財務省による公文書の改ざん問題で連日のように国会が紛糾している。スクープで問題を提起した後、『朝日新聞』は原本の写しを既に入手しているのか否かを煙に巻き、情報を小出しにしながら政府を揺さぶっていた。狼狽していたのが財務省や首相官邸で、国会議員たちに見せていた文書とは別の公文書(原本)など「ない」と断言することもできず、「調査する」といって逃げ回っていた。すると今度は8日夕刊で、『毎日新聞』が近畿財務局に情報公開請求をかけて出てきた別の文書のなかにも「本件の特殊性」とか「学園に価格提示をおこなう」と記載されていた事実を報道した。
「哀れ」と安倍晋三に小馬鹿にされていた『朝日』の逆襲と、『毎日』の援護射撃を見ていて、潮目は変わり、今度は安倍晋三そのものがトカゲの尻尾として切り捨てられる番がきたことを痛感した。このまま放置したのでは統治への信頼が損なわれ、支配の側から見ても話にならないからだ。9日には近畿財務局の国有地担当者の自殺が報じられ、佐川辞任が決まるなど、めまぐるしく局面は動き始めている。
公文書の改ざんは本来あってはならないことだが、改ざんの事実認定の次に重要になってくるのは、「本件の特殊性」という言葉の「特殊性」とは何を指しているのか、誰が何のために改ざんを指示し、誰が改ざんしたのか、何を守るためにそのような不法行為に手を染めたのかという点だ。動機と行動を一つ一つ順を追って解明することが必要で、改ざんを認めたら終わりという代物ではない。そして、改ざんが事実であると証明されたときには、関わった官僚たちも一人一人厳重に処分しなければ、行政の面目は保てない。ろくな国会議員がいないとはいえ、立法府を愚弄する行為が平然と横行する国で良いのか、議会制民主主義とか法治国家の枠組みは飾り物に過ぎないのか、安倍晋三やその界隈がぶっ壊してきたものをどうするのかが問われているのである。
憲政史上最大の汚点という重大性に鑑みて、麻生太郎や安倍晋三の首が飛ぶ可能性も十分にあり得る。ただ、彼らが辞職や辞任をしたからといってすべてを水に流せる問題でもない。同じように森友&加計をはじめとした疑惑の数数について、真相はどうだったのか徹底的に解明しなければならないし、国有財産をタダ同然でお友だちに分け与えていたのが事実ならば、韓国大統領みたく懲役刑を求刑されなければ国民は納得しない。さらに、なぜこのような低俗なる私物化政治が大手を振ってまかり通るようになったのか、力を与えたものの存在を暴き出し、腐敗堕落した政治構造にもメスを入れることが必要だ。そのために、末端の官僚や国家公務員は死を選択するのではなく、勇気を持って真相を語るべきだ。安倍晋三なり、その界隈のために死ななければならない理由など何もないのだから。
気がかりなのは、仮に総辞職なり退陣に追い込まれたとして、日銀が世界でもまれなる量的緩和を実施し、いまや出口戦略どころではなくなっているアベコベノミクスであるとか、「これ、どうすんの?」と思うような爆弾を抱えていることだ。逃げ得もまた許されない局面といえる。戦後処理は大変で、一つ一つに落とし前をつけさせなければならない。 吉田充春