東京五輪に出場する各国選手団の入国が本格化しているなかで、ウガンダの選手団に続いて今度はセルビアのボート選手団からコロナウイルスの陽性患者が見つかった。空港での検査は、相変わらず陽性患者の50%がすり抜けるといわれる抗原検査のまま。実質的にはザルといっても過言ではない。しかし、そのようなユルユルの水際対策でも陽性患者の存在が炙り出されている。そして、ともに旅客機で移動してきた「濃厚接触者」に該当するであろう他の選手たちは、ウガンダの場合、隔離されるでもなくホストタウンへと向かった。空の玄関口である羽田で門戸を全開放して、さながらコロナウイルスを輸入しているような光景である。
何が何でも国内へのウイルス持ち込みを食い止めるというなら、PCR検査を実施して厳重に選手なり関係者を調べ、濃厚接触者についても14日間の隔離を徹底するはずだ。ところが、現状ではアリバイ的に抗原検査をやり、濃厚接触者についてもフリーパスで国内移動が許されるような事態を招いている。そして、ウガンダの選手団の場合、後から「やっぱりもう一人陽性患者だった」などといい始める始末なのだ。なぜ、このようにいい加減極まりない入国審査がやられ、改められないのか? それは改める気がなく、およそ9万人ともいわれる五輪関係者が押し寄せてくるなかで、厳重にやってもキリがないではないかという開き直りがあるのだろう。後は野となれ山となれ、やっちまえ! の対応なのである。
これから続々と各国の選手団及び関係者の入国が始まるなかで、「○○の選手団から陽性患者発見」のニュースがあいつぐのかと思うと目まいがしそうである。こうなることを予想していたからこそ、医療関係者や感染症の専門家たちは五輪開催の危険性を指摘し、世論も8割が反対していたのではないかと今更ながら思う。五輪が世界中から変異株を持ち寄る場となり、終われば世界中にその変異株を持ち帰る中継ポイントになることは、誰の目にも明らかなのだ。世界的には感染爆発の局面にあり、変異株もさまざま出てきているなかで、なおさらそのリスクは高まっているのである。
さて、疫病禍への不安がますます高まっている今日この頃、政権を放り投げた安倍晋三が何をいい出すかと思ったら五輪開催に反対する人は「反日」なのだそうで、またもや世間を「はぁ?」と驚かせている。彼の脳味噌のなかではいつも何を持って反日認定しているのかがまるでわからないのだけど、開催を強行する為政者に逆らう者及び批判的に意見する者は反日と見なすということなのだろう。いずれにしても、例の如く単細胞丸出しというか小学生男子みたいなレッテル貼りには驚かされるのである。狭量な視界から自分と意見の異なる者をみな日教組なり反日認定していたのではキリがなかろうとも思うし、「やい、日教組!」「やい、反日!」なんて、困った時にくり出す「オマエの母ちゃんでべそ!」と大差ないではないか。
国を憂うが故にコロナ対策の徹底を論じ、五輪開催の危険性を指摘し、国民の生命と安全を守るために今何が必要であるかを意見してきた人々がなぜ「反日」なのか? 恐らくそれは安倍晋三にしかわからないのだろう。しかし、これまでの経過を俯瞰して見たとき、コロナ禍でいい加減な検査しかやらず、病床を逼迫させ、補償もろくにせず、国民の生命や安全をないがしろにしてきた為政者、終いには感染拡大にビビッて陣頭指揮を放り投げた安倍晋三こそ反日であろうと思う。しかし、だからといって「やい、反日!」なんていおうとは思わない。だって、それはそれで小学校低学年男子のいい争いみたいで、情けなくなるからである。
今必要なのは「親日」とか「反日」のレッテル貼りや分断ではなく、疫病禍においてまともな防疫を実施し、破綻に瀕している国民生活を補償することに尽きる。そして、感染爆発の契機になりかねないコロナ五輪を中止することである。 吉田充春