21日の晩、森友学園問題とかかわって検察に強制捜査を受けていた籠池理事長が、安倍昭恵の経営する居酒屋「UZU」や富ヶ谷にある首相の私邸におしかけて、学校建設のために「どうぞ、安倍晋三からです」といわれて受けとったと証言してきた100万円の寄付金を返しに行くパフォーマンスを見せた。
多数のフォロワーを抱える著述家の菅野完がツイッターで「籠池のおっさん、あくまでも100万円を昭恵に返したいらしく、これから富ヶ谷の安倍邸に行くとのこと」と発信し、理事長に帯同した人物がその映像をリアルタイムでネット上にライブ配信していた。
国会閉幕と同時に報復捜査が始まり、権力側からすると恨み骨髄でトカゲの尻尾を叩き潰しにいったつもりかもしれない。ところがへこたれるわけでもなく、逆にひょうひょうとして出かけていき、困った顔をして「どうしても返さないといけないものがある」と食らいついていく。それに対して、UZU店員の暴力団かと見まがうような怒声にも驚かされたが、寄付していないのであれば正正堂堂と向きあい「私、渡していません!」と突き返すなり、それこそ顔を真っ赤にして首相みずから「印象操作だ!」と叫べばよいのに、国会証人喚問ともども、いつも雲隠れして本人たちの反応が表には出てこない。そこにやましさが生じ、むしろ堂堂としている籠池の主張にみなが信憑性を感じるのである。
教育勅語を子どもたちに唱えさせたり、右傾化教育ビジネスに便乗して国有地の無償払い下げを受けようとしていた当事者であることへの批判は置いておいて、一連の抵抗はあっぱれと思わせるものがある。共謀罪が強行採決となり、「弾圧が始まる!」「怖い!」といって恐れおののいている向きもあるなかで、はるかに腹が据わっているではないかとも思う。加計学園問題だけでなく、こっちも見てくれよ、忘れないでよといわんばかりの煽りを入れ、強制捜査も何のその、末端の尊厳を持って「あんたたちがくれたカネじゃないか」と突き返しに行って権力者界隈を困らせる。この大真面目なのか悪ふざけなのかわからぬ行動からは、同時に「オレだけを悪者にするな」という心中覚悟の気迫が伝わってきたのだった。「ほんとうにしつこい人」の反撃に続いて、23日には前川前文科事務次官の反撃もあるようだ。
吉田充春