安倍政府が立ち上げた「国際金融経済分析会合」にノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授が招かれ、来年四月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言した。アベノミクスの立役者たちが勢揃いし、経済政策ブレーンの浜田宏一や本田悦朗内閣官房参与、黒田日銀総裁、菅官房長官らが列席したという。風向きがおかしくなっているもとで、新自由主義政策を進めている者たちがあえてケインジアン(ケインズ学派)を呼び、世界的権威のお墨付きでもって「増税見送り」を判断しようとしている。
増税延期を解散総選挙の票稼ぎに利用することへの批判もあるだろう。しかし、それ以上に違和感を与えたのは、国民世論や国会審議を踏まえてというのならまだしも、なぜ為政者としての判断を外国人の権威に求めるのか? という点だ。安保法制もそうだったが、国民世論には聞く耳を持たない者が、外国人学者には聞く耳を傾けて「スティグリッツがいったから…」というのでは、あまりにもあんまりだろう。みずからの国の実情に即して何を為すべきか決定するのが統治側の仕事のはずだ。それをアメリカ在住の人間に委ねてどうするのか、その目はいったい何を見て、どこに向いているのか?
である。
わからないことを認めて謙虚に学ぶ 。これは学問の世界でも社会生活を送る上でも正しい姿勢だと思う。しかし、今「わからないから教えてください」をやっているのは子どもや学生ではない。異次元の金融緩和をはじめ、散散、世界経済とかかわって為替政策や金融政策を動かしてきた面面だ。日銀は250兆円もの国債を抱え込み、GPIF(年金基金)も思いっきり金融市場に注いでおいて、いまさら何をいっているのかと思う。
誰の声を聞き、どこを見て政治をしているのかーー。目と耳の使い方が根本的に誤っていることをあらわしている。 武蔵坊五郎