福島原発のメルトダウン事故から4カ月がたつ。とうとう避難生活は限界だとして焼身自殺する人も出た。立地町はもちろん、周辺20㌔の全域、さらに40㌔圏にかかる飯舘村など、すべての住民が強制的な退避をさせられ、戻る展望をまったく見出せないまま難民生活を強いられている。
広島、長崎の被爆市民は、福島よりはるかに強烈な放射線被害を受けながら復興させてきた経験からみて、広範囲を強制的に退避させているのは異常だと口を合わせていっている。放射能汚染から人命を守るというのが建前である。しかし水素爆発をして大量の放射能を放出しているとき、それを知らせず、放射能を浴び放題にさせた。地震列島に54基もの原発をつくること自体、国民の生命など二の次であることを暴露している。
菅首相は「20年は帰られない」とうそぶいたと報道されたが、原子力委員会の5月末の会合では20㌔圏内の土地を4兆円あまりかけて国が買い取るという論議がされていた。各地の線量をはかって、除染作業をして、もとの状態にする方がはるかに安上がりなのに、それはしない。土地を欲しがっているのだ。
それは核のゴミ捨て場を確保する千載一遇のチャンスと見なしているのだ。苦難にたたき込まれた多くの人を、もっと不幸にさせて、得られなかった獲物を獲得するために色めき立つ。福島だけではなく全国の原発でたまりつづけている高濃度放射性廃棄物の処分場をのどから手が出るほど欲しがってきた、電力会社や東芝、日立、三菱などのメーカー、だれよりも爆発した原発をつくったGE、原発増設に走るアメリカのオバマ政府と金融独占体の要求である。
避難した各町とも、日がたつにつれて住民が離散し、農漁業、商工業などの経済活動の立て直しも、学校、病院、役場の機能などの地域的なコミュニティーの立て直しも困難になっている。それは土地接収をもくろむ勢力が意図的に追い込んでいるのだ。広島、長崎の経験から見ても放射能汚染は乗り越えられないはずがない。避難民を流民にするいわれのない意図とは対決して、避難民の「古里を元に戻せ」の正論を全国が共有して大きな声にすることが求められている。
那須三八郎