3月までの残り2カ月間に必要な予算として、菅政府は総額19兆円にものぼる補正予算案を国会に提出し、それを国会が可決した。内訳を見てみると、医療体制の整備や支援、検査拡充やワクチン接種体制の整備といったコロナ対策のための費用が4兆円余りなのに対し、ここにきてとくに緊急性も乏しい国土強靱化や脱炭素社会への取組におよそ15兆円もの費用を計上している。火事場泥棒とはこのことで、残りの2カ月で15兆円ものカネがGoToキャンペーン(3月までにGoToを再開するつもりなのだろうか?)に1兆円等々、自民等スポンサー企業をはじめとした業界団体にばらまかれるというのである。昨年実施した1人10万円給付の事業費総額がおよそ12・8兆円だったが、それなら2回目の1人10万円給付をした方が、コロナ禍で困窮する国民にとっては遙かに有益じゃないかと思う。
頑なにPCR検査も拡充しないが、頑なに補償もしない。そのなかでコロナによって経済的に困窮するパート・アルバイト女性が増加しており、野村総合研究所の調べでは、仕事が5割以上減り、休業手当も受けていない「実質的失業者」は昨年12月時点で90万人にも及ぶという。女性に限らず失業者の数は増大し、行き場のない人々が路頭に迷い、恐慌さながらの勢いで増えているのも現実だ。これは生活の補償が絶対的に必要な人々が急増していることを示しており、せめてこのような困窮者限定でも現金給付するとか、政治が動いて解決しなければならない問題なはずだ。通常の失業手当や休業手当の条件や対象からあぶれるというのであれば、生活保護まで生活が破綻してしまう手前で歯止めを掛け、「コロナ手当」なりの特別の支給対象条件を整備して予算を充てればできるはずなのだ。
どこかの飲食店経営者が緊急事態宣言をはじめとした政府のコロナ対策に対して、「ふざけんなよ!」と本音をぶちまけて共感を集めていたが、同じように「ふざけんなよ!」と心の底で思いを抱えている人が社会のあそこにもここにもたくさんいるのが現実だ。内閣支持率の急降下はそのことを端的に物語っている。安倍晋三が第二波襲来に耐えかねて一目散に首相の座から逃げ出した後、ババ抜きのババをつかまされたような格好でバトンを引き継いだ菅義偉も、既に疲れ果てた表情をひきつらせてボロボロである。今年必ず実施される衆院選は、こうしてコロナ禍で溜まりに溜まった国民感情が暴れる選挙となることは疑いない。生活が破綻の淵に追い込まれてみんなが苦しんでいるのに放置し続ける政府、感染症対策・医療供給体制の整備がまるでポンコツな政府のままでよいのか誰しもが考えるだろうし、成り代わる政治勢力としてふさわしいのは誰なのかを問う選挙になるのだろう。「自民党も政権与党としての危機感があるなら、もう一回1人10万円のおかわり寄越せ」と、近づく選挙を前に社会的な圧力を加えたっていいと思う。どうせいつもとられてばっかりなのだから。 武蔵坊五郎