沖縄の米軍基地・キャンプハンセンで207人にものぼる新型コロナウイルスのクラスターが発生し、そのなかからオミクロン株が検出されている。昨年も米兵が基地外でバーベキューパーティーを開催して感染爆発の引き金を引いたが、配置転換に伴って本国からオミクロン株が持ち込まれたのか、またもや米軍基地を震源地にした感染爆発が起ころうとしている。ようやく収束局面を迎えたかに見えた沖縄県にとってはたまらないものだ。
問題なのは、そうした感染爆発が基地内で起こっていながら、その後も米兵が平然と基地外に出てきていることだ。しかもマスクなしで歓楽街を出歩いているのもいるというからふざけている。外出禁止令を出して基地内に感染源を抑え込むのではなく、まるで沖縄県内に拡散しても構わぬという対応なのである。米軍の傍若無人ぶりはこの問題に限ったことではないが、県民感情からしたら「出てくんな!」「いい加減にしろ!」が本音であろう。
とはいえ、近年は同じく米軍基地が置かれている岩国でもそうだが、米兵や軍属が基地のなかで生活するのではなく、あえて基地の外に家を借りて住むケースが増えている。ゲート内の環境が息苦しいのか檻の中に入れられているようで嫌なのか、外に出てきたがるのだ。少々高額な家賃でも米兵には住宅手当として毎月15万~40万円(階級によって変化)が支給されるとかで、不動産会社が比較的大型の米軍用住宅をこぞって建設したりもしている。日本人相手の商売よりも割がいいという理由からだ。そうやって米兵が基地と住宅を毎日のように往復し、中と外との境界線が緩くなっている。従って感染を基地内に抑え込むといっても住居が外にあるケースもあるわけで、必然的に基地の街のコミュニティーのなかに持ち込まれ、感染は拡大することになる。そうした住宅問題も含めてコロナ禍で改めて思うのが「出てくんな!」なのである。
2022年は沖縄の本土復帰から50年となる。沖縄戦で20万人(県民の2人に1人が亡くなった)を殺戮し、銃剣とブルドーザーで島の人々から土地を奪い、そこに広大な基地を建設して七六年経ってもなお居座っているのが米軍である。他国の軍隊がこれほど我が物顔でのさばり、それに対して為政者が平身低頭で屈服しているような国は、世界を見渡しても日本だけである。オミクロンのクラスターが起こってもなお抗議すらできないのが日本の総理大臣で、バイデンに電話の一つでもかけて「外出させるな!」くらいいってみたらどうかと思う。
本土復帰闘争では「沖縄を返せ!」(荒木栄作曲)が歌われた。奪われた沖縄を返せ――それが戦後からこの方の県民のなかに渦巻く思いであり、民族の主権を蹂躙する米軍基地との不屈の闘争は絶え間なく続いている。コロナ禍の目前対応としてはもちろん基地から「出てくんな!」であるが、要求すべきは基地丸ごと沖縄から、日本から「出て行け!」だろう。中国と一戦構えてミサイル攻撃の盾にするというなら、なおさらである。
吉田充春