全国ツアーをおこなっているれいわ新選組の山本太郎代表は2日から沖縄県に入り、同日、名護市でおしゃべり会を、那覇市の県庁前広場で街頭記者会見をおこなった。沖縄県は、先の参議院選挙でれいわ新選組の比例得票率が7・28%と、東京都の7・95%に次いで全国2番目に高かった。沖縄県民の基地撤去、米国の支配からの真の独立の実現を託す期待値が数字にもあらわれている。名護・那覇どちらの会場でも多くの人人が詰めかけた。「本気で政権をとりにいく」という山本代表の熱量と、現地の人人の切実な要求や真剣な意見が交錯する熱い論議がくり広げられた。
おしゃべり会と街頭記者会見では参加者からの意見や質問に対して山本代表が答え、自身の意見や目指している政策を絡めながら論議を進めた。
◇名護
名護市で開かれたおしゃべり会の会場には、あらかじめ準備していた椅子が足りなくなるほど会場いっぱいに聴衆が詰めかけた。また那覇市の街頭記者会見にも県内各地から多くの人人が駆けつけていた。足を止めて聞き入る通行人も多く、人だかりは増え続けた。聴衆からはれいわ新選組が「八つの緊急政策」のなかの一つにかかげている辺野古新基地建設中止についての質問や、日米安保、日米地位協定のしがらみから脱却するための問題意識が投げかけられ、山本代表の意見に注目が集まった。
「れいわ新選組の公約には“辺野古新基地建設をストップ”とあるが、山本さんが考えている具体的なプランを聞きたい。私は政権交代が必要だと思っている。今の自公政権は投票率の低さで保たれているが、これからは無関心層の機運を高めていく必要があると思う」(名護・男性)
「日本における一番大きな根幹の問題は、日米安保条約や日米地位協定であり、沖縄の基地問題にも大きくかかわっている。日本では憲法と安保が対立している状況だともいわれている。日本で権力をとったとしても、GHQがつくった東京地検特捜部や、三権分立の上に存在する日米合同委員会などの外部からの圧力によって切り崩されるということも想定できる。日米安保や日米地位協定やその他の圧力を廃さない限り、真に日本の権力を握るということにはならないと思うし、日本を変えるには対米自立が必要だと考えている。そのためには大きな痛みをともなう恐れもある。韓国では今、対米自立をする動きを見せているが、アメリカと日本から経済制裁を受けている。こうした懸念にうまく対処していく必要があると思うが、現時点でどのように考えているのか」(名護・男性)
このような問題について、山本代表は以下のように答えた。
辺野古新基地建設を止めるための具体的なプランは「政権交代する」というのがまず第一の答えになる。今の政権のまま顔ぶれが変わっただけでは、踊り手が変わっても振り付けは変わらない。辺野古を止めるには政権交代する以外にないが、現時点では選挙をたたかううえで「辺野古新基地建設反対」を政党のトップの旗として掲げるにはまだ弱い。なぜなら沖縄の民意ははっきりしているが、本土の人人の意見としては辺野古問題が政党を選ぶ第一条件にはなっていないからだ。多くの人人が自分自身の生活にいっぱいいっぱいで、政治に興味を持ったり、政治をコントロールする気持ちになれないのが今の日本ではないか。生活が底上げされ、少しずつ政治に目を向けて考えられる心のスペースを生み出すことができる社会に変えていかなければならない。
政権交代を実現するには、多くの人人から支持をいただく必要がある。50%の人たちが票を棄てている現実を変えるには、誰しもがわかりやすい身近な問題に関する大きな旗を立てて、人人の生活が苦しいという状況を変えるためにたたかう姿勢を見せることが政権交代の芽を出す近道だと思う。20年以上のデフレから脱却し、人人の生活を引き上げるには消費税を廃止するしかないと思っているが、私たちが政権をとらない限りそれは実現しないし、時間もかかるだろう。その第一歩目として、野党で固まってまずは消費税5%という旗を立てて政権交代に繋げていきたい。政権をとればこれまでつくられてきたとんでもない法律をひっくり返すことができる。辺野古の基地建設も止められる。
だがもしも「消費税5%」で野党が固まらなければ、私たちれいわ新選組は次の選挙で独自に100人の候補を擁立するつもりだ。すでに私たちは野党に対して意志を示している。人人の生活を救うという気概があるならばぜひ一緒にたたかいたいが、野党が旧体制のまま選挙をたたかうつもりならば、私たちは新体制で選挙をたたかう以外にない。権力を持った者にしか物事は変えられないが、現政権の権力の使い方は間違っている。それをとり返し、今まで不条理を押しつけられてきた部分を是正していかなければならない。
