何もかもがグダグダなまま東京五輪は開会式を迎えた。
直前になって、かつて障害者への虐待を自慢していた作曲家が開会式の作曲担当を辞任、急きょ4分間の音楽を差しかえることになったり、追いかけるように今度は同じく開会式の演出担当が芸人時代にホロコースト(ユダヤ人大虐殺)をコントのネタにしていたことが判明して解任されるなど辞任ドミノが止まらない。当初よりロゴのパクリ疑惑であったり、森喜朗の女性差別発言及び辞任、開会式責任者の「オリンピッグ(渡辺直美=ブタ)」侮辱演出騒動と辞任など、枚挙に暇がないほど取り仕切る電通・博報堂及びその界隈による品位も芸術性の欠片も感じられないような騒動がくり広げられてきた。その低俗さとも相まって「呪われた五輪」などといわれてきたが、事ここまで来るとその開催環境は本気で呪われてるんじゃないの? と思うような様相を呈しているのである。
始まってみれば東北の被災地をダシにした復興五輪もどこへやら。その後差しかわった「新型コロナウイルスに打ち勝った証」の五輪も、開会式に向けて東京での感染者数は急増し続け、このままいけば8月には第三波を上回るこれまでで最大の感染爆発(より感染力の強いデルタ株に置きかわる)を招く危険性すら指摘されている。「打ち勝った証」どころか、「大惨敗した証」になろうとしているのである。
すでに東京では自宅待機が3000人をこえ、医療体制も逼迫しているのに、そこに五輪開催期間中の感染爆発による負荷が加わることになる。そうなると第三波にも増した医療崩壊は避けられず、やれ飛んだり跳ねたりして金メダルをとったかどうかなど二の次三の次の事態を迎えることは容易に想像がつく。テレビ画面ごしにキャスターや出演者が「金メダルとった。ワーイ!」の嬉々とした表情からキリッと真顔に切りかえて、「つづいてのニュースは」といってコロナの感染拡大や医療崩壊を論じるという偽善を見せつけられるのだろうか。選手村でも次々と感染者が見つかり、阿鼻叫喚のコロナ五輪という最悪の事態を迎えているなかで、とても平和な気持ちでスポーツを楽しもうという空気ではない。
「福島は完全にコントロールされている」という安倍晋三の大嘘から始まった東京2020は、斯くしてズタボロの様相を呈しながら万歳突撃の局面を迎えている。トヨタはトップの開会式欠席を決め、期間中のCMも自粛。経団連など財界3団体のトップも開会式の出席を取りやめるなど、泥船から逃げ出すようにこれらのスポンサーも距離を置き始めた。そうすると、言い出しっぺの安倍晋三までが開会式を欠席するといい始め、「五輪に反対するのは反日」なんていっていた者が、本当に逃げ足の早さだけは天下一品だなと呆れるものがある。今、安倍マリオになってはしゃごうものなら、それこそ世間から袋叩きにされる事がわかっているからこその逃亡なのだろう。矢面に立たされた菅義偉がどことなく破産管財人みたく見えるのは、この五輪にしてもコロナ禍の政府対応にしても同じである。ババを掴まされて、尻拭いを押しつけられているだけなのだ。
さて、4連休が始まり、観光地である下関でも海峡沿いは県外ナンバーが連日のように押し寄せている。そして地元の人間ほど近づくまいとヒソヒソ話題にしている。「人流」抑制などもはや効果なしと思えるほどである。21日には山口県のプレミアム旅行券(2万5000円で5万円分の宿泊券、中国・四国・九州地方で使える)のコンビニ発売が始まり、受付開始の16時にはコンビニというコンビニで長蛇の列ができて何事かと驚かせていた。よくもまあ第五波の入口だというのに懲りずにGoToをやるもんだ…と店員のお兄さんたちも困惑気味であった。
こうして4連休、お盆休みという人の移動によって、再び都市部から地方都市への感染持ち込みや全国的な感染爆発が引き起こされるのかと思うと、いったい何回同じ事をくり返せば気が済むのだろうか…と愕然とした気持ちにもなる。 吉田充春