22日にベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄で起きた同時多発テロは、30人以上が死亡する痛ましいものとなった。実行犯たちはベルギー国内にある原発を標的にしていたと地元紙は報じ、事前にドエル原発の核プログラム責任者の自宅近くを監視カメラで記録していたことも明らかになっている。ベルギー政府はもしかの場合に備えて原発労働者に退避命令を出していた。混乱した状況のなかで、その後「チアンジュ原発の警備員が殺害され、通行証が奪われた」「電子カード型の通行証は、すぐに無効化されている」と地元デルニエレ・ホイレ紙が警察発表をもとに報道して再び激震が走った。ベルギー検察当局は「原発警備員ではない」と否定しているものの、一連の事件を通じて「原発が狙われた」という事実は大きな衝撃を与えた。
ベルギーはドイツ、オランダ、フランスに挟まれ、ドーバー海峡を隔ててイギリスも近い。地図を見るとわかるように、欧州の主要国が密集するなかにあって、まさに心臓部といってもいい位置関係にある。その原発がテロに見舞われて核爆発でも起こそうものなら、欧州全体が壊滅的な被害を被ることは容易に想像がつく。十字軍VSイスラムであれ何であれ、いかなる理由や正当性を主張しようとも、何の罪もない一般人を巻き添えにした爆発テロや広大な土地を廃虚にしてしまう原発テロは許されるものではない。それは破滅的で、欧米による中東支配や宗教的な争い、世界で起こっている矛盾を真に解決に導くような行為ではないからだ。
1年前に安倍晋三が「ISとたたかう国国を支援する」と叫んだばっかりに、十字軍の仲間と見なされたのが日本だった。列島に50基以上も原発を抱え、これらを再稼働しながらサミット誘致に浮かれている。2カ所・7基で大騒動したベルギーを見て思うことは、仮に狙われたとしてどのようにして50基を守れるのか? という点だ。爆破しなくても外部からの送電線が破壊されるだけで原子炉が暴走してしまう構造は、福島事故によって暴露されたことだ。原発が脆いことはテロリストでなくてもみながわかってしまった。
「邦人の生命を守る」「国を守る」ためにやらなければならないことは、無関係な者が十字軍VSイスラムのなかにしゃしゃり出るのをやめることと同時に、原発を即時に停止して二度と動かさないことである。「原発テロ」が現実味を帯びているならなおさらだ。 武蔵坊五郎