第二次安倍政権が発足してから今年の夏までに100本以上の法律が通過している。特定秘密保護法や国家戦略特区、共謀罪、安保法、TPP、種子法廃止、漁業法改定、水道法など上げればきりがない。人人の権利を奪い、国益をどんどん売り飛ばそうとする。それでも結局数の力で与党側が票を束ね、入り口に入れば出口が見えているのが国会の現状だ。今の国会の状況では一定の話し合いが済んだらあとは開かせないために体を張る以外ないというのが私の立場だ。しかし残念ながら今はそうはなっていない。非常に「紳士的」な野党だ。そんな貴族みたいなやり方ではなく、徹底的にたたかう姿勢を示して対立構造を生まなければならない。
本気で政権交代する気があるのかどうかが問われている。2013年から2019年の夏までに与野党が対立した法律がたくさんあったが、その間におこなわれた4回の選挙では1回も政権をひっくり返せていない。なぜか。一番大きな要因は小さな数でも徹底的にたたかう姿勢や対立軸をはっきり見せる具体性が乏しいこと、もう一つは経済政策が弱かったことだ。野党側が政権をとったとしても、経済が回復して今の自分たちの生活がよくなるとは思えない。
アメリカからの真の独立を
日本は残念ながらアメリカの植民地だ。決して独立国とはいえない間接的な支配がおこなわれている。アフガニスタンやイラクでも、少なくとも国家主権が失われるような支配は受けておらず、アメリカが唯一植民地化に成功したのが日本だ。アメリカが望めば日本のどこにでも基地をつくることができるし、どんな訓練も可能になる。こうした不条理を一番目に見えやすいかたちで押しつけられているのが沖縄だ。米軍やその家族、軍属には一般の外国人と異なる特別な地位が与えられ、公務中の犯罪については日本側は逮捕できないし、たとえ公務中でなくても米軍側が被疑者を先に確保すれば身柄は日本側に渡さなくてもよいとされている。まったくおかしな話だ。そんな日米地位協定の下で数えればきりがないほどの事件・事故が引き起こされてきた。
実際に辺野古新基地が日本の国防上重要な役割を果たすのだろうか。米海兵隊本部は90年代前半に国内外すべての海兵隊基地の構成の見直しや検証をおこなった。その結果ブッシュ政権時代の首席補佐官であり元陸軍大佐は辺野古基地について、部隊の実弾射撃訓練や飛行訓練、爆弾投下訓練をする地域として運用はきわめて難しいと判断したと指摘している。また、戦力規模が小さすぎて太平洋地域に前方展開させる戦略的価値がないこと、辺野古基地は外部からの攻撃に脆弱であるといっている。米軍にとってのメリットは、本土に帰れば規模が縮小されてしまうので、沖縄で日本に駐留費を負担してもらうことで体制を維持できるということだけだ。
米国側からも「不必要」の烙印を押され、そもそも選挙によって何度も基地反対の民意がはっきりしているにもかかわらず辺野古基地の建設に固執する背景には、建設利権でもあるのかといいたくなる。米軍はカリフォルニアに帰ってもらうのが一番シンプルだと思う。それを実現するには「思いやり予算」はしばらくは続け、移転費用も出す必要はあると思う。
米軍への基地提供は日米両政府の代表が出席する日米合同委員会で決定され、日本のどこにでも米軍基地を置くことができる。現時点で日本における米軍施設は131カ所にも及び、他にも横田ラプコンや嘉手納ラプコンなどがある。自国の領土でさえも自国の政治で決定できず、アメリカ様にお伺いを立てて約束をしてもらわなければ物事が進まない。他国からもこうした関係性はすでに見透かされている。
政権をとっただけでは、さまざまなしがらみにつぶされる恐れもあるかもしれない。アメリカ側にゴマを擦って貢献することで自分の身が守られる立場にある人もいる。このような圧力にどう対抗するか。内閣人事局というものがある。内閣に対してさまざまな忖度をするような高級官僚を配置していく人事システムであり、現在の政治腐敗の原因という声もある。だが私はこれを残して、大胆な財政出動や財政策、アメリカからの真の独立など、私たちがやりたいことのために自分たちで決められるシステムを保持すればいいと思う。
