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「蚊帳の外」の意味

 蚊帳の起源をたどると古代エジプトでも使用されていたそうで、デング熱やマラリアと格闘する亜熱帯地方の国国をはじめ、全世界で利用されてきた長い歴史があるのだという。日本国内には中国を通じて伝わり、江戸時代に普及したようだ。就寝時、真っ暗な静寂のなかをどこともなくプーンと飛び回り、耳元に接近して羽音を響かせていく蚊について、古代エジプト人のみならず世界の誰もが不快に感じ、蚊帳のおかげで安眠を得てきたのだ。今や住宅には網戸が完備され、就寝時は蚊だけでなく泥棒対策も込みで窓を閉め、クーラーをつけて寝ている人も多い。そして生活の周囲には、キンチョーの蚊取り線香、フマキラーのベープリキッド、アース製薬のアースノーマット等々、夏になるとなくてはならないアイテムも揃っている。屋外作業やキャンプで対策を施したい時には、アース製薬のヤブ蚊ジェットプレミアムを辺りにスプレー噴射すれば、以後数時間は見事なまでに蚊が寄りつかないから驚かされる。そうやって人類共通の厄介者である蚊と向き合って、生活必需品としての有用性に応えて経営を成り立たせている企業まであるのだ。蚊のおかげである。

 

 さて、今年も蚊が飛び回る季節がやってきた。そしてふと視線を世界に向けてみると、この国の首相が見事なまでの「蚊帳の外」外交をくり広げているではないか。朝鮮半島を巡って各国が対話による非核化を唱えているなかにあって、「圧力だー!」「制裁だー!」の一本調子をやり続け、なんなら今にもミサイルが飛んでくるような勢いでJアラート騒ぎまでやっていたのに、朝鮮半島は戦争ではなく対話によって平和を実現する道を歩み始めたのである。そして、拳を振り上げていきり立っていた者が米朝会談や東アジア情勢の変化からとり残され、なんだか独りぼっちで佇んでいる。既に外交音痴とかのレベルをこえて、見ていて恥ずかしいものすらある。今後、改革開放のもとでくり広げられるであろう各国資本による開発利権の争奪戦からも排除されそうな気配で、商社や独占企業も「蚊帳の外」を飛び回る運命を共有しそうなのである。

 

 「蚊帳の外」に排除されるのは蚊や蠅の類いであって、「蚊帳の内」に入ってきてもらいたくない害虫である。明日はいよいよ歴史的な一歩を踏み出すであろう米朝会談が実現する。70年の時を経てダイナミックに動き始めた東アジアのなかで、蚊か蠅みたく厄介者扱いされているのでは日本社会にとっても害悪でしかない。アメリカに盲従した蚊か蠅ではなく、東アジアの国国と蚊帳の内で友好平和を築いていける人間としての関係をつくることが切望されている。武蔵坊五郎

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