タックスヘイブン(租税回避地)の一端を暴露した「パナマ文書」が世界を震撼させ、アイスランドの首相が辞任したり、イギリスのキャメロン首相に「恥を知れ!」「税金払え!」と訴えるデモが起きたり、各国で怒りの世論に火がついている。富裕層や政治家は脱税で有り余る資産を国外に移し、自国民には増税や緊縮財政を強いているのだから無理もない。しかし、この「パナマ文書」を鵜呑みにできず引っかかっていたのは、なぜ米国の政治家や金融資本、世界三大投資家等々の面子が一切出てこないのか? だった。ロシアや中国の首脳周辺がやり玉に上がり、それこそ攻撃の矛先が誰に向いているのかは歴然としたものだったが、一方でアメリカだけは何かに防御されているような印象を放っていた。
その後「なるほど」と思わせる情報を発したのが機密文書公開サイト「ウィキリークス」だった。今回の「パナマ文書」を公表したICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)の情報の出元は、世界三大投資家の一人として知られるジョージ・ソロス及びフォード財団や米機関によるものだと断定したのだった。英語圏やスペイン語圏では、ICIJのスポンサーに名前を連ねているのが「オープンソサエティ財団」つまりジョージ・ソロスであり、フォード財団、ロックフェラー基金やカーネギー基金であることが取り沙汰された。各国首脳を揺さぶる情報リークは、世界的な金融支配・覇権を巡る衝突の反映であることを伺わせた。IMF体制に反旗をひるがえす、AIIBの動きや、中東における米国離れ、中国と接近するイギリス等々、世界的に米国の一極支配が崩れていることを思わせる動きが近年は著しい。そのなかで、政権転覆を専門にしてきたCIAなどの謀略機関があえて火に油を注いでいるというなら、世界を揺るがす「パナマ文書」の意味も別角度から見えてくるものがある。
ソロスといえば、東欧政変やソ連崩壊、アジア金融危機など、その度に背後で暗躍していたことが暴露されてきた。最近でもウクライナの政変に関与していたことが知られている。90歳にもなろうかというお爺さんがいまだに世界を股にかけて大暴れし、金融資本主義の権化として謀略趣味に昂じている姿には驚かされる。それで思うのは、こうなったら対ソロス側も応戦して積極的に暴露合戦を繰り広げ、米国も含めた世界中の富裕層の隠し財産を明るみにしたらどうかという事だ。その事実に基づいて小汚い者たちが「税金払え!」「恥を知れ!」と石を投げつけられても文句などいえない。
吉田充春