いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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給付も減税も

 トランプ関税による国内への影響を懸念して、なにやら石破政府が国民1人につき3~5万円を給付するといい始めた。内閣支持率が低迷するなかで、これは誰がどう見たって夏の参院選対策であるが、配らないよりも配るにこしたことはない。みなが物価高でヒーヒーいっている折、どうせなら公明党案の1人10万円でお願いしたいところである。それでも消費税なり物価高で吸い上げられてきた額には到底及ばないし、少しは家計の足しになる程度なのだ。

 

 少数与党になった自民党にとって、仮に夏の参院選で惨敗でもしようものなら、政権基盤は今以上にぐらつくことになる。世間の風当たりが強いことを自覚しているからなのか、冷ややかな視線に彼らは焦っているのである。なにかご機嫌とりをしなければ――と。国民の暮らしを心配して給付に乗り出すのではなく、自分たちの議席の心配をして給付するわけで、動機としては転倒しているしふざけてもいるが、もらう側としては一時的なものであっても配らないよりは配るほうがよい。投票をどうするかは別として、おおいにばらまいてご機嫌をとりにきなさいと思うのだ。有権者が大切にされるのはいつも選挙の前だけである。考えようによっては、これまで吸い上げてきた国民のカネを家計に戻すというだけであり、もともとはわたしたちのカネなのだ。

 

 この5万円給付を巡って、一方では「給付ではなく減税をすべき」という議論があり、「給付か? 減税か?」の二者択一を政治家どもが真顔で討論しているではないか。もともと対立する話でもないのに、給付と減税のいずれかしか選択できないような議論をくり広げているのだ。どちらかに限定する必要などないし、給付と減税を両方とも実施すればいいだけである。

 

 「消費税なんてとっとと廃止してしまえ!」という主張は、この物価高のなかで突飛なものではなくなっている。ただでさえ商品が高騰しているのに、そこに1割も上乗せして税金でもっていかれると誰しも頭にくるものだ。スーパーに行くと以前の3000円感覚が5000円に、5000円感覚が8000円というように、レジで「えっ?」となる日々である。たかだか5万円をもらったところで、埋め合わせにもならない。恒久的な減税策も同時に実施しなければ国民生活の底上げにはならず、負担感の軽減にはなり得ない。ガソリンにしても世界的には石油の取引価格は落ちついてきているのに高止まりし続け、そこにいくつもの税金が課せられてリッター170~180円台のままだ。四半世紀前にリッター80円台だったのが信じられないくらい跳ね上がっている。社会保険料その他も含めた潜在的国民負担率はいまや50%をこえ、収入の半分が税金として持っていかれるのだから、搾取し過ぎである。江戸時代中期の国民負担率がおおむね29%だったというから、現代のほうがはるかに年貢奴隷化しているといえる。

 

 それにしても、首相になる前は裏金問題や統一教会問題等々でも身内に対して辛口のコメントを発していた石破茂も、首相になるとたちまち口を閉ざして、石橋を叩いて渡るように政権維持に汲々としているではないか。「結局、首相になりたかっただけじゃん」と床屋で店主が呆れていたが、誰が首相になっても旧態依然として、何も変わらないのが日本の政治風景である。

 

 石破茂は自民党の1年生議員たちに10万円の商品券を配っていた。この際、国民にも同額を配るというか、返すべきである。そしたら、ちょっとは投票先について検討の余地を残す有権者もいるのかもしれない。 

 

吉田充春               

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