いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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再選挙の背景に見える事

 米空母艦載機の発着訓練の移転先として挙がっている馬毛島を抱える鹿児島県西之表市の市長選が1月29日に投開票を迎え、6人の候補者が誰一人として法定得票数(有効投票総数の4分の1)に達せず、再選挙となる珍事が起こった。報道はもっぱら「再選挙」の物珍しさだけを切りとっているが、もっと目を向けなければならない問題がある。
 選挙結果を上位から順に見てみると、八板俊輔(反対派)2428票、小倉伸一(反対派)2333票、浜上幸十(賛成派)2236票、榎元一巳(反対派)1940票、瀬下満義(反対派)675票、丸田健次(賛成派)560票で、反対派の総得票が7376票だったのに対して、賛成派は2796票だった。米艦載機訓練の移転が最大の争点だった選挙で、乱立さえしなければ反対が圧勝したことを数字はあらわしている。
 この選挙で不可解なのは、反対票が四分五裂して、あわよくば賛成候補の勝利すらありえたことだ。市議選かと思うほど元市議会議員が出馬して、票が割れることをわかったうえで乱立選挙をくり広げた。仮に賛成派が当選すれば「賛成の市長が選ばれた」といって米軍や日本政府は大喜びで事を動かし始めるだろうし、有権者の願いが歪められることもわかっていて、なぜ出馬したのか? という疑問がある。票割り候補は誰ですか? と聞いてみたくなるほど得票はきれいに分散し、賛成派の本命候補が勝てたかもしれない選挙構図になっているのである。
 訓練移転反対の民意を貫かせるためには、50日以内に実施される選挙において、まず乱立を解消し候補者統一をはかることが最善の道であることははっきりしている。それでも「オレが、オレが」をやった場合、反対派=我欲が堪えられない者たちという印象だけを有権者に植え付け、逆に冷ややかな眼差しを注がれ、世論から浮き上がってしまう可能性すらある。いずれにしても「オレが市長になりたい」という個人的願いが「反対」の民意を押しつぶす本末転倒は許されない。
 反対派のなかに「反対」の仮面をかぶった面の皮が厚い確信犯がいるのかもしれない。そして、それぞれの立候補者の支持基盤を把握した上で、反対票四分割の青写真を描いた選挙プロの存在すら疑われる。選挙では、誰の指令で誰がどう動いているのか、動かぬ証拠をつかむことはなかなか難しい。しかし、厄介な票割り候補をぶつけて、有権者の願いを圧殺しようとする力が加わっている以上、これをはね除けなければ反対派は勝てる選挙を落としてしまう。再選挙の行方に注目したい。                        武蔵坊五郎

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