山口県周防大島町と柳井市大畠を結ぶ大島大橋に22日午前0時30分頃、大型貨物船が衝突し、橋梁下に添架してある送水管が破断した。町内全域約9000戸で断水し、生活している島民約1万5000人に影響が及んでいる。22日午後10時20分頃からは、安全確認のため本土へつながる唯一の橋である大島大橋が全面通行止めとなった。
衝突事故が起きた大島大橋では、破断された送電線が250㍍にわたって橋梁から離脱し、無残に垂れ下がっている。事故発生から約1時間半後に大島側と大畠側の送水管仕切弁が全閉され、周防大島への唯一の送水ルートが断たれた。
周防大島へ送られる水道水は広島県大竹市にある弥栄ダムで取水し、柳井市日積にある日積浄水場で浄水した後、周防大橋に添架した送水管を通じて島内9カ所に設置された配水池に蓄えられ、これを各家庭で利用するしくみとなっている。周防大島では今年1月にも大島大橋の送水管が破断(劣化による)したため、全島で最大10日間の断水を経験している。
大島大橋では事故が起きたその後も日中は車両の通行が可能だったが、現場は高所であるため損傷の状況は目視でしか確認できておらず、橋梁下に設置してある点検通路は貨物船の衝突によって崩壊しているため現場の詳しい被害状況を把握できていなかった。そのため22日の夜から「絶対的な安全の保証ができない」と通行止めにした。23日時点では、大島大橋の維持管理をおこなっている県の担当課でさえも「橋のどこがどのような損傷を受けているのか、具体的な状況は現在点検中ではっきりとは把握できていない」状況で、この日も終日全面通行止めで歩行者や自転車、緊急車両などすべて通行禁止となった。住民たちは周防大島と本土を結ぶ唯一の陸路を断たれた。
本土と行き来するための交通手段は柳井港―伊保田港(周防大島)―三津浜(愛媛県)を結ぶ防予フェリーだけとなった。周防大島町は23日から柳井港―椋野港を結ぶ無料の臨時便を定員61人と31人の2隻体制で往復4便手配した。臨時便の利用客はだいたい20人前後だったが、自動車を積載できる防予フェリーの定期便は23、24日の利用が予約で満席となった。
柳井港から周防大島へ向かう便に乗り込む人人のなかには水や食料を買い込んでいく姿も見られた。臨時便で周防大島の職場へ出勤するという男性はパンが詰まったスーパーのレジ袋をいくつも手に下げて「職場では水道も使えない。周辺のスーパーでは食料をみなが買い込んでいるうえに橋が通行止めで陸路での搬入ができないため品薄になっている。職場の仲間や周辺の住民らの生活が大丈夫なのか、いつになれば橋が通れるようになるのか心配だ」と話した。
送水管とともにNTTや光ケーブルも同時に断線しているため、周防大島町はホームページを更新することができず、町はフェイスブックと防災無線を使って随時情報を発信している。
陸路絶たれ給水も困難に
断水が続く周防大島町内では22日に島内15カ所で給水車による給水を開始した。しかし23日は周防大橋が全面通行止めになり、給水車は柳井港から出る防予フェリーに積載して島へ渡すほかなくなった。水の補給が困難となり、給水は5カ所のみでおこなった。
橋の通行止めによって通勤・通学のために普段橋を利用している人人は行き来する手段を失った。周防大島町内の小・中・高校では16校中15校が休校。唯一授業をおこなった小学校では、島外の教職員らが出勤できないため、他の教員らがかわりに授業をおこなった。また、水道が使えないため給食は前日の夜に教員らがパンなどを購入して準備し、校内の井戸水をバケツに10杯以上ためてトイレなどに利用した。周防大島へ通う島外の勤め人のなかには島内に宿泊するなどの対応を余儀なくされた人人も少なくなかった。島内を走るバスは発着駅が橋を渡った大畠駅なので、通常の半分ほどのダイヤで運行した。
唯一の陸路である大島大橋の通行止めは、住民の暮らしに大きな影響を及ぼしたが、23日に県の職員や専門家が橋の検査・点検をおこない、24日午前7時から歩行者、軽車両、総重量2㌧をこえる車両以外は通行が可能となった。
今後は「いつになれば水道が利用できるのか」が周防大島町民の一番の心配事だ。破断した送水管を管理している柳井地域広域水道企業団によると、破断した既存の送水管を修繕して送水を再開するにはあまりにも時間がかかることから、現時点では大島大橋の歩道に仮設の送水管を布設して、早急に仮復旧を目指すとしている。だがその前に今回破損した橋梁の点検や補修等を完了しなければならず、仮設管の布設工事の着手時期は不明となっている。材料を調達したり仮設の送水管を通すためには、新たな送水経路を確保するための工事も必要であることから、仮設復旧へ向かうにはさらに時間を要すると見られている。