山口県立柳井高校の2年生が主権者教育の一環で安保法制について考え、模擬投票(賛成3、反対29)したことに安倍派県議が難癖をつけている問題が県内の教育関係者たちのなかでたいへんな話題になっている。指導を担当した教諭なり高校生たちがいったいどんな悪い事をしたというのか? とみなが首を傾げている。問題がひっくり返っているのである。
県議会で安倍派県議が問題にしたのは「中立性」だった。客観的に見て、政治的中立性を犯して教育に政治介入しているのは安倍派県議の側で、みずからが「中立」でない立場から模擬投票の結果に腹を立てているだけである。「教育は不当な支配に服することなく、国民に対し直接に責任を負うべきものである」と教育基本法では明確に謳っている。それはかつての大戦で天皇制軍国主義の権力者どもが教育を利用し、子どもたちを洗脳して戦争に駆り立てていった痛恨の反省の上に立ったものである。教育への政治介入、不当な支配を許してはならないというのは、権力のいいなりにしてはいけないというのが主要な問題であり、国民に直接責任を持ち、権力の介入を排除しなければならないというのが本来の意味である。憲法違反をやろうかという側が、法治国家の自覚もなくこれを犯そうとしているのである。反省したり萎縮すべきは教育者や学校側ではなく、まさに「中立性」を犯している県議である。
もうじき18歳に投票権が与えられる。模擬投票をやった高校生たちも有権者になる。そもそも選挙に「中立」などなく、賛成か反対、支持するか否かを明確に示すことが迫られる。主権者教育をするのに、みずからの考えや立場を鮮明にせず「中立」でなければならないというのが土台成り立たない。
当の柳井高校では資料を充実させて再度授業をやり直すことになった。国会答弁すら詭弁だらけで真実を覆い隠しているのに、高校生たちに何を見て判断しろというのだろうか。ここは安倍派県議の笠本某がみずから柳井高校に出向いて32人の高校生たちと対面すべきで、笠本某にも賛成論を発表させた上で、再度模擬投票をやってみたらいいと思う。柳井高校が招待したらどうだろうか。 吉田充春