政府として何もしなかった「勝負の3週間」が終わってみると、とくに都市部でこれまでになく1日当りの感染者数が増大し続け、「過去最多!」「過去最多!」と毎日のように報道がなされている。これは「勝負の3週間」への敗北にもとれるが、そもそもなにも勝負していないのだから勝ったも負けたもなく、為すがままだった政府対応の産物でしかない。感染症対策を国民や社会の自己責任に委ね、減る要素がない以上、増え続けるのは必然であろうし、あたふたとしている間に手がつけられない状態へと迫っているのである。
それにしても当初から疑問なのは、東京都をはじめとした各都道府県の日ごとの感染者数は、どれほど現実を映し出しているのか? という点だ。日によってPCR検査の実施件数は異なるものの、17日に過去最多の800人超の感染者数を出した東京都では1万件程度の検査数だったという。「検査数が増えたから感染者数が増えているのだ」として、実際には検査すら受けられない人々も多くいるし、自覚症状がなく日常を過ごしている隠れコロナ感染者なんて端から検査網のなかには囲い込みきれていない。「感染経路不明」が増えているのも恐らくそのためなのである。現状では、発熱を訴える人については医療機関や保健所を通じてようやく検査が実施され、クラスターが発生すれば関係者を全員検査したり、あるいは濃厚接触者として特定した人々への検査は実施されている。しかし、無症状も多いといわれるなかで、それらの人々、つまり自覚すらない隠れコロナ感染者については、実態をどれだけ捉え切れているのかがわからない。それらを追いかけきれていないからこそ、今日のような深刻な事態を招いているのである。
このまま検査の網の目が粗いままだとコロナウイルスは市中にこぼれ出ていくほかないし、今後とも「感染経路不明」「最多、最多、過去最多!」の大騒ぎを終息させることなど不可能なのではないかと思う。自分は大丈夫と思っていても、それもこれも検査しないとわかったものではない。仮に検査をしても擬陰性だったり信憑性について疑義もあるが、「だから検査しない」では隠れコロナは永遠にタネを蒔いて回ることは疑いないし、気付かぬ市中感染とのイタチごっこはさらに壮大な追いかけっことなって後手後手を余儀なくされるほかない。これまで以上の爆発力を伴って感染拡大が進みそうな今、世界各国と比較しても異様なほど検査数が少ない日本方式で果たして対応可能なのか、メスを入れることが必要ではなかろうか。
「過去最多」の数字が実態をどれだけ正確に反映しているのかはわからない。しかし、わかっている数字だけでも、これまでとは異なる曲線を描き始め、それへの対応が迫られている。追いかけきれない追いかけっこのような従来方式、すなわち濃厚接触者の割り出しやクラスター関係者のみの検査で限界を迎えているのが明らかである以上、感染症対策を切り替えるほかないのではないか。
吉田充春