広島市の県民文化センターで開催されている第14回広島「原爆と戦争展」、青年学生が広島平和公園でおこなっている街頭「原爆と戦争展」には、被爆70年の原爆記念日をめがけ世界各国から訪れている外国人が熱心に参観し、パネルに衝撃的な共感をあらわしている。長時間かけて英訳文を読み、第2次大戦や原爆投下について「原爆の被害について初めて知った」「これまで西側(戦勝国)の歴史観しか知らなかったが広島の声が真実だ」「世界で今も同じ戦争が起きている。戦争勢力を食い止める原水爆禁止運動が必要なときだ」と感想を語っている。原爆投下者アメリカと被爆国である日本の間で進む戦時体制づくりへの関心も強く、「広島の声が聞きたい」「安倍を支持しているのはオバマだけではないか」「日本国民の戦争反対運動を心から支持する」と連帯の思いをあらわしている。
米国の原爆正当化への批判も
原爆と戦争展には、フランス、インド、エルサルバドル(中米)、アメリカ、カナダ、ドイツ、イギリス、ベルギー、イタリア、オランダ、チェコ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、シンガポール、マレーシア、中国、台湾、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、ウガンダなど、アンケートを記した人だけでも25カ国もの人々が長い行列をつくって参観。山口県で開催されている世界ジャンボリーに参加したボーイスカウトの集団、学生、教員、ジャーナリストなど、1時間近くかけて見る人や仲間と論議をはじめる人、涙を流しながら共感をあらわすなどそれぞれの国情を反映しながらさまざまな反応を示し、通訳スタッフや大学生らに感想を語った。
シンガポールから訪れた23歳の女子学生は、「母国では日本が戦時中に受けた原爆の被害などはほとんど教わらず、数枚の写真を教科書で見たことがあるだけだった。人人が苦しむなまなましい写真を見たのは初めて。日本人が経験したことが体験者の詩や証言で伝わった。第2次大戦の様子のなかで、原爆被害のパネルには言葉を失った。このような活動を支持したい。世界中で戦争をなくすべきであり、今こそ平和に向けてとりくむべきだ」とのべた。
涙を流して原爆展パネルを見ていたウガンダ人の45歳の女性教師は、「私の母国でも今同じことが起きている。私の家族も戦争で殺された」と涙を拭いながら語った。アフリカ東部のウガンダでは欧米諸国の介入で内戦が絶えない混沌とした状況が長年にわたって続いており、そこに武器商人が暗躍して地雷、白燐弾などの化学兵器を売り込み、内部の紛争を煽ることで武器市場にしていることに触れ、「資本主義には愛がない。人間がこんな殺され方をしていいはずがない」と痛切な思いをのべていった。
69歳のオーストラリア人男性は、ベトナム戦争時にオーストラリア軍が米軍の支援部隊となったため19歳で2年間戦地に赴いたことを明かし、「私たち兵士にはどんな戦争かは事前にはまったく教えられず、通信兵でもいつ殺されるかわからないので常に銃を携行した。今また日本が(アメリカとの集団的自衛権で)戦争をするようになれば、君たちのような若者が戦地にかり出されるようになるのは目に見えている。世界の科学者がつくった非核時計は3分で世界が滅亡するというが、広島に来て10秒で消えてしまうと確信する。私は原爆投下の1945年生まれなのでヒロシマには強い思い入れがある。世界の核保有国は9カ国だが、100カ国以上が核兵器に反対している。世界はヒロシマの側だ」とのべ、被爆市民の活動に強い共感を示していった。
平和活動家のアメリカ人女性教師(58歳)は「日本人の半数以上が安倍政府に反対しているではないか。安倍がやろうとしていることは、すべてアメリカが後押ししていることだ。アメリカでは国家予算の1割にのぼる6000億㌦が軍事に使われ、民政費は2000億㌦。国民に貧困を押しつけて多額の資金を戦争につぎ込んでいる。日本がその道をたどろうとしている」と指摘した。
「アメリカは核を持って帰れ!」とする広島アピールの英文チラシを受けとり、「この内容に全面的に賛成だ。本国でも伝えたいのでコピーがほしい。日本では安倍を嫌っている。好きな人間がいるとすれば、オバマだけではないか。70年間日本が積み上げてきた不戦の立場が、安倍政府によって覆されてはいけない。アメリカ人の大多数も戦争には反対している。とくに最近のイラク戦争から帰還した兵士が精神病になったり、社会復帰ができないほど悪化していることが社会問題として認知されるようになってきた。だが、広島で起きたことはまだまだ知らされていない。広島に来られたことは私にとって非常に有意義だ」とのべて学生スタッフに握手を求め、パネル冊子と英訳冊子を求めた。
