国会が菅内閣の不信任をめぐって大騒ぎをした。リーマンショックから東日本大震災が続き、この国をどう立て直すかが重大問題になっているなかで、国会ではだれが首相をやるかの大騒ぎである。菅政府はこの大災害の前で役に立たないばかりか復興の障害にもなっている。対する自民党は「菅がけしからん」というが日本をどうするかはなく、わが身の恥をかえりみることなく、すっかり人の文句をいうばかりの野党精神が板についてしまった。国民にとって期待を寄せるところがどこにもない。原発はメルトダウンし、東大の原子力学者もメルトダウンしたが、政党政治もメルトダウンである。
長期の自民党政府はアメリカのいいなりで、小泉・竹中に代表される新自由主義改革なるものをやって日本をガタガタに崩壊させ、国民の鉄槌を受けて大惨敗した。民主党政府は自民党惨敗のおかげで与党になったが、菅政府は臆面もなく消費税増税、普天間基地の辺野古移転への回帰、TPP参加、原発大増設などの旗を振って、自民党顔負けの新自由主義政治の徹底をはかってきた。どっちに転んでも、アメリカと財界の代理人にしかならないのだ。
大震災後3カ月になるが復興はさっぱりすすまない。現地の実状は知る必要なしの態勢で、住居の高台移転・エコタウン化、太陽光発電の大普及、浸水地の買い上げ、農地の大規模集約、農業の工場化、漁港の集約と漁業権の民間開放、そして道州制への移行などという構想が、現地にとっては「いらぬ世話」の形で語られている。人の財産を奪い取ることをなりわいとする投資ファンドや大企業、アメリカ外資などの発想である。
「国際競争力のある新しい形の経済復興」というが、それを実現する条件は、低コスト地帯にすることであり、中国、インドネシア並みの低賃金労働力地帯にすることである。これは全国的に他人事ではない。しかも福島原発の収束、廃炉に至るまでの何十年もの間、何十万人という被曝作業員をつくり出す必要がある。被災住民を疲弊させ、土地を手放させることは、明らかに意図的な政策としてやられている。菅政府のサボ、無能ぶりと国会の騒動は、住民が疲弊するのを待つという政策の実行ではある。
那須三八郎