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避け難い自然災害への対応

 梅雨前線が九州地方や中国地方、さらに北上して北陸地方や東北地方などを覆い、列島各地がかつてない集中豪雨に見舞われた。山口県においても、それはもう尋常ならざる雨量を伴って降ったことから、恐怖のあまりスマホアプリのアメダスが示す線状降水帯の時間予想を気にしながらの毎日だった。列車はストップ、道路は通行止め、崖は崩れ、河川は氾濫――。真夜中に緊急事態警報アラームが突如として大音量で鳴り響き、市役所から避難指示のマイク放送がくり返された日もあったが、では移動できるかというとそうもいかず、結局のところ家のなかでジッとして身動きがつかなかった――という人も多かった。兎にも角にも経験したことがないくらいのひどい土砂降り続きで、身の危険を感じる雨量だった。

 

 記者たちが取材で目撃してきた被災地はどこも酷い惨状で、福岡県、佐賀県、大分県、山口県と近隣だけ見ても被害は甚大なものがある。山側が土石流に襲われ、さらに筑後川が氾濫した久留米などは被害範囲も広大だが、家屋倒壊や損壊、床下浸水、床上浸水など被害状況には差異こそあれど、いったいどれだけの人々の暮らしが脅かされただろうか。家屋や家具、車などそれまで財産を注ぎ込んできたものがすべてダメになったり、被災者にとってその生活再建には今後、途方もない労力と金銭的負担がのしかかっていくことになる。経済状況も千差万別ななかで、この立ち上がれないほどのショックと絶望から、抱きかかえて支えてくれる支援の力こそが求められている。

 

 しかし現実には、被災地の復興はいつもボランティア頼みで、国や行政のマンパワーを動員した支援が届かないのが常である。5年前の西日本豪雨に見舞われた広島・岡山だっていまだに復興は道半ばである。東北の被災地が棄民状態に置かれているだけでなく、地震に見舞われた熊本しかり、この国で自然災害に見舞われると、すべては自己責任、自助努力に丸投げされ、立ち上がろうにも立ち上がれない人々が置き去りにされていく実態がある。ボランティアの手が行き届くのはほんのわずかであり、これら民間の善意だけに丸投げして、政治や行政は当てにならないというのでは話にならない。税金だけとって世話をしない、「自助努力ですよ」といって棄民するなど、治山治水がもっぱら統治能力として問われた封建時代の為政者と比べてもひどい話なのである。これほど自然災害が頻発しているなかで、被災者への手厚い支援策、具体的には生活再建にかかる費用の支援を充実させていくことは現実的課題といえる。

 

 豪雨災害真っ只中にニュースで「岸田首相 トルコ地震支援に850億円」なんて聞かされると、どうして「岸田首相 久留米の被災地に850億円」にならないのだろうか、どうして海外に何兆円とばらまいているのに、自国の困った国民の暮らしに回せないのかといつも思う。優先順位が狂っているのである。

 

 「線状降水帯」という言葉自体、ここ数年頻発する豪雨災害によって耳にするようになったものの、それが自然現象である以上、避けがたいものとして受け入れるしかない。人間の願望でどうこうなる代物ではないのだ。しかし何もできないのではなく、必要な備えをすること、これらの豪雨に照応した現代版の治山治水を実行する以外にない。山や川が抱えきれないほどの大量の雨が降り注ぐとはいえ、治山治水をしっかりとおこない、都市においても排水機能を強め、必要であれば川幅の拡幅や川土手の補強、川底の堆積物除去など、できることをやる――に尽きる。それこそ国土強靱化なんていうスローガンを叫んでいたわけで、4兆円越えの防衛費で米軍需産業からいたらない武器をつかまされるよりも、そうした国土の維持管理に費やした方がはるかに国民生活の防衛になるはずだ。「この国を守り抜く」なんて叫んでいる政治家もいたが、おう! 守り抜いてみろ! と思うのだ。

 

吉田充春  

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この記事へのコメント

  1. 匿名希望者 says:

    マスコミ(各テレビ局等)は、被害・被災状況をただ報道するだけで終わりですが、この惨状を真摯に伝える貴紙の姿勢には敬意を現わすばかりです。山口県内では、JR美祢線が甚大な被害を受けただけだけではなく、同山陽本線も一部不通区間があり、JR貨物は一部区間でトラック輸送が続いていたようですね。”モーダルシフト””SDGs”と無責任の騒いできた(いる)マスコミは黙っています。
    思えば、”国民の生命と財産を守る”国土強靭化””地方創成”と豪語しておられた一人の総理大臣の姿が目に浮かびます。プーチン大統領を日本の、いち地方空港に招き、地元の有名温泉旅館に連れていった(だけ)だったのか?成果はどこに。日本サハリンガスパイプライン計画はどこに。同県の選挙区から姿を消した、あの元大臣は、”日露天然ガスパイプライン推進議員連”の会長さんであったとも。西尾幹二先生が”同総理は”人たらし”で”何もしなかった”と落胆されたと保守系オピニオン紙で述べておられています。BS-TBSの夜間報道番組では、同県出身のキャスターも相変わらずロシアのウクライナ侵攻を主に毎晩報道し続けているのが現状です。いかに総理大臣の実行力が大切か。日本のマスコミが何故ここまで偏向しているかあらためて認識した次第です。
    これからも引き続き、鋭い記事で私たち読者を啓発(いえ啓蒙と言っても差別にはあたらないかと)されることを期待しております。

  2. 菅沼正規 says:

    総理が外国への金のばら撒き行脚に興じている間に、国内は異常気象による甚大な被害、相次ぐ値上げによる生活の圧迫に苦しんでおり、一体誰の為の政治家なのかと疑問符が増えるばかり。
    吉田記者の仰る通り、国を守る姿勢の片鱗でも見てみたいものです。

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