もはや手が付けられぬほどオミクロン株が各県で猛威を振るっている。これまでの疫病のように弱毒化して「ただの風邪」に近づいているのなら、それ自体は朗報にも思えるが、いつの間にか陽性になったり、あるいは濃厚接触者に認定されて10日間の経過観察と自主隔離生活を強いられる身になったら、社会人としては誰しも堪らないものがあるだろう。軽症や、陰性であっても濃厚接触者になった場合、いきなり「自宅待機」を保健所に指示されたところで、本人も会社も大変である。10日間分(オミクロンの場合)の仕事をどうリモートでこなすか、できない対面の業務を誰にお願いするか、みずからの巣ごもりの手配と同時に、背負っている仕事の塩梅を上手くこなさなければ周囲に迷惑をかけてしまうからだ。場合によっては「あいつのせいで…」みたいな感情だって周囲に生じてしまうだろうし、本当に堪ったものではない――と、ある日突然濃厚接触者認定された知人になりかわって、その思いを吐き出してみた。恨むならオレを恨むなコロナを恨め--である。
ところで、山口県内でもオミクロンの感染者が増えている折、山口県が県内各地に無料PCRの検査センターを設置し、何か事あればここに問い合わせて下さいと張り切って住所や連絡先をアナウンスしたものの、いざ一般市民が「濃厚接触者かも…」「周囲に感染者が出たので検査したい」と思って問い合わせても、肝心要のPCR検査キットが足りておらず、その検査試薬も世界的物流の停滞で不足しているとかで、「無料PCR検査」は実質的に看板だけとり付けられているような空っぽの状態である。病院でのPCR検査も滞り、濃厚接触者であろう人々が不安になって検査をお願いしても、受け付けてもらえない有り様なのである。
斯くして山口県知事選が告示を迎え、現職の村岡がコロナ対策の実績をアピールすればするほど、現場関係者のなかからは「オマエ、看板だけかけて“やってます”アピールしてんじゃねぇぞ」との厳しい声が上がっている。中身が伴わなければ「無料PCR検査」をやっていることにはならず、見方によっては選挙前のコロナ対策アピールのために見切り発車で押し切ったといわれても仕方がない。だって、そこは「無料PCR検査センター」ではなく正確には「検査できない無料PCR検査センター」であり、有料も無料もあったものではない。そんな看板倒れの検査センターを100カ所設置しようが200カ所設置しようが、そもそも検査ができないのなら1カ所にしたって何も変わらないのである。
第五波から2カ月もの期間があったのに、いざ第六波に火が付いたと思ったらたちまちPCR検査キット及び試薬が足りないというのは、いったい誰の怠慢なのだろうか。備えあれば憂いなしでなぜ防疫体制を強化していなかったのか、どうしていつも後手後手なのかである。これでは無症状の感染者の囲い込みなど到底不可能で、この2年間くり返してきた万歳降参の道を辿るほかない。
科学が発達しているはずの現代社会において、疫病に対して科学的に対応することができず、爆発的な感染拡大に対して為す術がないというのはいったいどうしたものか。オミクロン株は重症化する確率が少ないという側面に救われてはいるが、神頼みで祈るだけというのではあんまりではないか。吉田充春
オミクロンは潜伏期間2日程度と言われているから、検査の結果報告が3日後では後の祭り、検査当日に感染していたら結果が出る前に発症してしまう、だからPCRは意味がないなどと近視眼的な見解を連日テレビで吹きまくっている自称コメンテーターがいます。しかし新型コロナの最大の特徴(インフルエンザとの相違点)は無症状でも感染させるということです。従って出来うる限り検査によって感染者を発見し、感染を拡げないように一定期間隔離すること、その間にワクチン接種と罹患者により集団免疫を獲得、そして治療薬を実用化すること、タミフルのように。そうすればインフルエンザと同等の扱いになります。この中期的な展望を政府や有識者会議は明らかにすべきです。濃厚接触者という概念の創造が問題を混乱させています。