「♯国難」こと首相である安倍晋三の遊説日程がツイッター上で飛び交い、みんなで街頭カウンターによって迎え撃とうという行動がにわかに盛り上がりを見せている。「国難が来るよ」「国難、立川にくるらしい」「国難、新百合ヶ丘から逃亡」「ヤジがこわくて場所変更したのに、♯国難が日本の未来を切り開くとか言ってるよ」などと様子を報告しあっている。なかには演説している目の前で「♯お前が国難」と書いたプラカードを掲げている人の写真や、SPや警官がバリケードをはっている写真をアップする人もいる。ヤジの内容を伝えている書き込みもある。そうして、みんなで「♯国難」を追いかけたり、情報提供しあっている。
5日に演説が予定されていた新百合ヶ丘駅前(川崎市)では、地元の自民前職がホームページに告知していたことから、ツイッターで「ヤジりたい」「♯国難来るよ」という書き込みが相次ぎ、首相の遊説は急遽、四駅離れた駅に変更された。そして、自民党関係者であろう男性が「諸般の事情により、安倍総裁の演説は中止となりました」と記した紙を集まった人人に見せ、頭を下げて回った。その後も、首相の街頭演説の日程は公表されず、ものものしい警備体制のもとでゲリラ演説する手法に徹している。これは、大衆をことのほか恐れていることの証左でもある。
東京都議選で「帰れ」コールに沸いた秋葉原がトラウマになっているのだろう。あのとき「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」と叫んだものの、むしろ「こんな人たち」側の感情を逆なでしてしまい、ひるまずにカウンターを仕掛けてくるのに対して「あんな人たち」が逃げ回っている。そうして逃げ回れば逃げ回るほど、面白がって世間の注目度は増し、ますます追われる身になるのである。
数日前の京都では、民進党を解党した前原誠司が「裏切り者!」「恥ずかしないんか」「よう来れたな」「詐欺師!」等等のヤジを浴び、「我々、野党第1党が!」と言うと「もう、違うやろ」「希望は野党ちゃうぞ」と突っ込むヤジも飛んだという。「はよ、帰りよし」というプラカードを掲げる聴衆や、「小池にはまってさあたいへん♫」と歌う人もいたようだ。このような街頭カウンターが、いまや各地に広がっている。
有権者から時の首相が逃げ回る選挙など見たことがないが、いまや漫画のような追いかけっこが始まっている。この際、あっちでもこっちでも、政治家たちは叱られたらよいのではないだろうか。いつまでも黙って話を聞いているだけが聴衆ではないし、おとなしい国民性のうえに胡座をかいてはならないと思う。それで異論を唱える者と対話ができず、背中を向けて逃げていくようなことでは政治家とはいえない。モリ&カケともども、逃げ癖の酷さが際立つだけである。
解散総選挙は鬱積した国民的感情が決壊するかのように、これまでと違った様相を呈している。そして、安保法、共謀罪、特定秘密法などを強行し、官僚たちを忖度させてきた国会のなかの「一強」が、世間の怒りに恐れおののきながらへっぴり腰で出てきた。 吉田充春