売上を風力反対裁判費用へ寄付する店舗も
下関市の安岡地区まちづくり協議会が21日、JR安岡駅前を歩行者天国にして「安岡マルシェ~カオスやストリート」をおこなった。地元の商店や病院をはじめ有志や学生グループなどが28店舗の店を出し、前回の3月を上回る約1800人(主催者発表)もの人出で賑わった。
秋晴れで気温も上がったこの日、午前10時をすぎると、子どもの手を引いた親子連れや乳母車を押した若い夫婦、また高齢の男女など、老若男女の笑顔が安岡駅前にあふれた。主催者の呼びかけに応えて、思い思いにハロウィンの仮装をして楽しむ親子も多く見られた。年配者は「地元にこんなにたくさん小さい子どもがいたのか」と喜んでいた。
人出の多さに、迎える側も呼び込みの声に力がこもった。地元安岡で営業している店が、焼きそばや焼き鳥、天然酵母パンやあげコッペ、コーヒー、カレー、お団子、カレーパンなど自慢の味を披露したのをはじめ、安岡病院がチキンカツサンドとシフォンケーキを、下関病院が手作り豆腐を、ヤマカ醤油がイカ炊きを販売した。そのほか有志グループがうどん、ぽんぽん菓子や綿菓子、唐揚げとポテト、安岡の漁師がとったサザエを使ったサザエ飯、おでんなど、この日のために工夫や試行錯誤をくり返してきた食べ物を提供した。また、店舗は持たないもののイベントには必ず出店するグループが、絵画や焼き物、ハーバリウム(装飾用の植物標本)、木工細工、ヘアーアクセサリーなど多彩な品物を販売した。
地元の若手農業者である森本農園がレタスやさつまいもを、横野地区で親子で無農薬の有機栽培をやっているとみおか自然農園がコメや野菜を、蓋井島の漁師の奥さんたちのグループが蓋井のひじきをつかった炊き込みご飯を販売するなど、一次産業で頑張る若手の出店もあった。
また、この日はアスファルト道路にチョークで自由に落書きできる落書き広場や段ボール広場が設けられ、たくさんの幼児が集まった。また、マジック&バルーンを披露する地元の大道芸人YOSHI氏のライブもあった。「親子で一緒に楽しめるこんなイベントは少ない」「またやってほしい」とあちこちで話題になっていた。
下関市立大学の学生たち13人はたこ焼きを販売した。代表の2年生は「地元を盛り上げようとのまちづくり協議会の訴えに共感して参加した。僕は岡山県出身だけど、安岡が昔と比べて寂れていると聞き、活性化のためにお役に立てればと思っている」とのべた。それはどの出店者にも共通する思いのようだ。
パセリ入りケーキなどを出した工房ひまわりの代表は「吉見に工房を持ち、漬け物やジャムを直売所や道の駅に出してきた。今は注文の方が多い。また地元のパセリ農家を応援したいと、パセリ入りケーキなどのお菓子をつくって売っている。吉見のふれあい祭りにも出店しているが、安岡マルシェは宣伝がいきわたっており、若い人の参加が多い。これからも主催者の40代が頑張って盛り上げて欲しい」と話した。
福岡県飯塚市から参加した男性は、「安岡マルシェの協力団体である水産大の学生から聞いて参加した。これまでは下関といえば唐戸市場の観光ぐらいしかイメージがなかったが、そこから車で15分ぐらいのところでこれだけの立派なイベントができている。半年に一度ぐらいでも、2つ3つの地域が交流しながら、こうして地元の食べ物や工芸品を出品して盛り上げたら、日本はもっと豊かな国になるのではないか。結びつけることで知り合いになり、輪が広がる。オリンピックに大金を投じる必要はない」と語った。
安岡病院の職員は「これだけたくさんの親子連れや小さいお子さん、大学生の人たちに来てもらってうれしい。また、その子どもたちを大人みんなで見守るという形のイベントだ。風力発電の反対署名や募金箱も出した。みんなが健康であればこそのまちづくりで、風力発電で健康被害が出れば地元に住めなくなり、まちづくりに逆行する。風力について知ってもらうきっかけになったのではないか」と話した。出店者のいくつかのグループは、この日上がった利益を反対する会の裁判費用にカンパすることにしている。この日は5年間の風力反対運動を振り返る写真パネルも展示された。
主催者である安岡地区まちづくり協議会の山西伸典氏は、「兵庫県立大学を卒業して故郷の安岡に帰ってみると以前より寂しい町になっていた。そこでみんなの力で安岡を元気にしたいと安岡マルシェを始めたが、みんなが同じことを思っていたんだとわかった。僕たちの郷土にはこれだけの力がある。今後は僕らよりももっと若い世代が力を発揮できるようなイベントにして継続していきたい」とのべていた。