今度は米空軍三沢基地(青森県三沢市)所属のF16戦闘機がエンジン火災を起こし、小川原湖に燃料タンクを放り捨てて問題になっている。まるで日本の国土はポイ捨てのゴミ箱かと思うような行動だ。そして、そのゴミ拾いは自衛隊が担い、日米地位協定に基づいて水質汚染の損失補償に至るまで日本政府が尻拭いするのだという。
南は沖縄から北は青森に至るまで、米軍機や自衛隊機の墜落や不時着、器物落下が頻繁にくり返され、北朝鮮のミサイルどころでない現実的脅威となっている。こうした事故が多発しているのは、単純に軍隊がたるんでいるから--というだけでは説明がつかない。沖縄をはじめとした基地の街ではこの間、朝鮮半島での軍事的緊張が高まるのと連動して訓練が激しさを増し、とくにパラシュート降下訓練や夜間訓練に力を入れていることが話題になってきた。湾岸戦争にせよアフガン・イラク戦争にせよ、戦争が近づくといつも米軍基地内がざわつき始め、日頃とは異なる表情を見せ始めたと思ったら、案の定攻撃に踏み出していくというのが基地の街に暮らす住民たちの経験則だ。従って、軍隊がなにかしらのウォーミングアップを開始し、その産物として平時には起こらなかった不時着その他が頻発していると見なすのが自然だ。器物落下や不時着という一断面だけに目が奪われがちだが、北から南に至るまで日本列島に存在する132カ所の米軍基地が、戦争前夜のような不気味な鼓動をしているのである。
朝鮮半島で南北が対話に乗り出しているとはいえ、決して戦争の危機が回避されたわけではない。拳を振り上げるアメリカと、その尻馬に乗って圧力を叫ぶ日本政府のスタンスは変わっていないし、戦争を渇望しているかのように南北対話を面白く思っていない本音は丸出しである。中国やロシア、さらに関係各国との力関係も作用するものの、内憂外患の真っ只中にあるトランプや安倍晋三が何をしでかすかなどわかったものではない。
いざ戦争になれば、日本列島が置かれている客観的状況からして、ヘリ墜落や部品落下どころでは済まない。出撃拠点は出撃するだけでなく、報復の対象になることを自覚しなければ話にならない。原発を54基も抱えながら拳を振り上げる愚かさといったらないが、そんな愚か者のおかげで犠牲になるのは一般の国民である。他民族を殺めることも言語道断だが、国民の生命や暮らしを守り、存立危機事態に至らせないために必要なことは、日本列島を出撃拠点にした朝鮮半島有事を回避させること以外にない。
吉田充春