アメリカ大統領のトランプが令和初の国賓として招待され、属国の為政者としてポストを保障されている者たちが甲斐甲斐しく税金で接待に勤しんでいた。相撲観戦に炉端焼き、宮中晩餐会、ドナルド&晋三で既に定番となった毎度のゴルフなど、その過剰な大歓迎ぶりには世界のメディアも唖然として「米大統領に媚びを売る日本の為政者」への認識を深めたようだ。しかし、そもそも何のためにあそこまでやる必要があったのだろうか?
大統領選ではヒラリー勝利を確信して動いていたために、大慌てでゴルフクラブを握りしめて就任前のトランプに会いに行ってご機嫌をとったが、日本の為政者たちの米国の権力者に対するへりくだり方ときたら、とにかく異常なのである。原爆を投げつけられて感謝している者のDNAとでもいおうか、そのことによって戦後も戦争犯罪の罪を問われぬまま七光りたちに至るまでポストを与えられ、占領統治の駒として国を売り飛ばした者の性根が2代3代と引き継がれて今日に至っているのである。軽薄かつ経年劣化もしながら--。こうした染みついた親分子分の関係、宗主国と属国の関係が続き、ロシアに向かっては「戦争しないとどうしようもなくないですか?」というような者や「右」を自称する者に限って、大概アメリカにはひれ伏しているのが現実である。沖縄基地問題で同じように「アメリカと戦争しないとどうしようもなくないですか?」と発言する政治家など見たためしがないように、奴隷根性が叩き込まれた彼らは、恐らく鞭で打たれても米国にだけは喜んで媚びを売りに行くのである。日本人がレイプされようが、米軍機が墜落しようが、首都圏の制空権を握られようが、黙って従うのが習わしなのだ。
ところで、このトランプの訪日で注目されるのは、首脳会談後の共同会見やツイッターでトランプがのべた「8月に大きな発表がある」「7月の選挙まで待ったら、貿易交渉で大きな進展がある」という内容だ。参院選の後に日米貿易交渉の重大な発表があるというのである。選挙前に話したら安倍政府に不利になるので、選挙後に話すというのは、それだけ有権者が激怒するような日本社会にとって重大な打撃が加わるであろう話が舞台裏で進行していることを示している。選挙後に発表する、つまり実は話はほぼついているけれど、あとは発表のタイミングの問題でしかなく、当面は選挙を乗りこえたいと切望している安倍政府に「貸し」をつくって協力し、与党ポストを保障してあげるという意味にほかならない。「5月合意」を延期したいと願っていた安倍政府が必死になって接待三昧でもてなし、曖昧模糊とした状態で煙に巻こうとしたところ、「8月に発表だぜ!」と圧を加えて帰っていったと見なすのが自然だ。
日米の関係は極めて一方的であり、独立国として対等といえるような代物ではない。戦後74年の全過程がそうであり、近年では米国が作成した年次改革要望書やアーミテージ&ナイ・レポートといった政策指南書を丸写しして、日本国内の政治・経済・軍事政策にいたるまでが実行されている始末である。貿易交渉だけは対等であるなどというペテンを誰が信じるというのだろうか。トランプの要求を丸呑みさせられ、選挙を乗り切るためにあれやこれやで機嫌を取って誤魔化している。その顔があのツーショットである。吉田充春