いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

記者雑感 荷物運びを手伝った男の子

 80歳はゆうにこえているご婦人Aさんの自宅を訪ねた時のこと、50㍍ほど離れた自宅前の道路脇をAさんが重そうな荷物を抱えながら、ゆっくりとした足どりで自宅に戻って来るのが見えた。足を悪くしてしまい、その一歩一歩はとても大変そうだ。何を抱えているんだろう? 手伝いに行かなきゃと思った次の瞬間、Aさんとちょうど対面ですれ違った帰宅途中であろう小学生の男の子がなにやら話かけ、スッとAさんの重そうな荷物を抱えると、一緒にこちらに向かってくるではないか。男の子にとってはUターンだ。そこへどこから見ていたのか、いつもエサをもらって既にAさん家の自宅前警備員と化している野良の白猫もあらわれて、「おかえりなさ~い」「ごはんくださ~い」といっているかのようにニャーニャーいいながら、くねくねとした愉快な動きで先導し始めた。そうして、猫一匹と男の子が、Aさんのゆっくりとした足どりに合わせてエスコートしているのだった。

 

 近寄って行って荷物持ちをかわり、男の子に「君、優しいね」と声をかけると、気恥ずかしそうに「いや、別に…」といって言葉を濁すような感じだ。Aさんも嬉しかったようで、ほんの僅かの荷物持ちではあったのだけど、「お婆ちゃんがお駄賃をあげる」「その気持ちが嬉しいの」といってカバンの中から財布をとり出し、男の子に握らせようとするのだけれど、「それはいいです」「もらっときなさい」「いや、いいんです」の押したり引っ込めたりがしばし続いた。最終的にはAさんが折れて「ほんとうにありがとう。ボクはその優しい気持ちのまま立派な大人になってね」の言葉でおさまったのだった。

 

 学年を聞くと6年生というけど、名前を名乗るわけでもない。男の子からすると、目の前から歩いてくるお婆さんが重そうな荷物を抱えているのを見かねてほんのお手伝いをしただけなのに、こんなことでおカネを頂いたり、名を名乗るほどのものでもないといった、できた対応だ。とってもいい子だなと関心することしきりであった。名前は知らないけれど、生野小学校6年男子のそこの君は、大人になったらきっと内面的にも素敵なナイスガイになるよ! と思ったのだった。

関連する記事

  • 米大統領選 民主党惨敗の根拠は?米大統領選 民主党惨敗の根拠は?  米大統領選について商業メディアは「もしトラ(もしもトランプが再選したら…)」などと騒いだり心配していたが、バイデン民主党への批判がよほど強烈 […]
  • お色直しからの猫だましお色直しからの猫だまし  不意打ちで早期解散、10月27日投開票――という政治日程は、おそらく総裁選の過程で各候補者が何をいおうとはじめから決まっていたのだろう。当初 […]
  • お布施、持って行ったのか?お布施、持って行ったのか?  7日に「自民党山口県連が杉田水脈を比例単独で本部に公認申請」「吉田真次は意思確認がとれておらず見送り」との報道がなされて、山口県内でもとりわ […]
  • 「ヘナチョコ」たちの総裁選「ヘナチョコ」たちの総裁選  自民党の総裁選ったらまあひどいもので、政界の“破れ口”こと田中眞紀子曰く「次から次へと勘違いしたヘナチョコが出てきて、この際出ておかなきゃと […]
  • 能登半島を見殺しにするな能登半島を見殺しにするな  元日に巨大地震に見舞われ、9カ月ものあいだまともな復興措置がとられず放置され続けてきた能登半島を、今度は台風由来の集中豪雨が襲った。前代未聞 […]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。