発行:長周新聞社
取扱:長周新聞社、地方小出版流通センター
B5判 52頁 帯付き ISBN 978-4-9909603-3-9
価格:1,600円+税
2017年12月1日発売。下関漁港を支える以東底引き船団の奮闘記を描いた乗船取材『福寿丸に乗って』と、角島・鰆(さわら)漁の密着ルポ『春を告げる魚を追って』を収録。本紙連載では見せることができなかった写真をふんだんに掲載し、過酷な海に挑んでいく生産者たちのいまを記録した一冊。
近年、一躍高級魚の仲間入りをはたしたノドグロ(アカムツ)をみなさんは食べたことがあるでしょうか? 大きいものになると1匹3000円以上で取引されることもざらで、高級料亭で提供されるもののなかには1万円を超えるものもあります。その名の通り、喉が黒いことからノドグロと名付けられたこの魚は、白身でありながら旨味のつまった脂がしっかりとのり、皮を炙って刺身にするもよし、塩焼きにするもよし、煮付けにするもよし。食通たちを虜にする魅力ある魚として注目を浴びています。
下関漁港はその水揚げ日本一を誇っており、首都圏始めとした全国の消費市場へと届ける産地市場としての役割を果たしているのですが、地元でも水産関係者以外にはその事実が余り知られていません。高級魚になると殆どが上送り(首都圏への出荷)になるため、郷土の食文化として根付いているとは言い難く、また高嶺の花ということもあり、馴染みの薄い魚になってしまっているのが現状です。
このなかでノドグロに限らず、水産都市として産地に根ざした形で消費者に下関の魚の魅力を発信する方法はないものかと思い、その魚は誰が獲ってくるのか密着してみようと取材をはじめました。水産業を支える人人の姿を捉え、それを消費者に伝えたいというのが出版の動機でした。
最前線で働いている海の男たちの奮闘に光を当てようと、まず記者が挑んだのが以東底引き船団・福寿丸の乗船取材『福寿丸に乗って』でした。かつては以西底引き船団の母港として賑わった下関漁港ですが、200海里問題やオイルショック、魚価の低迷や減船事業の影響を受けて、1970年代後半には以西漁場(東シナ海、黄海)からの撤退が進み、その衰退は著しいものがあります。このなかで、残された以東底引き船団7組14隻が下関漁港市場の水揚げを主力となって支えています。ノドグロが人気で美味しいというだけでなく、過酷な海の上で生産者はどのようにして働いているのか、日頃は触れることのない世界に飛び込み、仕事の実像に迫ってみました。
『春を告げる魚を追って』は、近年唐戸市場でも高値で取引されるようになった角島の鰆(サワラ)漁に密着し、沿岸漁業を営む生産者の絶え間ない努力や品質管理の工夫に密着してみました。魚を釣るために刻々と変化する自然界に働きかけ、失敗を糧にしながら試行錯誤によって正解を導き出していく様は、挑戦なきものに成功などないという一見すると当たり前に見えて、しかし誰にとっても必要不可欠な努力の過程の大切さを思わされるものです。さらに、魚価を高めるために魚の特質を研究し、その魚体処理を浜で統一しながら信頼を勝ち得ていったことなど、協同組合の強みについても垣間見ることができました。
私たちが日頃から食している魚は、そのような生産者の営みによって市場へ水揚げされ、卸や仲買など流通を担う人人の手によって消費者のもとへ届けられています。水産業の衰退が著しいなかにあって、魚食文化を最前線で支えている人々の姿に光を当て、海の恵みと生産者へ感謝の思いを込めた一冊となります。写真をふんだんに掲載して、トロール漁業や沿岸漁業の今を伝えています。
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