「広島の被爆者の意見が聞きたい」と訪れたカナダの国営放送に所属する女性ジャーナリストは、会場で体験を語る婦人被爆者に「安倍政府が進める戦争法案、戦争策動についてどのように思っているのか」と質問。マイクを向けられた被爆者は、「もちろん反対だ。70年間平和を守ったのは憲法があったからであり、それを崩そうとしている。私たちは反対し、平和を守るために体験を伝え続ける」とのべると、「非常に共感する。今こそ広島、長崎の声が重要だ。この声をカナダ全土に放送したい」とのべた。また、原爆と戦争展パネルを参観して「写真と説明が心に響いてきた。非常に教育的な内容であり、この運動は平和にとって不可欠だ。活動に感謝したい」と感想を記し、英語版の広島被爆体験集を求めた。
フランスの平和活動の一環として広島、長崎の慰霊式典に参加するために訪れたフランス人の一家も、長い時間をかけて真剣な表情で参観した。「非常に緻密な展示であり、興味深い。客観的であり、非常に誠実な内容に感動している。日本の戦争がこれほど悲惨なものだとは思わなかった。日本軍には武器も食料もなく、竹槍や陶器製の爆弾で対抗しているのに、すべてを焼き尽くす原爆を落とすなど常軌を逸している。フランスでも核兵器廃絶に対する関心は高い。これは世界に訴えるべき体験だ」と共感をあらわした。
以下、外国人から寄せられたアンケートの一部を紹介する。
▼この展示はとても説得力があり、感銘を受けた。私はイタリア人だが、こんなに恐ろしい、ひどい話を伏せ「偽物のストーリー」を学校で教えられてきた。アメリカが原爆を落としたことは正しいことだったと。原爆についての真実を教えてくれてありがとう。本当に感謝したい。すべての国で原子力エネルギーを廃止すべきだ。NO原爆、NO爆弾、NO原子力エネルギーだ。だれも原子力エネルギーを管理することはできない!(イタリア、32歳男性、工業化学者)
▼この活動をしている人々とこの展示に感動した。これはすべての問題を含んだ長い歴史を提示している。この最も重要な問題について人々を教育する活動をしていることに敬意を表する。私はアメリカで核兵器に反対する運動のリーダーをしている。1957年に創設されたニュージャージーの平和行動という組織だ。その主な目的は核軍拡競争をやめさせること、核兵器の全面的な廃止を求めることだ。この原水爆禁止運動には100%同意する。(アメリカ、58歳女性、教師)
▼これらの展示はアメリカによる最悪な原子爆弾に立ち向かう勇敢な兵士たちの記憶を思い出させてくれた。すばらしい展示だ。この展示は、戦時中の生の出来事を描くために本当に努力されている。世界中の若者がこの展示から学ぶものがあるだろう。原爆は軍事国家において使われるべきではない。彼らは平和と調和とともに生きるべきだ。一つになる心が人々の心の中にあるべきだ。(インド、57歳男性、教頭)
▼日本の人人の視点で、とても感情に訴えかけられる内容だった。あらゆる国籍、階級の人々にとってわかりやすく、多くの人々、とくにアメリカ人たちが知らない観点から書かれていた。それぞれの国ごとに戦争について偏った方法で教育がなされているので、一般の人人のための考え方を展示するのは大事なことだ。戦争というものは兵士たちだけに影響を与えたものでなく、何百万もの市民も殺したのだ。このような兵器は決して使用される、あるいはつくられるべきではなかった。過去は変えられないけれど、これらの爆弾はもう二度と使用されるべきではない。(アメリカ、25歳男性、画家)
▼展示は、原爆の前、落とされた当時、そしてその後についてのありのままを思い出させるものだった。それは当時の新聞に載っていた生の歴史のようだった。原水爆などのような爆弾の必要性や使用に対する正当性は何もない。世界中の国々はこれらの兵器を開発するのをやめるべきだ。そうすれば世界の国々は平和や調和をつくり出せるはずである。(イングランド、51歳男性、教頭)
▼衝撃的な内容に混乱を覚えるほど、このようなことが起こったことは信じがたかった。このようなことが無実の人々の身に起こるべきではなかった。もう二度とこのようなことが起こらないことを願う。戦争の悲惨さは、もっと伝えていく必要がある。原水爆反対運動は、とてもよいことだ。私たちは世界平和に向けて戦わなければならない。(オーストラリア、61歳女性)
