バングラデシュの首都ダッカで日本人7人を含む外国人20人が犠牲となるテロが起こった。襲撃の最中に「私は日本人だ! 撃たないでくれ!」と何度も懇願する声が聞こえたという。親日的といわれる国で「日本人だ!」は免罪符のような力を持っていたのかも知れない。しかし、今回の事件は逆に「日本人」だからこそ狙われた可能性が大きいものだった。直後に「イスラム国」は「我々はイスラム国に対抗する同盟国の市民・日本人の殺害に成功した」と犯行声明を出した。同国では昨年も農業開発に従事していた日本人男性が射殺され、そのときも「十字軍の一員」である日本人を殺害したのだと「イスラム国」は表明していた。
これらの引き金になったのは昨年2月に起きたシリアでの日本人人質2人の殺害事件だった。中東を訪問した安倍晋三がイスラエル国旗を背景に「イスラム国とたたかう国に200億円支援する」と演説した直後に「日本の首相よ、おまえはイスラム国から8500㌔離れた場所から、進んで十字軍に参加すると約束した。おまえは自慢げに寄付すると話した。我々の子どもたちや女たちを殺すため— 」と「イスラム国」が反応し、2人を捕らえて日本政府を揺さぶった。「指一本触れさせない!」「テロリストには法の裁きを受けさせる!」等等、安倍晋三が応戦して火に油を注いだ末に邦人2人の生命が奪われた事件だった。イスラームキリストの矛盾に関係のない仏教徒が首を突っ込んで恨みを買い、あれ以来、「日本人」=「十字軍の一員」になってしまった。安倍晋三だけが恨みを買うならまだしも、「日本人」全体がテロの標的になってしまった。疫病神が世界を飛び回り、余計なことをするばっかりに国民に災いがもたらされる関係を暴露した。
バングラデシュは安倍政府になってから6000億円の円借款供与を約束し、国際協力機構(JICA)が政府開発援助(ODA)を本格化させていた。中国の5分の1ともいわれる低賃金労働に目を付けて、アパレルを中心とした日本企業が240社も進出し、丸紅や東電グループ、住友商事やゼネコンの清水建設なども関わって鉄道や電力などのインフラ整備にも乗り出していた。今回の事件に巻き込まれたのは、インフラ事業の事前調査に携わる技術コンサルタント会社の社員だった。同国は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)も融資案件の第一弾に選定するなど、日中が植民地的な争奪戦を繰り広げている最前線でもある。この海外覇権の争奪が激化するなかで、技術者であれ、NGOであれ、銃口が向けられる存在になっている。邦人に災いをもたらす疫病神は安倍晋三をそそのかしているこれらの大資本にほかならない。
武蔵坊五郎