中国全土に広がった反日デモで石やペットボトルが投げられて日本の公館や企業のガラスが割られ、それを中国の警官隊が規制せずに見ていただけだといって、小泉政府と商業マスコミが騒いできた。アメリカ政府に言いつけられて、中国との戦争準備を広言し、原水爆を投げつける手伝いをしている小泉政府が、石を投げられたので謝罪せよというのでは、相手側が腹を立てるのは当たり前である。
この反日デモは、南京虐殺の記述をなくした歴史教科書、小泉の靖国参拝などかつて中国などにたいしてやった戦争犯罪を覆すこと、また台湾海峡の紛争に介入するという対中国内政干渉を宣言し、中国が設定した経済海域の内部で石油掘削の許可を出したり、アメリカの下請戦争を担う国連常任理事国入りなどに反対するものである。さらに、日本企業の植民地的な収奪への怒りがある。
中国でも韓国でも、かつての戦争の痛ましい歴史について、若い世代に語り伝えていることは立派なことである。日本でそれをやらせないことの方が恥ずかしいことである。日本の支配勢力は、被爆者にも戦争体験者にもさまざまな押さえつけをやって語らせないようにしてきたばかりか、中国・アジア侵略の悪事については開き直って覆し、アメリカが日本にやった原爆投下や沖縄戦、全国の都市空襲による非戦闘員の無差別殺戮にたいしては、謝罪を求めるどころか、むしろ感謝すべきだという姿勢をつづけ、いまではアメリカの戦争に日本をかり出そうとまでしている。このような姿勢は、売国奴の世界だけで通用するものであって、中国や韓国で通用しないことは当たり前である。それはまた、戦争による筆舌に尽くしがたい苦難をなめた日本人民のなかでも許し難いことである。
日本経済は構造改革・規制緩和でアメリカ資本に乗っ取られ、日本の企業は競って中国に工場からスーパーまで移転し、国内の産業をさんざんにつぶしてきた。中国では、社会主義的な集団所有制の解体で、大量の農民が食えなくなり、国営企業はつぶれ、難民や未就業者、難民があふれ、職のあるものも日本の20分の1という賃金の使い捨て状態である。低賃金の中国で生産した商品を日本に逆輸入して、働くものを食えなくさせながら、一握りの独占資本手段だけが法外な超過利潤を得ている。
こうした日本において、中国の反日デモに負けないほどのデモやストライキが起きないことこそ異常なことである。
那須三八郎