いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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怠け者たちの目くら判

 まともな審議もないまま、与党の「強行採決」発言に反発する格好で野党が欠席し、「空転国会」を演出したうえでTPPの強行採決が迫っている。与党も野党も中身がわからず審議のしようがないものだから、相互に依存するようにサボタージュで時間を稼いできた。そして、審議時間の目安である40時間に到達したと安倍政府がいっている。経済、金融、労働、医療や福祉などの社会保障、農漁業生産、文化まで含めて日本社会の根幹を揺るがすほど重大な問題をはらんだ案件が、その審議内容ではなく浪費した時間を基準にして、きわめていい加減な状態で採決されようとしている。
 国会は国の最高の意志決定機関とされてきた。しかし既に国会すら超越した形でTPP批准に持っていこうとする力が働いている。本来なら、6000ページ以上もある協定文を精査し、国の未来に関わる問題として厳密に対応しなければならない役割が国会にはあるはずだ。ところが、条約を批准すべきか否か判断する材料すら持ちあわせず、今年四月の通常国会で出てきた資料も「のり弁」と揶揄された黒塗り文書だった。膨大な量の協定文は日本語には翻訳されておらず、これを分野ごとに分析するだけでも少少の労力ではない。衆参両院あわせて717人いる国会議員のなかで、6000ページを理解している者などおそらく一人もいないのが実態だろう。しかし、何も分からないのに賛成する頭数だけが揃っていて、たかだか40時間を目安に決めるというのである。内容を隠蔽したまま賛成だけせよというものについて、与野党ともに「国会を侮蔑している」と激怒する者がおらず、何百人もいる議員どもはコケにされている自覚すらない。これでは国会などあってないようなものだ。
 多国籍企業や金融資本が国家とか法律を超越して直接支配に及ぶ体制がTPPにほかならない。そのなかで、まだTPPは発効されてないにもかかわらず真っ先に主権を放棄しているのが国会で、許し難いのは内容すら理解していない怠け者たちが目くら判を押すことである。
                                           吉田充春

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