安倍政府が貧困対策の一環として打ち出していた「子どもの未来応援基金」について、2億円の国費を費やして広報宣伝した結果、集まったのが僅か1949万円だったことが明らかになった。貧困対策を予算ではなく募金で賄おうとすること、「誰か恵んでやれ」方式で丸投げすること自体に問題があるが、発起人にあれほど政財界のトップたちが名前を連ねていながら、誰一人として大口寄付していなかったのにも驚かされた。旭化成取締役会長、TBS代表取締役会長、日本生命保険代表取締役会長、第一生命保険代表取締役会長、NHK会長、日本財団会長、読売新聞グループ本社代表取締役社長、新日鐵住金相談役名誉会長など、肩書きが長いだけで、経団連の現役幹部たちや日本商工会議所会頭たちが勢揃いしていながら名前だけ売って金は出さない人間ばかりだった。
経団連といえば、傘下の企業に呼びかけて自民党への企業献金は20億円以上納めている。法人税減税をはじめ大企業天国をつくるために捨て金で20億円をポンと出す者が、貧乏な子どもたちには微々たるカネすら出し惜しむ。この性根を見せつけた。小汚い金権政治家どもを培養するよりも、子どもの未来のために出すカネの方が社会的に見てはるかに有益だろうに、いまや金持ちに足長おじさんとかの慈善的な価値観すらないのだろう。
「子どもの貧困」問題はすなわち「親たちの貧困」問題である。働けど苦しい勤労家庭の収入を上向かせることなしに、その産物である貧しい子どもを相手にした慈善事業をいくらやっても真の解決にはならない。親たちの貧困はまさにこのケチな男たちの集団が搾取し過ぎていることに問題の根源がある。内部留保を300兆円も溜め込んで決して社会のために還元しないし、非正規雇用を蔓延させ、さらに労賃を引き下げるために外国人労働者を呼び込んで競争させ、「1億総活躍」ならぬ「1億総貧乏」社会にしようとしているからにほかならない。カネを持っている者が握りしめて離さないから「カネは天下の回りもの」にならないのだ。 武蔵坊五郎