山口県でおこなわれた参議院補欠選挙は、近年稀に見る低投票率36・54%を叩き出し、自民党が議席を獲得していった。衆議院選の投開票を1週間後に控えた選挙でこの数字というのはいささか衝撃的だ。候補者としては自民・北村経夫、共産・河合喜代、迷惑系ユーチューバーことへずまりゅうの3人が立候補し、それに対して6~7割の有権者が背を向ける結果となった。野党の対抗馬が直前まで決まらず、誰も出ないのではさすがに存在意義が薄れ格好がつかないという状況下での“消化試合”だったが、自民党も野党もまるで県民に相手にされていない現状を浮き彫りにした。選挙が宙に浮き上がっているのか、はたまた政党が宙に浮き上がっているのか、有権者との距離感は遠く、空中遊泳ともいえる状況を映し出しているのである。
多くの有権者は面白くない選挙には冷徹にそっぽを向く。当て馬として共産党が担ぎ出したとはいえ、はじめから消化試合であることがあからさまで、3人目の泡沫もこれまたふざけている選挙に、どうしてわざわざ足を運んで投票しないといけないのか? と感じた有権者が大半を占めたといえる。かくして「選挙に背を向ける5割」が「6~7割」へと増え、政治に何らの期待も持てない層が圧倒的多数を占めるという状況が出来上がっているのである。
こうした低投票率によって自公政権が存続できていることから、特に野党支持者のなかから「選挙に行かない5割にも責任がある」と非難する声がいつも上がるのだが、「この政党ならやってくれるんじゃないか」「この政治家なら一票を託してもいい」と思える相手がおらず、それは野党も含めて有権者から相手にされていない結果にほかならない。従って5割なり7割に相手にされていない者は、与党にせよ野党にせよ、なぜ多くの有権者に支持してもらえないのか、嫌われているのかを恣意性を抜きにして具体的に捉えなければ永遠に浮上する可能性は乏しいし、伸びる政党にはなり得ない。
目下くり広げられている衆院選についても、目前の手の問題があるとはいえ、やれ野党共闘といって寄せ集めがダンゴになったとして、5~7割のそっぽを向いた有権者にとってどれだけ魅力的に映るのか? というと、やはり寄せ集めにしか映らないのではないか? とも思うのである。強烈な政治不信を吹き飛ばすほどの魅力になり得るのか? というと、どうもそのようには見られていないし、多くの有権者が冷め切っている状況は歴然としている。「選挙に背を向けた5割」ないしは「7割」の有権者は何を求めているのか、その要求に合致した訴えや政策を届け、一緒になってたたかう政党の出現こそが待たれている。 吉田充春