外からの圧力に抗ううえでは、人人の心が移ろいやすかったら自主独立なんてできない。私たちが政権をとってもそれを支えるのは有権者のみなさんだ。週刊誌報道やワイドショーなどさまざまな手を使ってつぶしにかかる動きも出てくるだろう。そのときに支える人人がぶれずに支持し続けられるかということも重要になる。一人の政治家がスーパーマンのようにやるのではなく、「一緒にやるんだ」という気持ちでこの国を本当の独立に導いていかなければならない。先頭に立つ者とそれを支える人人の思いの二つがあって初めて成立する。
◇那覇
名護市や那覇市の会場には子育て世代も数多く参加していた。ポスター張りなどの宣伝活動や、会場の運営をサポートする現地スタッフのなかにも若い女性が多い。
那覇市の街頭記者会見でマイクを握った女性は「少子化対策について問いたい。私は子育てをしているすべての人がお金の心配をすることなく安心して子どもを育てられる環境を望んでいる。現在私は2人の子どもを育てているが、心のどこかで常にお金の心配をしている。今は子どもが待機児童のため、育児休業給付金をもらいながら何とか生活しているが、フルタイムで働いていた時期に比べると使えるお金がかなり減った。給付金は最長2年間もらえるが、支給額は最初の半年は働いていた頃の3分の2、その後は半額と決められている。子どもが増えるたびに必要となるお金は増えるのに、出産前よりも少ないお金で生きていかなければならない。給付金はパートや契約社員の場合、もらえないことがあったり、続けて3人目を生みたい場合は、2人目を産んだ後に1年ほど仕事に復帰しなければならない場合がある。さまざまな条件があることから、子どもを育てるすべての人が簡単に使える制度になっていない。少子化対策として、安心して子育てができる環境を整えてほしい。山本さんはどのような対策が必要で、どう対応していくつもりなのか」と訴えた。
山本代表は「少子化対策を進めるには、処遇の改善以外ない」とし、保育や介護職が他の産業よりも年収が100万円以上低く、資格を持っていても生活ができないため職に就く人材が減っていることから、必要とされる現場では公務員化を進めるべきだと指摘した。世界的に見ても人口1万人あたりの公務員数はフランスやイギリスでは800人をこえ、アメリカやドイツでは500人をこえているのに対し、日本は261人と少なく、さらに非常勤公務員が4人に1人に迫る勢いで増えていることをあげた。そして公務員を増やすことによって安定した職を手にする人人を増やし、少子化対策や経済効果にも繋げていく構想を提起した。
那覇市で発言した女子高校生は「数年前に白血病にかかり、その治療の影響で骨が壊死し、車いす生活だ。治るまでに何年かかるのか、治るかどうかも分からない。小児慢性疾患ということで国からの保障は受けているが、手術をしないなら“治る可能性がある”ということで障害者の区分に入ることができず、障害者手帳も持っていない。その結果、社会保障を受けられなかったりもする。足が不自由になって車いす生活になってから生活に困っている。学校に通うにも今は母が送迎をしてくれているが、障害者認定を受けることができればヘルパーなど何かしらの援助も受けることができ、母も働きに出ることができるはずだ」と語った。
このほかにも参加者からは種子法廃止への危惧や、大学等の基礎研究費削減問題などに関する質問や意見が出された。
おしゃべり会や街頭記者会見に駆けつけた人人のなかには、格差社会を是正し、政治を根本から立て直して新しい日本社会をつくりたいとする意見が多い。「政策云云よりも山本さんの“本気で変える”“政権をとりに行く”という強い決意に惹かれ、直接話を聞きたいと思った。その他の野党にも注目はしていたが、実際に市民から直接意見を吸い上げ、対話によって自身の意見を堂堂とみんなの前で語れる人はいない」(名護市・20代男性)
「私は元自衛官だ。国防の面などでは納得できない部分もあるし、すべての意見に賛同しているわけではない。しかしそれ以上に腐敗しきった今の政治や、格差が広がり続ける社会をまずは変えなければと思っている。どんな意見も逃げずに答えて街頭で山本さん自身が勉強している姿勢に共感した」(沖縄市・50代男性)など、感想を語る聴衆もいた。
全国各地の街頭で、国民の苦難や問題意識に触れ、その根源となっている腐敗・破綻した政治や経済の実情を示しながら論議を深めていく姿勢に多くの支持が寄せられている。国民が直面している切実な問題や要求を束ねて政権を覆す気概に満ちた火種が、れいわ新選組のツアーの足取りとともに確実に広がっている。
みんなの力で政治を変えよう れいわ新撰組頑張れ
太郎さんにおんぶに抱っこじゃなくて、私たち一人一人が動いて語って広げていきましょう。