日米首脳会談とその後のゴルフ三昧の日程を紹介するテレビのコメンテーターや司会者たちが「これは間違いなく厚遇です!」「安倍首相は特別扱いされている!」といって我が事のように嬉嬉としている。カモネギ代表が51兆円のインフラ投資を約束しに来るのだから米国が大喜びするのは当然だろうに、食べられる側のカモが何を思ったか、優しく客人扱いされ、一緒にゴルフをしてもらえるといって大喜びしている。グリム童話本編を想起させるようなゾッとする絵図である。
問題は、この厚遇の過程でガッチリと言質をとられて、日米FTAや為替・金融政策、辺野古をはじめとした米軍再編問題、安保法制に基づく自衛隊の世界展開など、みな煮え湯を飲まされて帰ってくる危険性である。「ディール外交」を掲げる相手がチヤホヤする意図について、むしろ警戒すべきだというのが通常の感覚だろう。安倍晋三夫妻がトランプの別荘に連れて行かれていったい何を約束させられるのかはわかったものではない。
「城の奥の厨房からはナイフを研ぐ音が聞こえてきました…」。グリム童話では招かれた客人が初めはもてなされて大喜びしていたが、城のなかで次第に違和感を感じ、最後には危険を察知して走って逃げ出す。そして、後ろから刃物を持って追いかけられ、「もう少しで食ってやったのに!」と叫ばれて終わる。子どもに読み聞かせたら泣き出すであろう怖い話でもって、甘いおもてなしには注意しろと教える。本当のグリム童話は身も蓋もないくらいえげつない。
渡米するカモネギは「あいつの方がおいしいよ!」といって日本列島を指さしたりしないだろうか…。 吉田充春