秋の叙勲で旭日大綬章を与えられる者のなかにイラク戦争の首謀者の一人として知られる元米国防長官のラムズフェルドや、ジャパン・ハンドラーとして安倍政府をアゴで使っているアーミテージ(元米国務副長官)らが名前を連ねて人人を驚かせている。その他にもベイカー元米国務長官や米国家安全保障担当大統領補佐官らが勲章を与えられ、安倍政府が誰に何を感謝しているのかを浮き彫りにした。
旭日章のなかでも旭日大綬章は最高位にあたる。誰に与えるかは時の内閣が閣議決定して決めていく。為政者側から見て日本社会の統治に「貢献」してきた役人や大臣、大企業幹部に与えられてきたが、このたびは宗主国たるアメリカの親分たちに感謝の誠を捧げるというのである。まさに異次元の隷属ぶりだ。
ラムズフェルドといえばブッシュ政権のもとでイラク戦争を主導したネオコン勢力の親玉で、戦争を渇望する米国の軍産複合体を象徴する人物だ。そしてアーミテージといえばスキンヘッドで鋭い眼光を飛ばす様は、さながらヤクザの親分ではあるまいかと思わせる大男で、TPPや原発再稼働、南シナ海や地球規模での集団的自衛権行使など、安倍政府が進めてきた政策はみなアーミテージ・ナイレポートで指揮してきた。日本の官僚機構やメディア、政財界にとって逆らうことのできない人物のようだ。
勲一等で記憶を呼び覚まされるのは、東京大空襲を立案指揮し、原爆投下にも関与していたカーチス・ルメイ(米空軍)に佐藤栄作が勲章をやったことだ。大量虐殺をやってのけた者、何十万人という邦人の生命を殺戮した者に感謝する為政者の姿は当時も問題になった。
昨年は対日戦略に深く関与してきたジョセフ・ナイ(米ハーバード大学教授)に勲章を与え、今年も引き続いて戦争狂いやヤクザのような男に勲章をやった。それでいったい、彼らが日本社会にどう貢献したのかは判然としない。空襲の首謀者、戦争狂い、日本乗っ取りの指揮者は、多くの国民からみて敵視されて然るべき相手だからだ。
首相に返り咲いて真っ先に向かったアメリカで、安倍晋三は「私は帰ってきた」と再登板を報告した後、アーミテージや複数の対日戦略担当者らの名前を挙げ、「ありがとうございます」と感謝感激の挨拶をした。「僕」を首相に抜擢してくれたアーミテージさんへの御礼で、今度は勲一等の名誉を捧げますという調子なのが容易に想像つく。勲一等もついに私物化される時代になり、為政者の仲良しや親分に与えられる基準へと規制緩和したようだ。アーミテージやラムズフェルドが、なぜ勲一等に値するのか、是非とも「国民の皆様に丁寧に説明」してもらいたいものだ。
吉田充春