いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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“東京コロナ”扱いする田舎のお袋さん

 東京で働いている友人に久しぶりに電話をかけてコロナ禍の様子を聞いてみると、「東京はもうユルユル」なのだという。「まん防」だろうが「緊急事態」だろうが日常生活に特段変わりはなく、満員電車に揺られて会社に通勤し、仕事を終えれば再び電車に揺られて帰宅。多少出歩く機会は減ったものの、人口密集地帯だけに何をするにも人混みを避けることの方が難しく、感染リスクから完全に逃れられるような暮らしなどできないという。巣ごもりできるだけの給料や補償があるならまだしも、10万円1回こっきりなんて雀の涙ほどにもならない。何かとカネのかかる都会暮らしならなおさらだろう。

 

 そうして4回目のサイレンも「緊急事態」そのものの響きが緩くなり、周囲では「やってられるか」という意見も少なくないのだという。飲食店は忠実に夜間の酒類の提供をやめているところもあるけど、一方で提供している店に客が押し寄せていたり、路上飲みの若者たちも発散させる場がほかになく騒ぐ者は騒ぐ。あるいは昼間の酒類の提供はOKなことから、「コロナウイルスって夜行性だったっけ?」と冗談を飛ばす人もいる。いわゆる「人流」は第1回目や2回目の緊急事態宣言の時よりも明らかに増えており、「何回同じ事(緊急事態宣言→解除→緊急事態宣言→解除)くり返してんだよ!」の空気を強く感じるとのことだった。そして、身近な変化としては、会社近くの公園で生活支援団体がやっているホームレスの炊き出しの列が明らかに増えており、食い詰めている人が相当数いるのだろう…と心配していた。最後に「(盆休みは)お袋から“東京コロナは帰ってくんな!”っていわれんだよ…。ひどくないか?」とぼやくのだった。まぁ、“東京コロナ”とはひどくコロナ差別的なくくり方とは思いつつ、ひょっとしてお袋さん、東京バナナに掛けたのかな? と内心思ったのだった。孫の顔も見たかろうに、やはり周囲の視線もあるし動かぬことが一番というお袋さんなりの気遣いなのだろう。

 

 「まん防」からの「緊急事態」で果たして首都圏において感染力のより強力なデルタ株に立ち向かえるのかは甚だ疑問だ。五輪開催期間と丸かぶりするように感染者は増加をし始め、大慌てで4回目は決まった。しかし、そんな緊急事態宣言下の東京で、一方では東京五輪の開催だけは強行するというデタラメがやられている。第三波を上回る感染者・重症患者が出た場合、たちまち医療体制は逼迫して再び「自宅療養」という名の医療難民が出ることも十分に考えられる局面なのに、そしてデルタ株は第三波の株とも違って感染力も若い人の重症化リスクも高まるといわれているのに、国民の生命と安全を差し出すかのように突っ走る様は異様だ。引き返すことや撤退戦を想像できない者の末路は悲惨なものになるような気がしてならない。

 

 阿鼻叫喚のコロナ五輪となり、首都圏での感染爆発という置き土産だけが残された場合、この責任は果たして誰が負うというのだろうか。誰も責任を負わない第二次世界大戦、誰も責任を負わない福島第一原発の爆発事故と同様の、無責任文化の跋扈は許してはならないと思う。武蔵坊五郎

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