朝起きてニュースでニューヨーク・ダウの暴落が伝えられた日は必ず日経平均株価が暴落する――くらいは日頃から株などに縁遠い者でもわかるほど、この何年間か同じようなことがくり返されてきた。今度は「世界の工場」といわれてきた中国経済の成長鈍化や、原油安に伴って中東のオイルマネーが引き上げられること、アメリカ経済も芳しくないことなどを理由に世界同時株安が起き、欧米、アジア、中東など世界中が連鎖していっきに信用収縮が進んでいる。
ITバブルがはじけたのが2000年、その後のサブプライムローンがはじけてリーマン・ショックが起きたのが2008年。その度に次なるバブルをひねり出して、さらに金融派生資本が焼け太りして投機をくり広げてきたが、おかげで今回襲ってくるであろう金融メルトダウンは、これまで見たこともないような巨大なものになるという声がしきりだ。いったいどんな事態が待ち受けているのか、私たちが生きているこの世界はどうなっていくのかと思わせている。
ただ株など持っていない者にとっては実感がないためか、こうしたハラハラやドキドキからは基本的に蚊帳の外である。むしろ金融投機に浮かれてきた財界や銀行、セレブとか「勝ち組」気取りをしてきた人種が青ざめるのだろう…とどこか冷めている。失う株がない、失う財産がない側は、もともと何もないから悲しみようがないのだ。株価が下がったところで悔しいとも思わないし、悲しいとも思わない。残念とも思わない。一つだけ思うのは、「おい、安倍晋三! 年金返せ!」だけである。目下、GPIF(年金基金)が市場に突っ込んできた何兆円ものカネが溶け出しているという。この落とし前をつけることなく「腹が痛い」で逃がすわけにはいかないと思う。 武蔵坊五郎