携帯電話からけたたましく緊急地震アラームが鳴った次の瞬間、ジワジワと揺れが始まり、それは次第にひどくなっていった。いざ地震が始まるとその場にジッと固まって身構えてしまい、身体が動かない。いったいこの揺れはどこまで拡大するのか、震源地はどこなのか、津波はどうなるのかーー。揺れが落ち着いてから大急ぎでテレビをつけ、飛び込んできたNHKの画面とアナウンスに一瞬、何が何だかわからない感覚に陥った。女性が延々と「KUMAMOTO?」みたいな英語をしゃべって、肝心の情報が何も頭に入ってこないのだ。このテレビに英語放送設定などあったか? 誰かテレビの設定をいじったのか? とリモコンを見つめるけれど分からない…。チャンネルは本当にNHKか? と確認したらNHKだ。そうこうしていると、ようやく日本語でアナウンスが始まり、震源地は熊本地方で最大震度は東日本大震災に匹敵する七であったこと、わが街の震度は4だったことがわかった。
人の生命が関わった重大な局面で、NHKは本当にいい加減にしろよ! と思った人は少なくないはずだ。その後、「落ち着いて行動してください」と何度も連呼しているのを聞きながら、混乱させているのはむしろNHKだろうにと腹立たしさを感じたのだった。1億2000万人の日本人が暮らしている国の国営放送が、どうして最も重要な第1報を英語で伝えようとするのか、いったい誰に向かって放送しているのかである。
大企業で公用語を英語にするところがあるとか、中学校や高校の英語授業で日本語を話してはならないとか、英語化が浸透しているのは耳にしていた。しかし、こうした重大局面でやられるとは思ってもみなかった。
熊本県は大変な事態に見舞われ、被害が心配されている。まさに何万人という人人の暮らしが揺さぶられ、当事者の不安はつきないはずだ。だからこそ怒りを覚えるのがこの英語放送の脳天気さで、人人の生命や安全を何ら心配していない報道姿勢だけを浮き彫りにした。
アメリカ人に伝えたいのなら、本社建て替えを計画している籾井NHKは丸ごと米国移転してしまえとすら思う。
吉田充春