安倍政府が解散総選挙に打って出るという。なぜ今? 大義は何? 等等の疑問の声も上がっているが、あまり難しく定義云々を考える必要性を感じない。臨時国会で延々と追及されるであろうモリ&カケを冒頭解散によって吹き飛ばし、さらに衆議院の3分の2以上を保った状態のまま改憲を手がけ、最後に東京五輪で安倍マリオをやって引退の花道を飾るためには、内閣支持率が回復した今しかないと安倍晋三が見なしたからだろう。モリ&カケで弱り切って内閣改造をやったが振るわず、ミサイル騒動で「国民の生命を守る安倍晋三」をプロモーションした今なら勝てると踏んでいるのである。野党もボロボロの今ならイケると思っているからである。なにがしかの政治的判断について国民の信を問うというような高尚な代物ではなく、「今が(ボクにとっての)チャンス」と思ったからにほかならない。
この言動からわかったことがある。それは北朝鮮のミサイル発射であれほどJアラートを鳴らしたり、PAC3を配備するなどして脅威を煽ってきた政府が、実は差し迫った脅威ではないと判断していることだ。通常、ミサイルがいつ落ちてくるかわからないと危機意識を抱いている為政者が、「よし、では選挙をやろう!」と思いつくものだろうか。空白を避けるべく「かくかくしかじかで選挙どころではない」「国家が非常事態の折になにを言っておるのだ!」と主張したがるものだろう。従って悠長に選挙ができるのは、余程の確信があるからだと見なさなければ説明がつかない。
さらに浮き彫りになることは、実は北のミサイルよりもモリ&カケを恐れているという点だ。今もっとも触れられたくない事、消し去ってしまいたい最大の脅威は北のミサイルよりもモリ&カケで、国際的にミサイル騒動が落ち着いてきた今、再び無様な国会追及に土俵を戻されたくないという心理に陥っても無理はない。そのような話題そらしのための総選挙に、大義名分もへったくれもないのである。
この解散総選挙をどう迎え撃つかが問われている。「一強」は自民党が強いわけではなく、野党のボロさによって担保されてきたともいえる。この状況を打開するために、成り代わって自民党を叩き潰すような、有権者の期待を背負った斬新な政党が見当たらないのも現実だ。そのもとで自民がほくそ笑むずるい構造をどうぶった切るか、有権者を悩ませている。 吉田充春