海上自衛隊の潜水艦修理をめぐって大阪国税の捜査が終わり、川崎重工が10億円追徴課税された。報道によって明らかになっているのは、川崎重工が下請会社に資材などを架空発注し、そこからさらに二次下請に架空発注して環流させ、支払った代金を裏金としてプールして自衛隊・防衛省に貢いでいたというもの。裏金は潜水艦の備品、ゲーム機やゴルフ用品などの購入のほか、飲食接待にも使われていたという。こうした架空取引は40年前から続けられていたといい、防衛装備品を扱う大手各社と軍隊との癒着構造は年季が入っていることをあらわしている。
5年で計43兆円もの防衛予算が投じられることになり(23年度が初年度)、あまりにも過大な増額によってだぶついた予算で裏金作りがやられ、それらが防衛省・自衛隊側をもてなす費用として使われていた。本来なら追徴課税10億円で済む話ではなく、過大な金額で発注して、回り回って恩恵に預かっていた防衛省・自衛隊側も追及されるべきものである。10億円を既に納税したからお咎めなしというのでは、国家予算にまぶりつく企業による裏金作りと、軍隊への環流という癒着構造はそのままである。「我が国を守る!」といって膨大な予算を注ぎ込み、やっていることは裏金作りでゲーム機やゴルフ用品の購入、飲食接待でどんちゃん騒ぎというのでは、こいつらバカではあるまいか? と国民としては思ってしまうのだ。
やれ北朝鮮が攻めてくるとか、中国が攻めてくるとか対外的な脅威を煽っては軍拡に舵を切り、アメリカの軍産複合体から大量に武器を売りつけられているのが「5年で43兆円」の防衛予算の実態であろう。オスプレイにせよ戦闘機にせよコロコロと値段が変わるのは、要するに「言い値」であることをあらわしており、つかみどりである。防衛予算の増額を迫ってきたのはアメリカであり、それは日本の心配をしているからではなく、もっと米軍産複合体をもうけさせろというだけなのである。
そのおこぼれに預かるように、国内の防衛装備品を扱う大手各社の受注額も跳ね上がり、「軍事でもうける」路線が露骨である。三菱重工の23年度の防衛装備品の受注額は1兆6803億円、今回摘発された川崎重工が3886億円、NECが2954億円、三菱電機が2685億円、富士通が2096億円、と各社前年比で200~300%以上もの増加率を見せるなど、まさに防衛バブルを謳歌している。そして、そうした関連会社が恩返しをするように防衛省から天下りを受け入れ、生活の世話をしていることも国会で明らかになっている。
「5年で43兆円」という破格の防衛予算であるが、チェック機能はまるで働いていないことも今回の一件で浮き彫りになった。億単位で裏金が積み上がるほど有り余っていることを示しており、いわゆる“死の商人”界隈というか、そっちの世界は泡にまみれてお祭り騒ぎをしているかのようである。過大である以上、この見直しをすることは必至であり、必要のないものに必要以上にカネをかけるのは無駄である。コメがなくて大騒動している折、いっそのこと防衛費の無駄をごっそりとそぎ落として、コメ農家の育成生産に潤沢な予算を回した方がよほど「国防」に資すると思う。国民の胃袋を守ることのほうが切実である。
武蔵坊五郎