団結し、アメリカの原水爆使用の手足を縛り、核兵器廃絶に向けた共同の運動を壮大な展望をもって発展させることができる。
広島、長崎、沖縄、岩国をはじめ全国の平和勢力が私心なくこのような運動の発展に全力を注ぎ、広島「原爆と戦争展」や平和公園での街頭展示とともに8・6広島集会(午後1時、広島県民文化センター)に大合流し、広島から力強いアピールを全国、世界に発信することが期待される。
★広島、長崎の新鮮な怒りと戦争の真実を若い世代に、全国、世界に伝えよう
★アメリカは原爆投下を謝罪せよ
★原水爆の製造、貯蔵、使用の禁止
★アメリカは核を持って帰れ、日本とアジアを核戦争の戦場にするな
★日本を米国本土防衛の盾に、核攻撃の標的にするな
★自衛隊をアメリカの下請け軍隊にするな
★中国、朝鮮、アジア近隣諸国と敵対でなく友好を
★峠三吉の時期の私心のない運動の原点に返り、平和勢力は大結集し、力ある原水禁、核戦争阻止の運動を再建しよう