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コロナ禍の敵前逃亡

 コロナ禍がますます深まりを見せるなかで、安倍政府ときたら首相みずからが1カ月半以上も表舞台から雲隠れしてしまい、もっぱら対応は都道府県知事に丸投げしているかのようである。PCR検査の拡充や感染拡大防止のための施策、医療体制の整備、困窮する企業や国民への救済策、あるいは豪雨災害に見舞われた被災地の復旧など、この国に生きるすべての人々の生命と安全を守るために政府が機能しなければならない重要な時期に、まるでひきこもりみたく国会も開かず、記者会見からも遠ざかり、フリーズ(固まる)しているような光景なのである。

 

 矢面に立たされるのがいやだから露出を控えるというのは、政治リーダーとしては敵前逃亡に等しい行動といえる。甚大な自然災害に見舞われ、コロナ禍に置かれた日本社会と向き合う能力がない、つまり両手万歳で白旗をあげているというのであれば、早急に指揮棒を他に譲るべきだろうと思う。前代未聞の事態に際して、その困難に向き合う意志や能力を持ち合わせた者が迅速に対応しなければ、その後にもたらされる事態は明らかに人災なのだ。

 

 第一波から収束に向かったかに思えたこの数カ月の間、第二波に備えてやらなければならないことは山ほどあったはずだ。しかし、PCR検査の人口当りの検査数は後進国並で、いまだに検査したくても検査してもらえないような状態が続いている。これは無自覚で無症状な隠れコロナ感染者がまだまだ国内にたくさんいることをあらわしている。検査しない以上は感染者数は低く抑え込まれ、実態の把握などしようがないのである。こうして爆発的に感染が拡大しているのに対して、一方では経済の落ち込みを心配する余り緊急事態宣言だけは回避し、そのことによってこれ以上の政府補償はしない道を選択し、むしろ人の移動を促すGoToキャンペーンだけは実施してますます感染が全国で拡大する――。実質的にはなされるがままの放置状態といっても過言ではないのだ。

 

 重症者が少ないのがせめてもの救いではあるが、知人の医師曰く、「これまで医療改革で病床削減を進めていた分、現場には余裕がない。たちまち逼迫することは目に見えている」と危機感を抱いていた。そして、「こんな政府に私たち自身の運命を委ねたくない…。これが先進国なのかと思うと愕然とする」と語るのだった。コロナだけではないさまざまな疾患を抱えた患者たちがいるなかで、手術を延期せざるを得なくなったり、家族であっても行動記録によっては面会を制限したり、厳重に感染対策を施したり、熱中症で似たような症状を訴える患者を受け入れるたびに緊張が走ったり、医師も看護師も神経をすり減らしながら医療に従事しており、緊張の糸がかつがつつながっている状態なのだと――。こうした医療機関への体制的・金銭的サポートもまるで乏しいのが実情なのだ。

 

 コロナ禍の敵前逃亡――。連日のように、昨日は○人、今日は○人と感染者数が発表され、収まる気配が見えないなかで、陣頭指揮をとるべき人間が腰が砕けたか、あるいはどうしてよいのかわからずに表舞台から逃亡し、おかげで国会は機能停止。そして、テレビに出てくる専門家会議メンバーといえば政府や経済界に忖度して、口に鉄をかまされた馬状態であり、医術よりも算術に与したのかと思うような有り様である。

 

 地元山口4区でもさすがに見離す人々が増えつつあるのか、タブーだったはずの安倍批判や政府批判がリミッターが解除されたかのように語られ始めている状況がある。なんだか空気が変わっているというのが肌身の実感だ。桜を見る会騒動で郷土が安倍派に大恥をかかされたのに続いて、こりゃだめだ感がそうさせるのだろう。街中に貼ってある「この国を、守り抜く。」の安倍晋三ポスターがどことなく嘲笑を誘い、「もうさすがに(次は)ないよな…」「恥ずかし過ぎて出張先で“下関(安倍の選挙区)から来ました”とは言えない」「前回よりひどい放り投げをするんじゃないか?」等々と、特に支持政党もないが、政治的発言は好まなかったようなみんなが好きなことを話している。

 

 某政党が毎月1回ほど各県ごとに実施している世論調査によると、中国五県のなかでは石破の地元を除いて自民党の支持率が軒並み急落しており、それまで与党30%、野党15%だったのが共に15%で拮抗しているのだという。この調査結果を鵜呑みにする気はないものの、野党が伸びていないのもいかにもな特徴で、河井案里が騒がせた広島、そして山口での変化という点では、前述の地元の空気感とも重なって、あながち間違ってはいないような気もするのである。マスク2枚等々、政治がなんの役にも立たないことを日々実感させている以上、それは致し方ない結果なのかもしれない。コロナ禍が炙り出しているのは、この国のどうしようもない現実なのだろう。 武蔵坊五郎

 

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