▼この展示は現在、過去とも日本やアジア諸国に帝国主義化を進めているアメリカに対してメッセージを伝えるのにとても効果的である。言葉ではいいあらわせない。トラウマになりそうなくらいだ。核戦争の被害者はもう二度と出すべきではないし、政府は核被害にあっている人々を守ってあげなければいけない。NO核、NO武器、NOミサイル防衛、NO MORE戦争。(24歳女性、学生)
▼戦争で何が起こったのか、日本で原爆が投下されどうだったのか人々にわかってもらうことはとても大切なことだと思う。二度と同じことが起きないようにするためにも。たくさんの人にこの事実を知ってもらわなければならない。展示されている写真は見るに堪えないが、目を背けず見ることが大切。この運動はとても良いことだと思う。(女性)
▼展示されている写真は原爆がどれだけ人々の生活を壊したのかを教えてくれている。戦争を知らない世代の人人にもこの写真を見せていくことが重要だと思う。原爆廃絶のために活動するのはとても大切なこと。また、福島のような原発廃絶を訴えることも大切だと思う。(17歳女性)
▼とても悲しい。でも真実の展示だった。(原水禁運動は)すばらしいことであり、その他の国国でもこのような運動は必要だ。(スペイン、31歳女性)
▼情報量が多く、そして理解しやすくとても興味深い。貴重な写真と内容もすばらしい。第1次世界大戦から、原子爆弾投下時とその結果まで、すべての時間の経過を知ることができて良かった。私もこの運動に賛同する!(ノルウェー、19歳女性)
▼私がもっとも感動したのは、ここに記された詩だ。彼らがどんな気持ちだったのかを表現していた。私は100%どんな爆弾を使うことにも反対だ。こんなひどい被害を出すことには断固反対する。(スイス、17歳女性)
▼とても興味深かった。展示によってアメリカ(西洋諸国)の情報と比較しながら、新しい見方を得ることができた。私たちはこの種の兵器に対してたたかっていかなければならないと思う。私たちは一つになることで世界に平和をもたらすことができる。(スウェーデン、16歳女性)
▼とても大切な情報だ。真実、人間による戦争の結果を明確に伝えている。世界が多くの人々にとって安心して住めるところになるように挑戦するべきだ。本当の魂を私たちは生きなければならない。このように人間が殺されるのはひどいことだ。こんなひどいことはやめなければいけない。(東アフリカ・ウガンダ、45歳女性教師)
▼私が知らない戦争について、多くのことを学んだ。(戦勝国側からではない)違った側面から戦争を見ることはとても興味深く、このような展示は非常に印象深いものだ。とても気高い運動で、全体を支持する。(オランダ、21歳男子学生)
▼とても読むのに耐えがたいものだったが、これが真実だ。非常に良いドキュメンタリーで完成されたものだ。実際に起こったことの周囲もよく描かれている。このような兵器(原子爆弾)のさらなる使用は、防がなければならない。この運動を支持する。(フランス、49歳女性)
▼とても興味深い展示だった。核兵器投下の前後がよくわかった。こういう展示は、平和を維持するために有効で、人間が何であるかを再考させる。(イタリア、21歳男子学生)
▼広島に来るまでは、核兵器と戦争についてほとんど知らなかった。展示はとても良くわかった。写真は残酷だったが、誰かが警鐘を鳴らすために見せなければならないものだ。この運動は筋が通っており、重要だ。(ベルギー、34歳女性教師)
▼とても良い情報を展示されており、とても詳しい。そして残酷だ。とても良い運動であり、多くの人の支援を受けるべきだ。(スロベニア、29歳男性)
▼力強く深く考えさせられるものだった。多くの関係者の方方の説明を見ることで、個人的な見方を得ることができる。私はこの戦争についてよく知らないが、学びたいと思う。この展示を見ることで、今日は多くのことを学ぶことができた。(オーストラリア、22歳女子学生)
▼とても有益な展示だった。原爆や戦争のことについてより学ぶことができた。内容はとても興味深く、読むべき内容を展示されていた。展示の仕方が気に入った。私はまったく反原水爆の動きに賛成だ。世界から原水爆はなくなるべきだ。世界が平和な場所になることをただ願う。(イギリス、29歳女性)
▼全体的に中立的な立場に立っていた。私は、原爆に反対する動きに賛成する。(アイスランド、28歳男性)