カネに汚れた政治家たちの醜聞に事欠かないのをもっけの幸いにして、舛添要一が吊し上げられているドサクサに紛れて甘利明が復活した。睡眠障害を理由にして休眠していた男が、「人の噂も75日」を見事に実践し、追及の場となるはずだった国会が終わった頃合いを見計らってコッソリ起き上がってきた。
この2人ともが弁明会見で「厳しい第三者の検証を受ける」とのべ、元検察出身の弁護士すなわちヤメ検に「検証」を依頼したのは、それが汚職政治家たちの新種の防衛手段であることを伺わせた。水戸黄門の印籠の如く元検察の弁護士を出してきて、「公正公平に裁かれる自分」「法的には問題ない自分」を演出するのである。カネをもらって雇われた弁護士が、雇い主を「真っ黒だ!」というわけがなく、「第三者」といえる代物ではない。ところが、金銭授受を伴う利害関係者となって、逃げ切った場合の成功報酬すらあり得るのに、中立のような装いをして「第三者」に成り済ますのである。
舛添要一の記者会見は、このヤメ検の横柄さが際立っていた。いまどきは検察だから正義だとは誰も思っていないのに、上から目線でかんしゃくを起こして記者すら恫喝する。それで萎縮する記者たちのへっぴり腰も閉口だが、いつの間にか、質問され、攻められる側が攻める側に攻守交代し、力技で押し切っていった。「第三者」なら冷静に客観視しなければならないのに、本音を隠しきれず舛添要一を守るために声まで荒げて–。これでは第三者偽装もバレバレである。世間を欺き、何なら後輩の検察官や特捜部に睨みを効かせて汚職を煙に巻くなら、ヤメ検であれ何であれ、悪質な犯罪幇助の罪を問わなければならない。
そして古巣の東京地検特捜部は甘利明も不起訴処分にした。虎屋の羊羹とともに大臣室で自分のポケットにしまった50万円はどうなったのか、企業から1200万円の金銭を受け取り、都市再生機構(UR)の道路工事に口利きした疑惑はどうなったのか、50時間にも及ぶ録音テープの検証はどうなったのか何の追及もないまま、50万円に目がくらむ男が、今度は「検察は自分の擁護者だ」と確信し図に乗って復活する。
政治家の腐敗と同時に、権力の番人を務める検察の腐敗も問題にしなければ茶番はくり返される。犯罪は公平に裁かれないのだ。 吉田充春